テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
α
マー坊
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
サイレンは、もう珍しくもなかった。
空が歪む。
ひび割れるみたいに、黒い裂け目が広がる。
そこから落ちてくる“何か”。
__マモノ。
isg
短く言って、屋上から飛び降りる。
着地と同時に視界が澄んだ。
どこから来る。どう動く。どう倒す。
全部、分かる。
isg
小さく呟くと、体が“答え”に沿って動き始める。
最初の一体は、すぐに見つかった。
人の形をしているのに、どこも人じゃない。
影を固めたみたいな、不快な塊。
一般人が固まっている。逃げ遅れてる。
isg
声をかけると、みんな一斉に振り向いた。
__その目。
期待と、不安と、安心。
民
民
当たり前だろ、と思う。
isg
一歩、踏み込む。
マモノが動く。速い。でも――
遅い。
回り込む。死角。関節の位置。核の場所。
“そう動けばいい”って、体が知ってる。
拳。
衝撃。
黒が弾ける。
isg
それだけだった。
ざわめきが、背中に広がる。
民
民
民
振り返ると、頭を下げられる。
isg
それだけ返して、背を向ける。
助けられる。
守れる。
それは、ちゃんと分かる。
__でも。
胸の奥に、うまく言葉にできない“何か”が残る。
満たされているはずなのに。
少しだけ、空いている。
isg
首を振る。
今はいい。次だ。
その日の夕方。
もう一度、歪みが開いた。
規模はさっきより小さい。
単体か、多くても二体。
屋上に上がると、先に“誰か”がいた。
黒い影と向かい合っている、少年。
動きが__変だ。
無駄がない、じゃない。
無駄を“楽しんでる”。
マモノの攻撃を、ギリギリで避ける。
笑ってる。
?
__笑ってる?
違和感。
でも、強い。
isg
思わず声をかけると、その少年が振り向いた。
目が、合う。
その瞬間。
__何かが、引っかかった。
?
首を傾げる。
楽しそうな顔。
初対面、のはずだ。
でも。
どこかで。
isg
言葉を選ぶ前に、体が決めていた。
?
軽い調子。
なのに、妙に距離が近い。
isg
それ以上、言葉は出てこなかった。
戦闘はほんの一瞬で終わった。
互いに動きが分かるみたいに、噛み合う。
一切連携なんて取ってないのに。
最後の一撃が重なって、マモノが消える。
静かになる。
?
少年が伸びをする。
isg
聞かなきゃいけない気がした。
?
間髪入れずに返ってくる。
__ばち、ら?
初めて聞くはずの名前。
なのに。
isg
それ以上、続かない。
沈黙が、少しだけ落ちる。
蜂楽が、こっちを見る。
じっと。
なにかを確かめるみたいに。
bcr
口を開く。
bcr
isg
bcr
心臓が、わずかに跳ねた。
isg
すぐに否定する。
寂しい、なんて。
そんなはずない。
だって。
isg
助けてる。守ってる。間違ってない。
bcr
蜂楽はそれ以上何も言わなかった。
ただ、少しだけ笑う。
それが。
その表情が。
どこか、痛かった。
bcr
軽く言って、こっちに一歩近づく。
距離が、近い。
なのに。
嫌じゃない。
むしろ__
bcr
名前を、呼ばれる。
isg
反射的に出た言葉。
初対面のはずだ。
bcr
蜂楽が、少し考える仕草をする。
bcr
笑う。
bcr
当たり前みたいに。
bcr
__知らない。
そんなはずない。
なのに。
否定の言葉が、出てこない。
胸の奥が、ざわつく。
“何か”が、そこにある気がする。
でも。
掴めない。
isg
そう言って、目を逸らす。
isg
手を差し出す。
蜂楽が、それを取る。
温かい。
そのはずなのに。
どうしてだろう。
その温度を、“知っている気がした”。
でも思い出せないまま。
俺たちは、隣合わせ、並んで立っていた。
それが当たり前かのように。