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六月。

じめじめとした日が続く。毎日雨ばかりだ。

亜子

さぁて、帰ろ。

少し歩いたところで、雨が降ってきた。

亜子

(あ、雨だ......傘、忘れちゃった。バカだなー)

亜子

(あ、あのバスの停留所なら、少し雨宿りできそう!)

わたしは小走りでそこへ行って、雨宿りすることにした。

亜子

(はぁ~。なんか、落ち込むなぁ。なんで忘れたんだろう?
また、お父さんや忍に言われちゃうかな......)

そんなことを考えていると、どんどんと惨めな気持ちになった。 その時だ。

流賀

あ!中西さんじゃん!!

七瀬くん......。

よく見ると、七瀬君の他に大柄な男子が立っている。

流賀

コイツ、岩ナルド・ディカプリッチ。同じ吹奏楽部なんだ。
サッカー部もかけもちしてる。

亜子

い、岩ナルド......?

流賀

そう!ハーフなんだって。

亜子

そ、そうなんだ......。

岩ナルド

どうも。初めまして。岩ナルドです。
昔ヒットした”アイアニック”って映画の俳優さんの
名前に似てるでしょ?

亜子

あ、うん......。

わたしは言葉に詰まってしまった。 そこへ......。

お姉ちゃん!!

亜子

し、忍......。

傘、忘れたの!?こんな日に!?
何やってんの!だめじゃん!

突然責め立てられて、眉をしかめながら地面を見つめた。

亜子

(どうしてこうなんだろ?もっと、言い返せるようにならなきゃいけないのに......)

流賀

中西さんの、妹さん?

あ、はい!妹の忍です!
姉がいつも迷惑かけててすみません!

亜子

(そんな......。迷惑なんて、かけてないのに)

すると流賀くんは、こんな風に言ってくれた。

流賀

いや。迷惑なんてこと、全然ないよ。
他人に迷惑かけてるとこなんて、
見たことないし。

え......。

流賀

あんまり話したことはないけど、
素敵な人だと思うな。

忍はぽかんとした顔をした。

あ、そうですか。と、とにかく、
お姉ちゃん、早く帰るよ!!

忍は二人に会釈したあと、わたしの腕を 強引に引っ張った。

ちょっと、お姉ちゃん、あの人だれ?

亜子

あ~。クラスの男子。

わたし、あんな風に言われると思わなかった。

亜子

(たまにはいいのよ。あれくらい言われなきゃ
分かんないんだから)

それにしても、七瀬君......。 初めて、わたしを助けてくれた人。

ずっと味方なんかいなかった。 ずっと、一人で苦しんできた。

こんな風に言ってくれる人なんて、 全然いなかった。

母親の仏間。

お母さん、味方になってくれる人がいたよ。 わたし、嬉しいよ。

わたしの目からは、 大量のお湯が流れ出た。

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