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これは、 ゲーマーで陰キャの俺、 芋田功男がハーレムを目指す物語。
現実では無理だって?
大丈夫さ、 夢は諦めなければ必ず叶うから。
張り切ってはみたものの、 高校にも不登校気味の俺からしたら、 ハードルは高いだろう。
じゃあ、 何から始めたら良いのか。
もちろん、 まずは高校に行こうじゃないか。
放課後、 授業なんて受ける気はさらさらない。
だからこの時間にあえて来たのだ。
「ねえ、誰もいないし、少しぐらいいいでしょ?」
「お前、そんなにしたいのかよ」
誰もいないはずの教室から声が聞こえる。
こっそり覗いてみると、 そこには入学時から好意を寄せていた女子と、 学校一イケメンと言われている男子が、 イチャイチャしていた。
功男
淡い期待は簡単に打ち砕かれた。
結局この世界はイケメンが強い、 それをこれでもかと見せつけてくる。
イケメンと目が合った気がした。
イケメン
女子
今笑ったのは、 俺に対してか?
嘘だろ、 全部見透かされているみたいだ。
ダメだ、 やっぱり俺には、 家にいるのがお似合いらしい。
逃げるように帰ってきた俺は、 密かに活動している自分のVtuberチャンネルを開き、 傷ついた心を癒すように、 動画のコメント欄をぼーっと見ていた。
すると、 あるコメントの、 アカウント写真が目に入った。
見覚えがある、 このクマのアクリルキーホルダー。
功男
先ほど見た光景は、 マイナスだけではなかったのだ。
これは間違いなく、 あの女子のアカウント。
功男
心の中でガッツポーズをする。
功男
始まりの準備は整った。
俺の嫌な記憶が蘇る。
女子2
功男
女子2
中学の時、 前に好きだった女子に、 辛辣な理由で振られたんだった。
普通に告白なんて、 ハーレムを作るにふさわしくない。
というか、 それは多分、 ハーレムとは言わないだろう。
功男
ふと、 そんなことを思ってみる。
功男
初めての感情だった。
自分の不甲斐なさに対しての、 怒り。
功男
そうだ、 その意気だ。
「チート能力、ご都合展開を手に入れました」
頭の中に、 誰かの声が響いた。
功男
それ以上、 言葉が聞こえてくることはなかった。
突然の頭痛、 寝ていた俺は、 我慢できずに飛び起きた。
この前聞こえた声と、 何か関係があるのかもしれない。
功男
親が痛がる俺を心配し、 救急車を呼んだ。
医者
医者の言っている意味が理解できなかった。
母
医者
母の質問に言葉を濁す医者。
何が言いたいのか予想がついた。
母
その問いかけに、 俺は答えることが出来ない。
物理的に、 もう声が出ないんだ。
医者
母
泣き崩れる母。
そんな母の背中を、 無言でさすることしかできなかった。
しかし、 不思議と困ることはなかった。
それは俺が陰キャだからだ。
人と話すことなんて滅多にない。
親には申し訳ないが、 俺は全然、 ショックを受けていない。
母
俺は『全然大丈夫』と筆談で返事をする。
母と父は同じ会社の正社員。
そして、 同じプロジェクトのメンバーだそうだ。
母
あの子たち、 一体誰のことだろうか。
唐突に家のチャイムが鳴った。
恐る恐るドアを開ける。
愛子
薔薇香
心海
目の前には、 中学時代、 ゲーム仲間だった女友達の愛子。
保育園からの幼馴染である薔薇香、 母の妹の子供、 つまり従妹の心海が立っていた。
俺が言葉を話せなくなったことは、 既に知っているようだ。
愛子
薔薇香
心海
俺は『よろしく』とだけ紙に書き、 三人に見せた。
すんなりと受け入れたが、 思えばこれが『ご都合展開』、 というものなのではないだろうか。
確かに、 こんな友達と幼馴染と、 従妹がいたことは覚えている。
だが、 俺が引きこもり気味になってから、 連絡なんてしていなかった。
これを『ご都合展開』と言わずなんと言う。
俺のハーレムが、 チート能力のおかげで完成に近づいている。
心海
いきなり呼ばれたかと思ったら、 俺にはもったいない言葉が飛んできた。
俺は『付き合えない』と短く断る。
心海
そうではない。
俺は彼女が欲しいんじゃなくて、 ハーレムを作りたいんだ。
静かに涙を浮かべる心海に対し、 俺は『ごめん』とだけ伝えた。
そんなことがあった翌日、 俺が二階の部屋からリビングに降りると、 そこには血まみれのナイフを持った心海と、 その近くで倒れている愛子と薔薇香がいた。
床には血だまりが出来ている。
俺は動揺しながら紙に、 『どうしてこんなことしたんだ』、 と書きなぐる。
それを見た心海は俺に向かって叫んだ。
心海
心海がナイフを向けて、 こちらに走ってくる……。
俺は汗だくでベッドから飛び起きた。
さっきのは、 悪い夢だったようだ。
そのままベッドから降りて、 リビングに行く。
リビングには、 愛子も薔薇香も心海もいなかった。
代わりに、 俺の可愛い妹が俺のために料理や洗濯、 掃除…… 同時進行で色んなことをしている。
俺の目がおかしくなったのだろうか。
何回数えても妹が十人いる。
ただ、 これはこれで、 良いハーレムになりそうだ……。
俺はむくりとベッドから起き上がった。
また夢だったのか、 残念だ。
そういえば、 俺に妹はいなかったな。
愛子
愛子が俺を呼んでいる。
薔薇香
部屋の外から、 薔薇香が恥ずかしそうに、 こちらを覗き込んでいる。
心海
心海がなにやら叫んでいる。
いいじゃないか、 俺は風呂キャンセル界隈なんだ。
ハーレムは完成目前、 かと思われたが、 俺は結局、 相変わらずゲーマーで陰キャのまま。
愛子と薔薇香と心海は、 親と入れ替わるように帰っていった。
母
母の言葉に耳を傾けることはなかった。
でも、 本当にこのままでいいのか?
担任
一度も会ったことがない担任教師が、 俺の家に来て、 そう言い残していった。
両親は俺を責めなかった。
しかし時折、 リビングから母のすすり泣く声が聞こえる。
そして、 それを慰める父の声。
もう一度、 最初の言葉を思い出せ。
『大丈夫さ、夢は諦めなければ必ず叶うから』
その言葉は嘘じゃないって、 俺は証明できるはずだ。
俺は両親に頭を下げ、 通信制の高校に通い直した。
ゲームしかしてこなかった、 人の話を聞いてこなかった、 基礎学力なんて中学で止まってる。
平均以下の俺は、 大学受験を目指した。
そして、 血の滲むような努力の末、 見事大学に合格した。
俺が最後に親に向けた言葉は、 『この家を出る』だった。
地図を頼りに、 大学の寮に到着した。
言語障害のことは、 既に説明済みだ。
管理人
辺りを見回すと、 俺が想像していたものとは違った。
男女別と聞いていた寮に、 女子がいる。
管理人
申し訳なさそうに言う管理人をよそに、 俺は舞い上がっていた。
これこそが俺のチート能力、 ご都合展開!
これからが俺の本当の人生の始まりだ!