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⚠ATTENTION⚠
・BL ・奈良×和歌山 ・センシティブなし ・前回の続き
⚠️戦争賛美、政治的な意図、政治思想、思想的な主張は決してございませんのでご了承ください ⚠️史実とは一切関係ありません ⚠️史実ネタでもございません ⚠️すべて、私の妄想です
では、どうぞ⬇
——あの日から。
和歌山の中で、“山”の意味は変わってしまった。
最初はただ怖かった場所。 踏み込んではいけないと、本能が警鐘を鳴らす場所。
けれど今は違う。
奈良
いつもの場所。 いつもの声。
和歌山
少しだけ呆れたように返しながらも、足は迷いなく石段を登っていく。
木々のざわめきも、湿った空気も、もう怖くはない。
——いや、正確には。
“怖さを知った上で、それでも来ている”。
そんな感覚だった。
奈良
鳥居の向こう、奈良が静かに立っている。
相変わらず、どこか現実離れした存在感。 視線が合うだけで、空気がぴんと張り詰めるような圧がある。
それでも。
和歌山
軽口を返せるくらいには、距離は近づいていた。
奈良が、わずかに目を細める。
奈良
奈良
あの時の自分を思い出す。 声も出ず、ただ震えていたあの日。
——それが、嘘みたいだった。
奈良は何も言わず、ただ近くに立つ。
その沈黙は不思議と苦ではなく、むしろ心地よいものになっていた。
和歌山
神様とこんな距離でいるなんて。
そう思った、その時。
——ガツンッ。
乾いた音が、空気を裂いた。
和歌山の足が、ぴたりと止まる。
和歌山
嫌な予感が、胸の奥を掴む。
振り返る。
鳥居の向こう側。 そこにいたのは、見知らぬ若者たち。
笑いながら、石を手にしている。
モブ1
モブ2
軽い声。
あの日と、同じ光景。
和歌山
ぞわり、と背筋が冷える。
考えるより先に、体が動いていた。
石段を駆け下りる。
和歌山
声が、山に響く。
若者たちが一斉に振り向く。
和歌山
息が上がる。
それでも、しっかりと睨み返す。
モブ1
モブ2
軽い口調。 馬鹿にしたような笑い。
胸の奥が、かっと熱くなる。
和歌山
思わず声が強くなる。
和歌山
必死に言葉を選ぶ。 怖がらせたいわけじゃない。ただ——止めたい。
けれど。
モブ2
空気が、変わる。
嘲るような目。
モブ1
次の瞬間。
——ドンッ。
衝撃。殴られた。
体が大きく揺れ、地面に叩きつけられる。
視界が白く弾ける。
和歌山
息が詰まる。
頬に、じんわりと熱が広がる。
遅れて、痛みが押し寄せてくる。
和歌山
ぼやけた視界の中で、若者たちが何かを言っているのが見える。
けれど。
その声は、途中で途切れた。
——ざわり。
空気が、揺れる。
いや。
“山が、動いた”。
ゴォォォ、と低い唸りのような風。
木々が大きくしなり、葉が激しく擦れ合う。 枝がきしみ、地面が微かに震える。
モブ2
若者の声が、震える。
鳥の鳴き声が、鋭く響く。
キィィ!!キィィ!!
それは、さっきまでの穏やかなものじゃない。
明確な拒絶。 明確な怒り。
山全体が、“侵入者”を排除しようとしている。
モブ1
後ずさる足音。 逃げようとする気配。
その時。
奈良
低く、冷たい声が落ちた。
空気が、一瞬で凍りつく。
奈良
誰かが振り向こうとする。
だが、その動きが最後まで完了することはなかった。
——ドサッ。
一人、崩れ落ちる。
続いて、もう一人。
まるで糸が切れたように、次々と地面に倒れていく。
抵抗も、悲鳴もない。
ただ、一瞬で意識が断ち切られた。
静寂。 さっきまでの騒がしさが、嘘みたいに消える。
山は再び、深い沈黙に包まれた。
和歌山
ゆっくりと顔を上げる。 そこに立っていたのは——
見慣れているはずの姿。
けれど、違う。
明らかに、違っていた。
目が、冷たい。
感情が削ぎ落とされたような、神そのものの視線。
人間を“同じ存在として見ていない”目。
和歌山
息が、詰まる。
奈良は何も言わず、ゆっくりと近づいてくる。
そして、和歌山の前で足を止めた。
奈良
短く、そう言う。 しゃがみ込み、そっと頬に触れる。
ひやりとした指先。
和歌山
思わず顔をしかめる。
奈良
わずかに眉をひそめる奈良。
和歌山
声がうまく出ない。
痛みよりも、奈良の様子の方が気になっていた。
その手は、ほんのわずかに震えていた。
奈良
ぽつり、と落ちる声。 低く、押し殺した怒り。
奈良
指先が、わずかに強くなる。
