小月の短編集

意図せず漏れた溜め息に、 彼が顔をあげた。

心配そうにする彼を無視して 私はベッドからでる。

カーテンの隙間から漏れる光が やけに眩しい。

重い足取りでキッチンに向かい、 2割引で買った食パンを トースターに入れる。

しばらくして、彼が起きてきた。

ボサボサの寝癖。

よれよれの部屋着。

何度見てもだらしない。

眠そうな目を擦りながら私の隣に立つ。

昔はもっとシャキッとしてて かっこよかったのに。

それでも私は彼が好き。

ムカついたりすることもあるけど好き。

この何もない日常が いつまでも続いてほしいと思ってる。

顔が真っ赤になる。

彼からそんな言葉を聞くのは 久しぶりだ。

照れ隠しで彼の肩をたたく。

慌てて食パンを取り出した。

彼は呑気に笑いながら コーヒーを淹れる。

真っ黒になった2枚のトースト。

焦げたトーストは苦かった。

だけど……

少し優しい味がした。