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東方夏踪郷

第1話 - 第一幕異変の始まりは些細なウワサから

2024年12月03日

#東方

わきみこ

ーとある東の国の何処かに存在する秘郷、"幻想郷"。

季節は夏、容赦無く照り付ける太陽に不満を漏らす巫女が居た。ー

博麗霊夢

はぁ…夏ってなんでこんなに暑いのかしら。

八雲紫

夏だからに決まってるでしょう？

博麗霊夢

うわぁあっ！？

博麗霊夢

あ、あんたいつからそこに…

八雲紫

そうねぇ、あなたが暑すぎて掃除をほっぽり出す所から見てたわ。

博麗霊夢

結構前じゃない…

八雲紫

博麗の巫女がそんなんじゃ、だらしが無いわよ？

博麗霊夢

うっさい、巫女だって夏の暑さには勝てないんだから。

八雲紫

まぁ、かくいう私も暑すぎて寝れないからここに来たのだけれど。

博麗霊夢

そうよ、一日中寝てるあんたがなんでここに居るのか甚だ疑問だったのよ。

博麗霊夢

やっぱり妖怪も夏の暑さには勝てないのね。

八雲紫

困った事にね。

八雲紫

あら、あの子が来たみたいよ。

博麗霊夢

はぁ、せっかく瞑想してたのに…

八雲紫

地べたに寝っ転がって寝る事を瞑想とは言いません。

部屋の障子がガラガラと開く

霧雨魔理沙

おっす、暑中見舞いに来たぜ。

博麗霊夢

せめて文通にしなさいよ。

霧雨魔理沙

まぁまぁ…そう言うなって、土産物が二つあるんだ。

博麗霊夢

あら、何？聞かせてくれる？

霧雨魔理沙

ほれ、まず土産物①、西瓜だ。

博麗霊夢

…わ〜ぁっ！西瓜よね！西瓜！

博麗霊夢

丁度食べたかったのよ！ありがとうね！

八雲紫

西瓜なんかではしゃいじゃって、まぁ…

博麗霊夢

じゃ、あんたには分けてあげないからいいわよ〜

八雲紫

あぁんもう、意地悪しないでよ霊夢〜！

博麗霊夢

だぁーっ…くっつくな！わかった！わかったから！

博麗霊夢

で、土産物②を聞いていいかしら？

霧雨魔理沙

あぁ、これはさっき里で聞いた噂話なんだがよ。

博麗霊夢

…あぁ、もうなんかオチが分かった気がするわ。

博麗霊夢

どうせ寺子屋の子供達の間で流行っている〜とか、そんな話でしょう。

八雲紫

まぁまぁ、聞いてあげましょう、ね？

博麗霊夢

はいはい。

霧雨魔理沙

では仕切り直して…

一丁前な咳払いをしてから話し始める魔理沙

霧雨魔理沙

最近、妙に"もの"が消えるらしいんだ。

博麗霊夢

もの？

博麗霊夢

あー、お皿とか小道具とか？

霧雨魔理沙

いいや、それだけじゃあない。

霧雨魔理沙

人間や妖精が忽然と姿を消すんだ。

博麗霊夢

…ちょっと待ってね？

しきりに紫をジッと見つめる霊夢

八雲紫

私じゃないわよ？

博麗霊夢

あー、そうねぇ。

霧雨魔理沙

まてまて、霊夢。紫が攫うのは人間だけだろ？

博麗霊夢

あっ、確かに。

八雲紫

そうよ！

身の潔白が証明され、ふふん！と高らかに笑う紫

博麗霊夢

威張るな！

博麗霊夢

それに、人攫いは事実なんだから何も良くなってないわよ？

八雲紫

しゅーん…

霧雨魔理沙

それに、実害が出ているんだ。

博麗霊夢

えっ、

霧雨魔理沙

湖の方に住み着いてる氷の妖精居るだろ？

博麗霊夢

あぁ、チル…チルチル……何だったっけ。

八雲紫

やっぱり人の名前を覚えるのが苦手なのね。

博麗霊夢

うっさいわね、妖精の名前なんかいちいち記憶してらんないわよ。

霧雨魔理沙

そいつと遊んでた妖精が急に姿を消したとか、消してないとか…

博麗霊夢

ふーん、それだけ？

霧雨魔理沙

いいや、紅魔館んとこの妖精メイドも何匹か消えているらしい。

博麗霊夢

なるほど、なんか異変臭くなってきたわね。

八雲紫

あら、立派な巫女さんなら、暑さに負けずに身支度をちゃんとして、そこへ向かうと思うのだけれど？

博麗霊夢

ふん、あんたに言われなくても行くわよ。

霧雨魔理沙

じゃ、私はお先に失礼！

博麗霊夢

あっ！ちょっと待ちなさいよ魔理沙ーっ！

魔理沙の後を追いかける様に飛んでいく霊夢

八雲紫

はぁ、全く…無邪気ねえ。

八雲紫

さてと、私も何か手がかりでも集めようかしら…？

博麗霊夢

やーっと追いついた…！

霧雨魔理沙

お、来たのか、霊夢。

博麗霊夢

だって紫が急かすんだもん、しょうがないじゃない。

博麗霊夢

で、紅魔館へ向かうのよね？