奈良
その言葉に、胸が一瞬だけ熱くなる。
和歌山
改めて言われると、妙に実感が湧く。
和歌山
恐る恐る尋ねる。
奈良
奈良
当然のように。 それが、この存在の“当たり前”。
そして、奈良は周囲を見渡した。
ざわり、と山が応える。
奈良
低く呟く。
奈良
その言葉に、空気がぴんと張る。
奈良
風が、強く吹き抜ける。 木々がざわめき、まるで了承するように揺れる。
奈良
はっきりとした宣言。
それは、ただの言葉ではなく—— この山の“決定”だった。
和歌山
思わず声が漏れる。
ここは、本来人が気軽に来る場所じゃない。 分かっている。
それでも。
和歌山
ぽつり、とこぼれた本音。
奈良の動きが、ぴたりと止まる。
数秒の沈黙。 風の音だけが、二人の間を通り抜ける。
奈良
やがて、静かに言う。
奈良
視線が、和歌山に向けられる。
さっきまでの冷たさが、ほんの少しだけ緩んでいる。
奈良
その声音は、どこか柔らかい。
和歌山は、小さく息を吐いた。
和歌山
少しだけ笑う。 奈良は、ほんのわずかに口元を緩めた。
奈良
奈良
その言葉は、以前よりもずっと重く、はっきりと響いた。
山の風は、強いまま。
けれど、その中で… 和歌山だけが、拒まれない。
この場所に居ることを許された、ただ一人の存在。
——神様の領域に踏み込んでなお、排除されない“例外”。
その事実が、静かに、確かに胸に残った。
——それから、少しして。
奈良
奈良の声が、すぐ近くで落ちる。 さっきまでの冷たい響きは消えていて、いつもの調子に戻っていた。
和歌山
和歌山はゆっくりと立ち上がる。
足に少し力が入らない。 それでも、奈良の前で無様に倒れるのは、なんとなく嫌だった。
一歩、踏み出す。 ふらり、と体が揺れる。
和歌山
言い切る前に、腕を掴まれた。 しっかりと、逃げられないくらいの強さで。
奈良
低い声。 けれど、その奥にあるものは、さっきまでの怒りとは違う。
和歌山
奈良
短く返される。
奈良は、そのまま手を離さない。 まるで、“もう離すつもりがない”みたいに。
奈良
和歌山
奈良
当然のように言う。
和歌山は少しだけ目を丸くした。
和歌山
奈良
さらりとした言葉。 けれど、その意味はやけに重い。
ゆっくりと石段を下りる。
その間も、奈良の手は離れない。
山の空気は、さっきまでの荒々しさが嘘のように落ち着いていた。
ただ一つだけ、違うことがあるとすれば——
和歌山
人の気配が、完全に消えている。
まるで、本当に“選ばれた者しか通れない場所”になったみたいに。
石段の終わりが見えてくる。
山の外の気配が、少しずつ近づいてくる。
その時。
奈良
奈良が、不意に言った。
確認でも命令でもない。
けれど、拒否は許されないような声。
和歌山は、少しだけ笑った。
和歌山
軽く返す。 すると、奈良は一瞬だけ黙った。
奈良
少しだけ、不機嫌そうな声。
奈良
その言葉に、和歌山は肩をすくめる。
和歌山
奈良の手が、わずかに強くなる。
奈良
小さく、満足そうな声。
やがて、山の出口に辿り着く。
奈良はそこで、ぴたりと足を止めた。
奈良
境界線でもあるかのように、それ以上は進まない。
和歌山は、一歩だけ外に出る。
奈良は、少し離れた場所に立っていた。
山の中に溶け込むように。
和歌山
軽く手を上げる。
その何気ない仕草に、奈良は一瞬だけ目を細めた。
奈良
名前を呼ばれて、振り返る。
奈良は、静かに言った。
奈良
奈良
その言葉に、少しだけ息を呑む。
そして、すぐに理解する。
——“ああいう連中は、もう連れてくるな”ってことだと。
和歌山は、小さく笑った。
和歌山
今度は、はっきりと。 そう答えた。
奈良は、それ以上何も言わない。
ただ、満足したように目を細める。
その姿は、ゆっくりと木々の影に溶けていった。
——帰り道。
ふと、振り返る。 さっきまでいたはずの山は、どこか遠く感じた。
近いのに、遠い。
簡単には辿り着けない場所。
けれど。
和歌山
和歌山は、少しだけ笑う。
自分には、“道”がある。
あの場所へ戻るための、たった一つの道が。
そして——
そこには、自分を待つ“神様”がいる。
そう思うと、不思議と足取りが軽くなった。
…THE END
⚠リクエストは締め切りました
だいぶ長くなってしまいましたが、書いててとても楽しかったです!
では、リクエストありがとうございました!✨
コメント
2件
神というこの世の者ではない方との恋…最高じゃないですか!?