テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
深夜
三途君はここ数日帰ってきていない
テレビもPCもないこの部屋で 一週間近くひとりぼっちだ
もちろんスマホもないから 彼が何処で何をしているかも疎か
いつ帰ってくるのかすら分からない
桜
彼の匂いが染みたベッドの中で 小さく丸まって眠りにつく
時計もないこの部屋で 静かな夜を一人で過ごすのは
とてもとても寂しい
瞑った瞳から涙が溢れた時 玄関の外からドンッと 何かがぶつかる音がした
桜
恐る恐るベッドを出て モニターから玄関を確認する
桜
桜
桜
もしも 三途君だったら ━━
そう頭を過った瞬間 玄関を開けていた
桜
三途
桜
壁に凭れる三途君は 手で腹部を押さえていた
血だらけで息が荒い
桜
三途
ゆっくりと立ち上がった三途君が 身を委ねるように私を抱き寄せる
三途
三途
三途
桜
桜
我慢していた涙が ぽろぽろと止めどなく溢れ出す
桜
弱った体を預けるように 三途君はベッドの縁に凭れた
傷口に消毒液を垂らす
三途
桜
三途君の腹部の傷は深くはないが 横に数センチ程度 刻まれていた
桜
腹部の傷が一番深いけど よく見ると頬や腕、背中等
全身に傷や打撲痕がある
傷の手当をするのは初めてで 痛痛しく可哀想に思う反面
弱った三途君が少し愛しい
桜
三途
桜
無意識に声に出ていて 慌てて唇を引き結ぶ
三途
三途君は溜息をつきながら 口元の乾いた血痕を腕で拭った
口端から縦に伸びた血の跡は 掠れただけで拭いきれずに残ってる
桜
桜
桜
桜
桜
三途君の開いた両脚の間に身を寄せて
口元の血痕に唇を重ね 舌先で舐めとってみた
寂しかったせいか我慢が効かず、 少し大胆だったかもしれないと
慌てて唇を離せば 熱が集まる頬を見られないように俯いた
三途
桜
三途
三途君の骨ばった指が私の顎を掴まえて 無理矢理に顔を上げさせ
三途
熱っぽい瞳が重なると鼻先をくっつけて
唇と唇が 触れそうで触れない遊びを繰り返される
三途
桜
桜
触れた唇があたたかい
触れたかったのは 一方通行な気持ちではないと
体に 頭に教え込むような 柔らかくて優しい口付けだった
三途
三途
三途
三途
桜
桜
桜
桜
桜
目頭が熱くなって涙が込み上げた
そんな私を見て彼はふふっと笑った
三途
頭をクシャクシャと撫でる手の体温が どうしようもないくらいに愛しい