「下手に手を出せば噛みつかれる、獣の目だな」
1人目の客は言った
10人目の客は痩せた若い男だった。
「その絶望した表情にそそられる」
ifの頬を両手で包んで放ったその言葉にifは寒気がした
「お前は本当に色気があるね」
もう何人目かもわからなくなった客は、ifの背を指でなぞりながら言った
くすぐったさよりも快感を覚える自分に気づきながら、それでもifは逃げられなかった
布団の上に座り、 散らばった金を前に、
着物の前をかき合わせたifは 身を震わせて泣いた
雨に烟る街の、小さな煉瓦造りの建物の前にifは座り込んでいた。
ぼんやりとした視線の先には水溜りに反射する街路灯の灯り
背を煉瓦に預け、足を投げ出して濡れるに任せている。
どれほどの時間を そうしていたのだろうか
いふ
足先の感覚などとうになくなり、
いふ
愛しい友人を思う
いふ
懐には冷たい重さを抱えて、
いふ
光のない瞳を閉じた
上京してきた頃、ifには両親がいた。
『優しく立派な自慢の両親だ』
そう話すifを、内心悠佑は羨ましく思っていた
否、 妬んでいたと言っても過言ではない
悠佑の両親は土地の権力者であったが、早くに亡くなった。
まだ幼かった悠佑は、叔父夫婦の元で育てられた。
自分を厳しく躾けたその2人が、 両親の遺産を養育費目的で着服していたことなど、当時の悠佑は知るよしもなかった。
都会に出て、人脈を広げて人望を得た悠佑は、やがて同郷のifに出会った。
両親が不慮の事故で亡くなり、 東京でただ1人路頭に迷ったifを助けたのも悠佑であり、
その無邪気で純粋な慕いに救われたのも悠佑である。
コメント
8件
めっちゃ続き気になる… どうなっちゃうんだ…