藤山 辰巳
藤山 辰巳
そう言って、真咲の目を見つめる。
2年前。
俺の友達に真咲を紹介されたのが、俺達の出会いだった。
…いや、正確に言えば、もっと前から真咲の事は知っていた。
学校で、俺を見ていたからだ。
最初は「なんだろう」「怖いな」とか思っていた。でも、顔を見る度に心臓が高鳴って言って、恋だって気付いた。
あぁ、これが恋なのかって。初めて思った。
だから友達になれて、凄く嬉しかった。最初はお互い緊張してた。
時を重ねて行く内に、どんどんと砕けて行った。今では超の付く程仲がいい親友。
それは嬉しかったし、凄く楽しかった。でも、思いは告げないと決めていた。
理由は、俺も男で真咲も男。
それに、告白をしたらアイツは困ってしまう。真咲を困らせたくはなかったんだ。
だから、このままで良かった。
一方的に想えるだけで良かった。
結川 真咲
藤山 辰巳
結川 真咲
藤山 辰巳
藤山 辰巳
結川 真咲
藤山 辰巳
俺は約一か月前から恋愛相談をしていた。
相談を受ける度にアイツは寂しそうだった。
それを見て見ぬふりして、好きでもない女の子の話をした。
その子が俺を好きなのを知っていたから、その心を利用したんだ。
俺って、俺ってクズだなぁ…
でも、こんな嘘で真咲が幸せになれるなら…
そうやって、自分の想いは押し殺して来た。
真咲が幸せに暮らせるなら、なんでも良かった。
ー3日後ー
藤山 辰巳
結川 真咲
藤山 辰巳
じゃあな、と言いながら俺は玄関のドアノブに手をかける。
結川 真咲
藤山 辰巳
結川 真咲
藤山 辰巳
結川 真咲
俺は颯爽と部屋を出た。
俺、上手に出来ていたかな。
微かに聞こえる叫び声を聞かなかった事にして、俺は走り出した。
ごめんな、真咲。
ずっと好きだった。ずっと、いつまでも一緒だって勘違いしてた。
お前と離れる時期が遅かったんだ。ごめんな。お前に辛い思いはして欲しくない。なぁ、好きだったよ。俺、ちゃんと我慢したよ。好きで好きでたまらなかった。これで漸く楽になれるかな。アイツとも気楽に、友達として、友達として…あぁ、言わない事ってこんなに辛かったんだ。早く言えばお前は俺と恋人になってたかな。それとも絶交していたかな。こんな気持ちになってでも、真咲の事を考えてしまう。ねぇ、今からでも間に合うかな。…無理だよね。今までありがとう。真咲。
藤山 辰巳
女の子
藤山 辰巳
女の子
彼女は泣きながら俺に抱きついた。
こんな嘘、直ぐにバレるだろうに。
何故告白してしまったんだろう。
ごめんね、君もごめんね、真咲と君を騙した罪は償うからね。今だけは、どうか許してね。
次の日、朝に真咲の家へ行った。
藤山 辰巳
何回かインターホンを押したが、真咲が出てくる気配はなかった。
藤山 辰巳
そして、夕方。
ピンポーン
すると、ドタドタ歩いてくる音が聞こえた。
藤山 辰巳
結川 真咲
まだ朝と思ってんのかよ!?
藤山 辰巳
俺は真咲の目を見つめる。
一瞬だけ、真咲の顔が強ばった気がしたが、その顔はすぐに消えていて、その強ばった顔は記憶から消した。
藤山 辰巳
結川 真咲
藤山 辰巳
結川 真咲
藤山 辰巳
そう言いながら俺は真咲の肩を叩く。…嘘の笑顔を振りまきながら。
結川 真咲
ドクン。ドクン。
何故か心臓が高鳴って行った。
告白されるはずがないのに。少しでも期待してしまった。
結川 真咲
藤山 辰巳
真咲は少し寂しそうに笑った。でもそれは俺の目の錯覚かも知れない。
でも、本当に…これで良かったんだろうか。
俺、真咲が好きだったよ。
ありがとう、好きだった人。
少し、泣いてしまいそうになる。
藤山 辰巳
「報告だけだから」、と後につけ加えて部屋をでる。
少しだけ耳を澄ませてみた。
結川 真咲
あぁ、もうほら、俺はまたこんな嘘を着いて後悔したんだ。