この世界には
ごく稀に奇跡のような力を持って生まれてくる人がいる
ただそれを世間が知ることはない
周囲から奇異の目に晒される、その力を
彼らは語られることもなく
街に溶け込むように過ごしている
そして、僕も…
トキ
マリ、もう泣くなよ
マリ
ごめんね、トキ
マリ
色々相談のってもらったのに
マリ
わたし…相手にされてなかっみたい
トキ
…マリ
マリには好きな奴がいた
そいつからひと月前に告白された
マリはそいつをずっと好きだったのに
『わたしは彼に釣り合うのか』
そんな事を気にして
オシャレを勉強して洋服も揃えて 精一杯努力してきた
そして今日やっと決心がついて返事をした
それが…
マリ
酔ってて冗談のつもりだったって
マリ
当然だよね、何わたし勘違いしてるだろ
マリ
わたしみたいな地味で目立たない子を
マリ
彼が好きになるはずないのに
マリ
あはは…恥ずかしい
そう笑うマリの頬には
とめどなく涙が伝い続けている
トキ
トキ
ちょっとアイツと話してくる
マリ
やめて!
マリ
ごめん、冗談に決まってるのに真に受けたわたしが悪いの
マリ
トキにも迷惑かけちゃった
マリ
今日もついてきて貰っちゃって
トキ
マリ
マリ
ごめん、このお礼はちゃんとするから
トキ
マリっ!!
マリ
えっ?
トキ
もう謝るな
トキ
もう無理に笑うなよ
マリ
マリ
マリ
わたし…
マリ
嬉しかった
マリ
すごくすごく嬉しく
マリ
いっぱいいっぱい頑張って
マリ
なのに…
マリ
マリ
こんなの…ひどいよ
マリ
もう嫌だよ、全部
せきを切ったように泣くマリ
トキ
トキ
マリ、聞いて欲しい
トキ
もし、マリからアイツの記憶を消せるなら
トキ
消したいか?
マリ
マリ
どういう事?
トキ
いいから答えて
マリ
お願い
マリ
マリ
わたしの記憶を消して
マリ
お願い、トキ
トキ
わかった
トキ
目を閉じて
マリ
あれ?わたし
トキ
大丈夫ですか?
マリ
あ、はい
マリ
立ちくらみかな
トキ
肩を貸しますよ、座れるとこまで行きましょう
マリ
ごめんなさい、初対面の方にご迷惑をかけて
トキ
大丈夫ですよ
トキ
謝らないでください、もう
僕との記憶は
彼女にはもう無い
このひと月、僕と話してたアイツに関する記憶も、消えてくれたみたいだ
マリ
でも…あ、後日お礼させてください
トキ
気にしないでください
トキ
もうこの街から引越すとこなんで
マリ
…そうなんですか
マリ
あれ?
マリ
こんな服…持ってたかな
トキ
可愛いですね
マリ
ホント可愛いですね
マリ
って、なに自分の服を褒めちゃって
恥ずかしそうに笑う
この力でマリを笑顔にできたことが
僕は嬉しかった
トキ
似合ってますよ