霧雨魔理沙

あぁ、いや。その前にまずは聞き込み調査だ。

博麗霊夢

ふーん、あんたにしては慎重ね？

霧雨魔理沙

おっと、私はいつも慎重派だぜ？

博麗霊夢

言ってなさい。

すると、辺り一面から霧が出始め…

霧雨魔理沙

来たな。

？？？

とーーーうっ！！

？？？

すたっ…すたたたたっ……

ゴチンッ！

？？？

ひゃあっ！

？？？

ちょっと！気を付けてよチルノちゃん！

？？？

うぐ、ごめんよ大ちゃん…

霧雨魔理沙

…何してんだ？こいつら

？？？

き、気を取り直して。

？？？

とーーーうっ！！

？？？

すたっ…すたたたたーっ！

？？？

シュビッ！

？？？

すたたーっ…

？？？

シャキーン！

？？？

我こそが、霧の湖の治安を守る者！

湖の平和をマモルンジャー1号

湖の平和をマモルンジャー1号！さんじょーう！

？？？

わ、わわ…私こそが！霧の湖の治安を守る者を守る者！

湖の平和をマモルンジャー助手

湖の平和をマモルンジャー1号の助手！さんじょーうっ…！

博麗霊夢

何してんのよ、あんた達は。

湖の平和をマモルンジャー助手

ねぇ、チルノちゃん。やっぱりあれじゃ締まらないよ…

湖の平和をマモルンジャー1号

うぐぐ、手強い巫女とその魔法使いめ…

湖の平和をマモルンジャー助手

もっとかっこいいセリフいっぱいあったでしょって…

博麗霊夢

聞いてんの？

湖の平和をマモルンジャー1号

だってそっきょーなんだからしょうがないだろ！

湖の平和をマモルンジャー助手

だとしてもだよ！

霧雨魔理沙

なんか、仲間割れしそうな雰囲気だな、行くか。

博麗霊夢

そうね、行きましょ。

湖の平和をマモルンジャー1号

ちょっと待ったー！

霧雨魔理沙

何だよチルノ、しつこいぞ。

博麗霊夢

あいにく、私達も暇じゃあないのよ。

博麗霊夢

さっさとそこ退いてもらえる？

チルノ

いーや！それは出来ない相談だ！

博麗霊夢

なんでよ。

チルノ

あたい達は今霧の湖のけーびいんってのをしている！

大妖精

向こうの館の門番さんから直々に頼まれちゃいまして…

霧雨魔理沙

なるほど、だからそんな張り切ってるってわけだ。

チルノ

だから湖の平和をマモルンジャー1号として、お前たちを通すわけにはいかないんだ！悪く思うなよ！

博麗霊夢

じゃあ、あんたらをぶっ倒せば通れるってわけ？

チルノ

一回休みになっちゃうからなー、仕方ない。あたいを倒したら通っていいぞ！

大妖精

わ、私もいるんだからね！チルノちゃん！

博麗霊夢

それじゃあ、手っ取り早く済まさせてもらうわ。

博麗霊夢

"霊符「夢想封印」"！！

霊夢がそう唱えると、七色の弾幕が放たれる

チルノ

うわわわあぁあーっ！

大妖精

チルノちゃーん…！

博麗霊夢

はい、楽勝。さて、そこ通してもらえる？

チルノ

次は絶対負けないからなーっ！覚悟しとけよ巫女と魔法使いーっ！

霧雨魔理沙

いや、私何もして無いんだが…

霧雨魔理沙

あ、そうそう、忘れてた。聞き込み調査をしてるんだった。

霧雨魔理沙

おい、そこの妖精。

チルノ

なんだなんだ？

霧雨魔理沙

お前と一緒につるんでた妖精が消えたって話は本当か？

チルノ

本当だ！言っても大ちゃんしか信じてくれなかったが……

大妖精

え、えへへ…

チルノ

湖の畔で追いかけっこしてたら急にパッと消えたんだ！

大妖精

おかしな話ですけどね…

チルノ

でも、その時は大ちゃんも一緒にいたはずだろう？

大妖精

そうだね、確か。

博麗霊夢

ふーん？

霧雨魔理沙

情報提供ありがとな、さて。行こうぜ霊夢。

博麗霊夢

そうね。

チルノ

次は絶対倒してやるんだからなーーっ！

博麗霊夢

期待しとくわ〜

霧の湖・紅魔館にて

博麗霊夢

さてと、着いた着いた。

紅美鈴

すぅ…すぅ……

霧雨魔理沙

寝てるな。んじゃ、勝手に入らせてもらう……

その瞬間、美鈴が腕を突き出し

霧雨魔理沙

ぜっ…！？！

紅美鈴

ふふ、驚きましたか。

博麗霊夢

何よ、寝てなかったのね。

紅美鈴

これが"紅魔式・眠々拳"です！

博麗霊夢

それは分かったわ、中に入らせてもらえる？

紅美鈴

あ、いいですよ、許可は降りてますので。

博麗霊夢

あら、意外とすんなり。

霧雨魔理沙

じゃあなんで止めたんだよ全く…

博麗霊夢

じゃ、入らせてもらうわね。

紅美鈴

