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🔗第6話:君がいない世界なんて
雨の夜。 窓の外で雨粒が落ちる音が、やけに近くに聞こえた
机の上には、あの日から消えない赤い糸。 紬はそれを見つめながら、心の奥がざわめいていた
スマホが震える。 ナツキからのメッセージ
『君がいない世界なんて、 僕には考えられない』
怖いと思うはずなのに、 胸の奥が痛かった。 ——あの子の声が、幼い日の記憶を呼び起こす
まだ幼稚園のころ
雨の中、ひとりで泣いている男の子がいた
紬は傘をさして近づき、 そっと自分のリボンを外した
幼い紬
幼いナツキ
幼い紬
ナツキは泣き止み、ぎこちなく笑った
そのときの笑顔を、紬はずっと覚えていると思っていた
けれど、ナツキにとっては“世界を救った瞬間”だった
今、目の前のナツキはその糸を大事そうに握っている
ほつれた赤い糸。
それを彼は、何年も肌身離さず持っていたのだ
ナツキ
ナツキ
紬(つむぎ)
ナツキ
ナツキ
ナツキ
その目には、涙と微笑みが混じっていた。 “壊れてる”というより、“まっすぐすぎる”——そんな優しさ
紬(つむぎ)
紬(つむぎ)
ナツキは、静かに赤い糸をつむぎの小指に結ぶ
ナツキ
つむぎは涙を流しながらも、 その糸を解こうとしなかった
怖いけど、どこか安心していた。 ——それが、二人を繋ぐ“運命”だから。
外の雨が止み、夕陽が差し込む。 糸は光を浴びて赤く輝き、 二人をそっと包み込んだ