ノックはした。 でも返事がない。
ホソク
俺の部屋と同じベッドの上に寝ているジョングクがいて、派手な右腕が布団から出ている。 こんな時くらい服を着て寝ればいいものを。 懸念してはいたが、案の定な姿に適当に服をクローゼットから持ってきて良かったと思った。
側まで行って見下ろすと眉間に皺を寄せて寝ている。 その額を触ってみたら、確かに熱い、気がした。
ホソク
ベッドに腰を下ろして名前を呼ぶと薄っすら目を開けたジョングクと目が合う
ホソク
イブプロフェンと書かれた錠剤の箱をベッドサイドの小さなテーブルに置いた それから服はジョングクの露わになってる逞しい肩辺りに。
ごそごそと動いたジョングクが上体を起こすと、素直に服を着て素直に薬を飲んで
グク
少し掠れた声で素直に甘えてみせた。
ホソク
ホソク
冷たく聞こえるだろうが意地悪を言うつもりはない。 "風邪が移る"という直接的な表現を避けたまでだ。 俺の言葉にジョングクが微かにだけ笑った。
グク
ホソク
熱があっても悪たれ口はいつも通り。 意外と元気そうで少し安心した。
ジョングクがふふっと声に出して笑うと眠そうな目を俺に向けて
グク
グク
そう言ってまた少し微笑むと俺の太腿に手を置いて、寝てしまった。
俺がここにいるかどうかじゃなくて、ここがジョングクの家だから休めるんでしょ? と言いたかったが、今度は安心した様な寝顔で口を少し開けて寝てるジョングクを見たら何も言えず。
熱で言葉の言い回しが変になったのか。 それとも、俺がジョングクに与えてる安心感はそれほどまでなのか。
ホソク
憎まれ口をその寝顔に呟く。 頬を撫でるとその手に擦り寄るみたいに動いたジョングクは、一体どんな夢を見てるのだろう。
夢を見た。
俺が泣いててまた靴を投げようとしてる。 でも相手はかつての店長じゃなくて、ジーーー
グク
名前を呼ばれて仕方なく目を開ける。 暗い部屋だけれど、家具やカーテンの縁取りは目が慣れていてよく見える。
だからこれが現実であると認識は出来たのだけれど、寝返りを打つと目の前にジョングクがいて、こうなった少し前の過去を思い返す。
ああ、そうだ。 確か俺までうとうとしてきてそのままここで。
ホソク
瞼は再度閉じたけれど、思い出した事を口にするのは難しくなかった。
グク
まだ部屋が暗いという事は起きる時間ではないという事、起きる必要がない時間だという事だ。 風邪が移るかもしれないからこの場で寝るつもりはさらさらなかったのだけれど、今は眠くてもうここでいいやって。
殆ど手付かずのチキンを放置している事も、携帯を充電せずにテーブルの上に置きっ放しにしてる事も、考えるだけで行動には移せず。
また直ぐに夢の続きが見れそうなくらい。
グク
またジョングクが名前を呼ぶ。
ホソク
瞼は開けずに答える。
グク
ホソク
グク
どうせ何回もやってる事。 こうやってどちらかのベッドで寝るなんて、もう何回もあった事だ。
ジョングクの手が俺の首に触った、気がした。 それから何かを確かめる様に何度も撫でて
グク
そう聞こえた、気がした。
何もかももう"気がした"くらいの意識だから仕方ない。 夢か現実か区別がつかない状態の中で、まだ半分くらい機能してるのは耳。
ジョングクが動いて布団からはガサガサという乾いた音がした。 多分、俺の頬をジョングクが触っている。 "大丈夫"と言ったジョングクの言葉通り、その手は冷たくも熱くもなくて安堵したのか、また一つ夢に傾く。
心地良い暖かさの布団の中で事切れた俺に、夢の中でジミンがキスをした。 ジミンにしてはやたら優しくて控えめなキスだった。
翌日。 カーテンの隙間から朝の日差しが差し込んで、それが丁度俺の顔を照らしていて眩しくて目が覚めた。 ジョングクの部屋で寝たはずなのだが、ジョングクの姿がなくて半分寝惚けたままリビングに向かった。
グク
それはキッチンに立ってるジョングクの言葉だ。 まだボサボサの俺とは違ってすっきりした顔に見える。
ホソク
グク
道理で。
ホソク
何はともあれジョングクが回復したなら何よりだし、キッチンに立って何が作る余裕まであるのだから申し分ないだろう。
ホソク
部屋に入って直ぐに違和感に気付いたという事は、もう確実に覚醒してるという事だ。 ベッドサイドのワイヤレス充電器の上に自分のスマホが置いてある。
確か昨夜リビングのテーブルの上に置きっ放しにしちゃったはず…
俺がここに置いてないとしたら、こんな事をするのはジョングクしかいない。 先に起きてリビングに行ったから、気を利かせてやってくれたのかも。
考察はきっとほぼ間違いない。 だからそのままベッドに座ってしっかり100%になったスマホを確認する。
3件のカトクの通知はどちらもジミンだった。 短い文章2個のあとには泣いてるキャラクターのスタンプが送られて来ていた 午前2時過ぎに"起きて"なんてだいぶ無理がある。
今の時間は午前9時過ぎ。 もう遅いかとも思ったけれど、ジミンの声が聞きたくて自然と発信をタップしていた。
割と長めの呼び出し音。 そりゃあ寝てるよなって切ろうとした時
ジミン
いつもより少し鼻声に聞こえるがジミンの声でそう聞こえた。
ホソク
ジミン
ジミン
ジミン
電話の向こうでゴソゴソと音がしている。 布団の中なのだろう。
ふにゃふにゃした声だが寝起きとは思えないジミンの発言に吹き出して笑ってしまった。 その質問に答えるとすれば、ジミンとなら別に昼でも夜でも構わないというのが本音だ。
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