ええ、どうぞ〜。

博麗霊夢

邪魔するわよ〜？

霧雨魔理沙

邪魔するぜ〜。

十六夜咲夜

…邪魔するなら帰っていただきたい所なのだけれど。

博麗霊夢

おわっ…いつの間に。

十六夜咲夜

お嬢様がお呼びよ、客室へ案内するわ。来なさい。

霧雨魔理沙

美味い茶菓子期待してるぜっ！

十六夜咲夜

まぁ、紅茶くらいは出してあげるわ。

博麗霊夢

客人に対して"紅茶くらいは"って、あんまりじゃないかしら。

十六夜咲夜

あら、文句があるなら出さなくても良くってよ？

博麗霊夢

流石に冗談よ！真に受けないで頂戴…

紅魔館・客室

レミリア・スカーレット

待ってたわ。

霧雨魔理沙

待たせたぜ。

博麗霊夢

んで？なんか私達呼ばれてたらしいけど、何の用？

レミリア・スカーレット

単刀直入に言わせてもらうわ。

レミリア・スカーレット

今回の件、異変で間違いないわ。

博麗霊夢

いや、そんな気はしてたんだけど。

博麗霊夢

紫が気付かないもんなのかな〜…って。

霧雨魔理沙

で、その口ぶりからするにここの妖精メイドが消えたのは本当なのか？

レミリア・スカーレット

ええ、そうよ。

十六夜咲夜

昨日の朝に、消えた妖精のエプロンが廊下に落ちていたの。

消えた妖精のエプロンを何枚かテーブルに並べる咲夜

博麗霊夢

そんなの見せられたって、私ゃ警察じゃないんだから…

霧雨魔理沙

手がかりはそれだけか？

レミリア・スカーレット

今のところ、そうね。これだけだわ。

霧雨魔理沙

でも、妖精って結構自由だよな？

博麗霊夢

そうよ、脱ぎ捨ててどっか行っちゃったんじゃない？

レミリア・スカーレット

私達もその線を疑ったのだけれど…

十六夜咲夜

辞める時は一言言うように、とは言ってるし。言いつけを必ず守るような子達だったから、その線は無いって結論づけたわ。

霧雨魔理沙

実害2件、異変にしては少ないんだがなぁ…

レミリア・スカーレット

あと私のお気に入りのティーカップも消えてたのよ…！

博麗霊夢

それはドンマイね。

霧雨魔理沙

そういや、物も消えるんだったな。

博麗霊夢

主犯が居るとしたら、一体何を企んでるのかしら…？

霧雨魔理沙

全く見当がつかないぜ。

霧雨魔理沙

ティーカップなんか盗んで何を企んでるんだか…

レミリア・スカーレット

あれ、私盗まれたって言ったかしら。

十六夜咲夜

…もしかして

霧雨魔理沙

ギクッ…！？

十六夜咲夜

帽子の中身を全てお出し！

霧雨魔理沙

わ、分かったよぅ…

魔理沙が帽子をひっくり返すと中から魔導書やらレミリアのティーカップが出てくる

十六夜咲夜

あったわ、ついでに魔導書もパチュリー様に返させてもらうわね。

霧雨魔理沙

うぐぅ……

博麗霊夢

あんたなんでこんなもん盗んだのよ？

レミリア・スカーレット

こんなもんって失礼ね。

霧雨魔理沙

私物のティーカップが無くなったからレミリアのでいっか。って思ってな！

レミリア・スカーレット

おいッ！

博麗霊夢

やっぱり異変云々より先に魔理沙を退治すべきよね。

霧雨魔理沙

おい冗談きついぜ霊夢ぅ…

十六夜咲夜

魔理沙への処罰は後々考えるとして…

十六夜咲夜

他に手掛かりが無いかこっちでも探してみるわ。

博麗霊夢

助かるわ。

博麗霊夢

ホント…面倒事を増やしたのは何処のどいつかしら…

博麗霊夢

見つけたら絶対とっちめてやるんだから。

レミリア・スカーレット

あ、そうそう。魔法の森へ行ってみたらどうかしら？

霧雨魔理沙

ほう？

レミリア・スカーレット

意外と"灯台下暗し"かもしれないわよ？

霧雨魔理沙

なるほど！良いな。行ってみるか。

博麗霊夢

実際、あんたのティーカップが失くなってるんだもんね。

博麗霊夢

いや…でも、どっかマジックアイテムの裏とかに隠れてるだけなんじゃないの？

霧雨魔理沙

いいや、整理整頓が苦手でも食器は流石にちゃんとしてるからな。

霧雨魔理沙

本当、奇妙な異変だよ。

博麗霊夢

あんたが魔法の森に行くなら私は人里へ行くわ。

霧雨魔理沙

お、一旦別行動か。

霧雨魔理沙

なら、神社で待ち合わせしようぜ

博麗霊夢

そうねぇ、分かったわ。

博麗霊夢

良い報告待ってる。

霧雨魔理沙

おう！

博麗霊夢

んじゃ、また神社でね。

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