恭一は、拓が殺される未来を回避するため
拓は、純粋に事件を解決するため
2人は『女子生徒連続バラバラ殺人』に臨む。
拓
兄貴から貰った情報がある
拓
まずはそれを共有しよう
『現在、被害者は若い女性のみ』
『事件はすべて夕方から夜にかけて発生している』
『被害者は監視カメラのない住宅街で消息を絶っている』
『被害に遭った女性は全員バラバラにされている』
『殺害方法は絞殺、刺殺の2パターン』
『すべての部位はまだ発見されていない』
『遺体に性的暴行の痕跡はない』
恭一
なるほど…
恭一
異常者による犯行…
恭一
そのくらいしかわからなくね?
拓
そんなことはない
拓
被害者はみんな、監視カメラの死角をついて連れ去られている
拓
つまり、犯人は被害者の行動を充分に調べている
恭一
計画性があるってことか
拓
そう、犯人は『秩序型』の人間だ
恭一
秩序型?
拓
プロファイリングでよく使われる用語だよ
拓
秩序型は、犯行に計画性があり、死体や証拠を隠蔽する
拓
事件全体に統一感があるのが特徴だ
恭一
他に何がわかる?
拓
秩序型は総じて知的水準が高い
拓
また、まっとうな職業に就いてる傾向がある
恭一
一般人に紛れているってことか
拓
女性を連れ去り、バラバラにした部位を各地に捨ててることから
拓
車を所持しているのも間違いない
拓
それから、広いマンションか一軒家に住んでるだろうな
恭一
その根拠は?
拓
人をさらい、バラバラにするんだ
拓
近隣住民にバレないためには
拓
そういうスペースのある住居が必要だろう
恭一
なるほどな
恭一
単独犯だと仮定するなら家族もいなさそうだ
拓
人をさらい、バラバラにしてるわけだしな
恭一
犯人の輪郭がどんどん見えてきた
恭一
すごいな、拓…!
拓
ま、プロファイリングの初歩さ
恭一
だけど、まだ幅が広すぎる
恭一
これだけじゃ犯人を絞り込むのは難しい
拓
まだわかることはある
拓
こういった連続殺人は、性欲が絡むことが多いんだ
拓
だけど被害者に性的暴行の痕跡はない
拓
犯人は特殊な性癖を持っているのかもしれない
拓
となると、犯人はターゲットの女性を必ず吟味している
恭一
これだけ犯行を重ねているもんな
恭一
しっかり調べるのは当然か
恭一
だけど犯人は、まっとうな職に就いてるかもしれないんだよな?
恭一
そんな奴がどうやって女性を吟味するんだ?
恭一
しかも被害者は全員学生
恭一
怪しい男が女子生徒をジロジロ見てたら
恭一
すぐに通報されるんじゃないか?
拓
たしかにそうだな…
拓
──たとえば、営業職はどうだろう
拓
ある程度自由に外出できるし
拓
路肩に車を止めて、電話する振りをしながら観察するとか
恭一
ありえそうだな
拓
──いや、やっぱりないわ
恭一
何でだよ
拓
これだけ殺人が連続してるんだ
拓
被害者たちは充分に警戒してたはず
拓
それなのに彼女たちは連れ去られた
恭一
連れ去られた場所は住宅街だったな
恭一
悲鳴を上げれば誰かが気づくよな
恭一
そうなってないってことは…
拓
被害者は声を上げなかった
恭一
スタンガンで気絶させたとか?
拓
そこまで強力なものなんてあるかな…
恭一
じゃあどうやって声を上げさせずに連れ去るんだよ
拓
──たとえば
拓
被害者は、自分から車に乗ったとか
恭一
それこそありえねーだろ
恭一
これだけ事件が起きて警戒してるなら──
拓
警戒する必要のない相手だったら
恭一
えっ?
拓
そうだよ、そういうことだ!
拓
女子生徒にとって、警戒する必要のない相手
拓
しかもそいつは、女子生徒の観察も怪しまれずにできる
恭一
おいおい、そんな都合の良い人物なんて──
恭一
あっ!
拓
気づいたか
恭一
学校の先生か!
拓
そのとおり
拓
バラバラ殺人が起こる前から
拓
学生による事件が多発していたよな
恭一
薬の売買、パパ活、神待ち…
拓
それを問題視した教育委員会は
拓
各学校の教員に、夜の見回りをするよう提案した
拓
うちの高校はもちろん、他校の先生も見回りに参加している
恭一
その見回り中に、ターゲットを吟味したのか!
恭一
見回り中なら、他校の生徒に声を掛けてもおかしくない
恭一
補導にかこつけて車に乗せることもできそうだ
恭一
間違いない、学校の先生が犯人だ!
拓
落ち着け、まだ決まったわけじゃない
拓
あくまでプロファイリングによる推測の域をでない
拓
本当に先生が犯人かどうか
拓
捜査開始だ
翌日、学校に着いたとき
上履きに履き替えようとすると
恭一
何だこれ?
拓
おいおい、ラブレターじゃないか
恭一
え、マジかよ…!
拓
今どき古風だな
拓
いや、ロマンチックと言うべきか
拓
何にせよ、良かったじゃないか!
恭一
(嬉しいけど…)
恭一
(今はそれどころじゃない…)
恭一
(拓の命がかかってるからな)
放課後
恭一はラブレターに記された場所に向かった。
そこにいたのは
片山友理奈だった。
恭一
(俺が犯人扱いされたときに庇ってくれた子か…!)
友理奈
あ、高山くん…!
友理奈
突然呼びだしてごめんね
友理奈
お手紙にも書いたけど…
友理奈
その、ずっと前から好きでした!
友理奈
私と付き合ってください!
恭一
…………
恭一
えっと、すごく嬉しい
恭一
だけど…
友理奈
っ!
友理奈
う、うう…
恭一
ま、待て、勘違いしないでくれ!
恭一
返事は保留にしたいんだ
友理奈
どういうこと?
恭一
今、大変なことに首を突っ込んでて
恭一
一段落するまで、考える余裕がないんだ
恭一
だから問題が解決するまで
恭一
答えは保留にさせてほしい
友理奈
──わかった!
友理奈
その代わり、解決したら必ず返事を聞かせてね
友理奈
約束だよ
小指を差しだしてくる。
恭一は、手袋をしたまま指切りをした。
友理奈
前から気になってたんだけど
友理奈
その手袋は何?
恭一
俺、接触恐怖症でさ
恭一
(未来視のせいで、人に触れるのが怖いんだ)
友理奈
そっか…
友理奈
私と一緒に克服していこうよ
友理奈
手、つなぎたいし!
恭一
か、考えとく…
ひげ面の男
次のターゲットは、白村拓…
ひげ面の男
だが、中々1人にならない
ひげ面の男
こいつは、後回し…
ひげ面の男
次のターゲットは…
ひげ面の男
片山友理奈