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2020年04月22日

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ひまり

幸せでしたか

恋をした。

悲しい恋をしていた。

どこまでも青い何かを、ずっとずっと追いかけている。

懐かしいね。

青が好きだった。 幼い頃から青が好きだった。

かっこいい男の色だったから。

でも今は違う。

青はこの世の美しさが詰め込まれた色だ。

だから俺は青が好きだ。 昔、俺の隣で君は頷きながら立っていた。 でもそんな君はもういない。

ほら。空も海も、春も青い。

君の話をしよう。 一度話し始めたら、きっと俺の口は止まることなく話は紡がれていく。

この青に黒が混じって、この世界とともに俺は呑まれていく。

それでもいいと思った。 この美しい景色と、そして君の物語が俺を呑みこむのなら、それもいいかもしれない。

恋をした。

あの日、ここで笑っていた君に俺は一瞬で恋に落ちた。

雨が降った日。 傘をさして君と歩いた。 俺の肩は濡れていた。

雪が降った日。 俺と君は、部屋の中から窓の外を見た。 寒くて暗い夜に、白と黒がどこまでも続いていた。

君の服も、君の肌も、雪のように白くて、 俺たちが愛した春がはやくやってくることを祈った。

愛することは祈ることだと誰かが言った。 だから俺は祈る。 青い世界に手を伸ばす。

ひまり

幸せでしたか。

最後の日。 君は俺にそう問うた。

ひまり

貴方は、私と出会えて幸せでしたか。

君はぼうっと、そこに真っ白に座っていた。

この景色すべてを青で染めてしまえればよかった。

幸せだったよ。

ひまり

春が好きでした。貴方とすごした春が。

俺もだよ。

ひまり

貴方は青の人で、青は貴方の色でした。

ひまり

だから私は、青が好きなんです。

俺も大好きだよ。

ひまり

私と一緒に、青もこの世から消えてしまえばいいのに。

君の物語の最後のページ。 でもその先は俺が紡ぐために白紙がある。

そう信じて雪のように白い手を取った。

雪解けはもう来ていると、名前も知らない人が言った。

なら、俺もずっと君と一緒にいられるんだね。

ひまり

物事には必ず終わりがあります。

そうかもね。

でも俺は、君となら永遠を信じられるよ。

ひまり

私のこと、忘れないでくださいね。

何年でも待ってるよ。

ひまり

なら、

ひまり

この世界に青が残るのもいいかもしれない。

ねぇ、

ひまり

なんですか?

君は幸せでしたか?

今、この世界に君はいない。

でも俺はここに居続けて君を待っている。

君を待ちながら俺は生きている。

そうしてまた笑えたらいい。 幸せだったと笑えたらいい。

ねぇ、君の話をしようか。

それはきっと、くだらなくて仕方ない物語だ。

ひまり

湊さん。

どうしたの?

ひまり

きっと今年の春も、綺麗なんでしょうね。

恋をした。悲しい恋をしていた。

息も出来そうにないくらい、 ただ一人を愛した春があった。

君の話をしよう。

ただ一人を愛した青い春のこと

君の物語に、いずれ終わりが来ると分かっていても

それでも君となら、永遠を信じてみたくなった。

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