テラーノベル
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昼休みの教室はザワザワしていた。 「扇、昼休みヒマ?」 同じクラスの男子が、机の横に立つ。
「委員会の資料、図書館で一緒にやらない?」 「……いいけど」 断る理由もなかった。 その時。 「へぇ」
聞き覚えのある声。 顔をあげると廊下側のドアにもたれかかるゆあん君がいた 「珍し、えとさんが誘われてるとこ初めて見た」 「たまたまです」 「ふーん」
軽く笑ってる。いつもの余裕の表情。 「じゃ、俺ら先いくね」 男子が言うと、ゆあんくんはひらっと手を振った。 「どうぞどうぞ」
……完璧に余裕。 なのに。 図書館に向かう途中、背中に視線を感じる。 (気のせい…じゃない…) 資料を広げていても、何故か落ち着かない。
「どうしたの?」 「なんでもない」 答えながら窓の外を見る。 ーーいた。 校舎の向こう。 腕を組んで立つゆあんくん。
「……なにしてるの」 思わず呟く。 しばらくして、スマホが震えた。 《終わった?》 短いメッセージ。
《まだです》 《そっか》 それだけ。数分後。 《早く帰れそうなら連絡して》 胸が、小さく跳ねた。 資料が終わり、図書館を出ると
「おつかれ」 そこに、ゆあんくん。 「……余裕じゃなかったんですか」 「なにが?」
とぼけた顔。 「…ずっと見てたくせに」 一瞬だけ、言葉に詰まる。 「……まぁ」
苦笑して、頭をかく。 「取られたら嫌だなって思った」 あっさり言うのがずるい。
「独占欲じゃないですか」 「否定しない」 近づいて、低い声。 「でも、束縛はしない。」
目が合う。 「選ぶのは、えとさんだから」 心臓が、強くなった。
余裕なフリの裏にある感情を、初めて、ちゃんと見た気がした。
NEXT>>800♡
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