ことは
じゃあ鈴、また明日ね
鈴蘭
うん、またね
鈴蘭
梅達にもよろしく言っといて
ことは
もちろん!
ことは
桜にもよろしく言っといてね
鈴蘭
うん
そんな会話を交わし 私は傘を差して外に出た
鈴蘭
あと15分くらいかも
桜
雨大丈夫か?
鈴蘭
大丈夫だよ
桜
わかった
なぜ桜くんと こんな連絡をしているかというと
みんなで桜くんの家に泊まった時 家に帰れない私をどこに住まわすかを じゃんけんで決めたのだ
しかも勝った人
鈴蘭
…おかしいよなぁ…
少し雨足が強まってきた
私は歩きを早めた
狭い路地の前を通り過ぎようとした時 横に人の気配を感じた
鈴蘭
…!
そこにいたのは 小学生くらいの男の子
高めの位置にある屋根で 必死に雨を凌いでいた
鈴蘭
…君、傘持ってないの?
男の子
えっ?あ…うん
鈴蘭
ここから家までどのくらいある?
男の子
に、20分くらい…
鈴蘭
20分か…結構遠いね
鈴蘭
あっ、言い忘れてたね
鈴蘭
私は朱羽鈴蘭っていうの
鈴蘭
君は?
男の子
…春翔
鈴蘭
春翔くんか、いい名前だね
鈴蘭
じゃあ春翔くん、お家の人の連絡先わかるかな?
男の子
わかんない…
鈴蘭
そっか…
鈴蘭
傘あれば自分で帰れる?
男の子
多分、帰れる
鈴蘭
ならこの傘あげるよ
男の子
え!?でも…ええと…
鈴蘭
鈴でいいよ
男の子
す、鈴ちゃんのでしょ?
男の子
傘なかったら鈴ちゃんが濡れちゃうよ…!
鈴蘭
私はもう近くだから大丈夫
男の子
ほんとに?
鈴蘭
うん
男の子
…ありがとう、鈴ちゃん
鈴蘭
いいよ、
鈴蘭
もう少し雨が弱まってから帰るんだよ
男の子
うん…!ありがとう!
鈴蘭
じゃあ、ばいばい
男の子
うん!ばいばい!
走って家まで帰り チャイムを鳴らす
桜
おかえ────
桜
って、なんでそんな濡れてんだよ!?
鈴蘭
傘壊れちゃった
桜
壊れたって…その傘は?
鈴蘭
捨てた
桜
やべぇなお前
桜
とりあえず風呂入れ
鈴蘭
うん
鈴蘭
ありがとう
桜
なっ…!?なにがだよ!!
鈴蘭
顔真っ赤だよ〜
その日の夜
桜
じゃあな鈴
鈴蘭
うん、おやすみ
桜くんとは別の部屋にある布団に潜る
鈴蘭
はぁ〜
さっきから頭痛がひどい
鈴蘭
風邪……引いたかな
ぼやける視界に諦めをつけて そのまま目を閉じた
朝起きて顔洗って 行く用意をする
いつも通りのはずなのに この日は何か違った
鈴蘭
…あ、桜くん
桜
着替えたのか?
後ろを向いたまま返事をしてしまった
流石に良くないかと思い 鈴の方を向く
桜
ちょっ、は!?
いつも通り行く用意はしていた
いつも通りすぎるくらいだ
だけど、鈴の顔は真っ赤で 目は焦点があっていなかった
桜
お前…完全に熱出てるだろ…!
鈴蘭
桜くんが焦ってる…
桜
こんな時でもお前はお前だな!?
桜
えっ、こんな時どうしたらいいんだ
鈴蘭
大丈夫だよ桜くん
ゆっくりとした口調で 鈴がそう言った
鈴蘭
この家なにがあるかわかるから
鈴蘭
学校、行ってきてよ
桜
ほ、本当に大丈夫か…?
鈴蘭
大丈夫だって
桜
わかった……?
桜
もし何かあったら電話しろよ
鈴蘭
うん、
桜
じゃあな
鈴蘭
いってらっしゃい
楡井
えっ、それで学校来たんですか!?
桜
だってあいつが大丈夫って言ったから…
楡井
熱ある人そのままにして大丈夫なわけないでしょ!
蘇芳
まぁまぁ、楡井くん
蘇芳
鈴ちゃんが大丈夫って言ったんだよね?
桜
言った
蘇芳
なら大丈夫じゃないかな?
蘇芳
生きるための最低限のことはするでしょ
柘浦
昨日雨やったし、濡れて風邪引いたんちゃうん?
蘇芳
かもね
桐生
でも鈴いつも折りたたみ傘持ち歩いてるよ?
楡井
え?そうなんですか?
桐生
うん
桐生
少し前に貸してもらったしね
桜
でもあいつ傘折れたって言ってたぞ
楡井
え?でも昨日そんなに風吹いてなかったですよね?
柘浦
壊れたって嘘なんちゃう?
桜
…ならなんで…
クラスメイト
おい…なんだあいつ
クラスメイト
小学生か?
クラスメイト
どうするよ
桜
なんだあいつ
柊
おい桜
桜
うおっ…びっくりした…
柊
俺らと来い
桜
はぁ?んでだよ
柊
いいからこい
梅宮
君、どうしたの?
男の子
あっ…えと…あの…
柊
…!その傘、鈴のじゃねぇか?
男の子
!そう…!
男の子
鈴ちゃんに貸してもらって、それで返しにきたんだ…!
梅宮
鈴がそれ貸したの?
男の子
うん
男の子
僕が傘持ってなくて困ってたら貸してくれたんだ!
梅宮
へぇ〜
男の子
それで、その時に着てた服が風鈴のだったから…
桜
それで来てみたってわけか
男の子
うん…!
男の子
でも…鈴ちゃん、いないの?
梅宮
鈴は今ちょっと用事で居なくてな!
梅宮
代わりにこの桜くんが渡してくれるから!
桜
なんで俺なんだよ!?
男の子
ほんとに?ありがとう!
桜
はっ…!?
梅宮
まぁまぁ貰ってやれって〜
桜
っ、わーったよ!
柊
じゃあ、気をつけて帰れよ
男の子
うん!ありがとう!!
梅宮
じゃあ、桜ももう帰れ
桜
はぁ!?なんでだよ!
梅宮
鈴が心配だから
桜
…知ってたのかよ
梅宮
そりゃ、朝いつも会ってるもん
柊
鈴によろしく言っといてくれ
桜
…わかった