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深夜

春千夜君はここ数日帰ってきていない

テレビもPCもないこの部屋で 一週間近くひとりぼっちだ

もちろんスマホもないから 彼が何処で何をしているかも疎か

いつ帰ってくるのかすら分からない

…… はるちよくん 、

彼の匂いが染みたベッドの中で 小さく丸まって眠りにつく

時計もないこの部屋で 静かな夜を一人で過ごすのは

とてもとても寂しい

瞑った瞳から涙が溢れた時 玄関の外からドンッと 何かがぶつかる音がした

…… な 、なに … ?

恐る恐るベッドを出て モニターから玄関を確認する

誰もいない ……?

ただ写っていないだけかな 、

でも 誰かが来ても出ないように って言われてるし …

もしも 彼だったら ━━

そう頭を過った瞬間 玄関を開けていた

春千夜君 !、

三途

…… …… ただいま 。

ど 、どうしたの … !?

家の外壁に凭れる彼は 手で腹部を押さえていた

血だらけで息が荒い

たっ 、立てる ?

三途

…… ッ、

ゆっくりと立ち上がった春千夜君が 身を委ねるように私を抱き寄せる

三途

なぁ

三途

俺がいない間 、

三途

何してた ……

ずっと 、

ずっと 待ってた

我慢していた涙が ぽろぽろと止めどなく溢れ出す

おかえりなさい 、春千夜君

弱った体を預けるように 彼はベッドの縁に凭れた

傷口に消毒液を垂らす

三途

痛ってぇ 、クソが 。

少し我慢してください

腹部の傷は深くはないが 横に数センチ程度 刻まれていた

傷が塞がるまで 安静にしてないと 、

腹部の傷が一番深いけど よく見ると頬や腕、背中等

全身に傷や打撲痕がある

傷の手当をするのは初めてで 痛痛しく可哀想に思う反面

弱った春千夜君が少し愛しい

…… これがキュートアグレッション

三途

それ傷だらけのご主人様の前で言うセリフか?

あっ 、

無意識に声に出ていて 慌てて唇を引き結ぶ

三途

はぁ

彼は溜息をつきながら 口元の乾いた血痕を腕で拭った

口端から縦に伸びた血の跡は 掠れただけで拭いきれずに残ってる

血って少し興奮します

なんだか
知らない春千夜君を知れたようで 。

痛いだろうし 出来れば怪我なんてして欲しくないけど

弱ってる姿なんて想像もつかなかったから

もっと色んな春千夜君を知りたいと思ってしまいます

彼の両脚の間に身を寄せて

口元の血痕に唇を重ね 舌先で舐めとってみた

寂しかったせいか我慢が効かず、 少し大胆だったかもしれないと

慌てて唇を離せば 熱が集まる頬を見られないように俯いた

三途

もっと

…… え 、

三途

もっと

彼の骨ばった指が私の顎を掴まえて 無理矢理に顔を上げさせ

三途

して

熱っぽい瞳が重なると鼻先をくっつけて

唇と唇が 触れそうで触れない遊びを繰り返される

三途

飼い猫は飼い主に尽くすもんだろ

でも 、

恥ずかし … ン、

触れた唇があたたかい

触れたかったのは 一方通行な気持ちではないと

体に 頭に教え込むような 柔らかくて優しい口付けだった

三途

明日 、今までで一番と言っていいくらいのデカイ仕事がある

三途

もしかしたらこんな傷じゃ済まねぇかもしれない

三途

でも必ず帰ってくるから

三途

帰ってきたら「おかえり」って抱きしめてくれねぇかな

もちろん

というか

そんなの当たり前です

いつまでもずっと待ってますし 、帰りが遅かったら私が春千夜君を迎えに行きます

だからどうか私の前からいなくならないで

目頭が熱くなって涙が込み上げた

そんな私を見て彼はふふっと笑った

三途

お前の居場所はここしかねぇもんな

頭をクシャクシャと撫でる手の体温が どうしようもないくらいに愛しい

反社くんと死にたがりちゃん

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