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カヤが二人を見かける数分前

アキラ

なに、お願いって

ハルナ

うん……。
最後、最後だけ。

アキラ

…?

ハルナ

最後、このお店を出るまでは
別れる前の二人でいたい。
それで私も切り替える……。
だから……。

ハルナ

お店を出るまでは恋人でいさせて?

アキラ

……。

それくらいなら……まぁ。 時間にも余裕はあるし、何より僕自身もこれで区切りをつけなくちゃならない。

アキラ

分かったよ。
これで最後にしよう。

ハルナ

うん
ありがとう

そう言うとハルナは呼び出しベルを鳴らして、季節のパフェらしい桃のクリームパフェを注文した

ハルナ

ちょっと気になってたんだ、これ笑

アキラ

まぁ、たしかに。
美味しそうだね。

ハルナ

半分あげるよ笑
私多分そんなに食べられない笑

アキラ

食べきれないものを頼むなよ……。

ハルナ

あははっ笑

ハルナ

なんか昔みたいだね
この感じ……。

アキラ

……。

ハルナ

……。
なんだか、今すごい幸せだ。

無邪気な笑顔から一転、ハルナの顔が曇る。

ハルナ

私……なんでっ……
なんでアキラと別れようなんて思っちゃったんだろう……。

ハルナの瞳が輝きを増し、頬に雫が伝う

ハルナ

こんなに……
こんなにも……アキラのこと……
大好きだったんだなぁ…。

アキラ

……。

ハルナ

ごめんね、泣いちゃったりして…。
でも、もう大丈夫だから……。

そう呟くハルナが泣き止むまで 僕は向かいでただ眺めていることしかできなかった

桃のクリームパフェが届くと、ハルナはもうすっかり泣き止んでいた

ハルナ

わ〜美味しそう!

アキラ

だね、溶けないうちに食べよっか

自分用のスプーンをカトラリーボックスから探していると

ハルナ

いいよいいよ

ハルナ

今だけ、恋人。
でしょ?

アキラ

……っ

そう言うとスプーンで掬ったクリームを僕の口に向けるハルナ

アキラ

あ、ありがと……

なんだか照れくさくなってしまい、少しはにかむ僕。たしかにこうしていると、まるで昔の僕らのようだ。

ハルナ

アキラはこのあとなにか予定あるの?

アキラ

……。
隣町の夏祭り、行こうかなって。

ハルナ

えぇ〜!!?
私とは一回も行ってくれなかったのに〜!!!

アキラ

わ、悪かったよ……。

ハルナ

……。
好きな子、出来たの?

アキラ

な、なんで?

ハルナ

ほら、もう。
それが答えでしょ。

アキラ

……。

ハルナ

大体、別れることを渋ったアキラが私と寄り戻さない、なんてアキラが新しい恋に進んだ以外考えらんないよ

アキラ

……そうだね

ハルナ

……。
そっかぁ、恋かぁ。

涙を流して少し赤らんだ頬を浮かべたハルナは天井を仰いだあと、僕を見つめて言った

ハルナ

私より、素敵な人見つかっちゃったの悔しいね。

アキラ

……。

ハルナ

だから私も前に進む。
今日はホントにありがとう。

アキラ

…うん。
こちらこそ。

これで良かったのだ、と。 お互いの気持ちにケジメがつき、留まっていた足は新しい道へと歩き出す。 縛られることも枷になることも無い。 これが理想の別れだったのだ、と。

アキラ

カヤ

『夏祭りやっぱり行きたくない。』

アキラ

!?

慌てて辺りを見回すと時計は14:30を指していた

アキラ

(時間じゃない…。なんでだ?)

すると僕の目に信じられないものが映り込む。

ガラス張りに映る通りの奥、喫茶店とは向かいの横断歩道にたたずむ見知ったアッシュ色の髪の女性がこちらを向き去ろうとしていた

アキラ

(カヤ!?)

慌てて立ち上がる僕 ハルナが何事かと動揺していた

ハルナ

え、ちょなになに??

アキラ

ごめん!
急用できた!

財布から1万円札を取り出しテーブルに叩きつけた僕は人生で1番の全速力で店を出た。

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