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最高でした!
凄く素敵なお話でした! 今回も作品名が凄く興味をひかれました! 全部が真っ黒なの桜っぽいなーと思いました! 美容室系なのは初めて読んだのですが、凄く良かったです! ミリしらで書けるの凄いと思います! 想像力が凄くて尊敬します! 素敵な作品をありがとうございました!
桜の声に恋する蘇枋さんがとても好きです!この雰囲気がすごい好きだし、桐生君も優しいです!ありがとう!
恋愛なんて物 ハナから興味なんてなかった。 甘ったるい声で、 甘ったるい匂いで、 言い寄ってくる人達が とても嫌いだった。
これからも自分は 甘い恋なんて知らずに 生きていくのだろう。 それでいいのかもしれない。 甘ったるい恋は、 俺にとったら気味が悪い物でしか ないのだから。
これは変わらない。 変わることがない。 そう思っていたのに、 口から気持ちが溢れ出して 来るかの様に、 思わず
「俺は貴方の事が好きなんです。」 心からメロディーがでてくる 様に気持ちが声に乗って あふれ出たんだ。
蘇枋
小さな美容院の 小さなドアが 綺麗な鈴の音を鳴らしながら 開く音がした。 それに反応し、 接客をしに行く。
接客をされた お客は、目をぎらりと 光らせ、目の前の イケメンオーラが溢れる 男へ話しかけた。
蘇枋
ずらりと名前が並んだ 名簿を見て、 目の前の女性のお客様に 聞いた名前があるのかを確認する。
蘇枋
蘇枋が女性を座らせ、 髪型の要望を聞く。 女性はあれやこれやと 髪型を詳しく話した。
女性の髪を切る前に 優しくシャンプーをし、 髪の毛を整えた。 女性の髪からは、 甘ったるい香水の 匂いがして 一瞬顔を顰めたが 直ぐにいつものポーカーフェイスを 取り繕った。
急に女性がモジモジ しだしたかと思えば、 名前を聞かれた。 あぁいつもの事かと 思いながら 貼り付けた笑顔を女性に 見せた。
蘇枋
名前を答えれば 女性は嬉しそうに ふわりとした笑みを零した。 急に下の名前を呼ばれ 背筋がぞっと逆立つのを感じる。
そこからは、 美容師らしく 世間話や、 女性の容姿を褒めたりと 時間を潰して言った。
そして段々と女性の髪型は、 腰くらいまであったはずの ロングヘアーが 肩ぐらいの長さをした 髪型になっていた。
蘇枋
蘇枋
ニッコリ微笑みかけると 女性は仄かに頬を染めた。 髪を耳にかける姿は、 きっと世の中の男達にとっては 最高の物なのだろう。
けれど蘇枋隼飛はそうではなかった。 笑顔の裏にある感情など、 早くこの時間が終わって欲しい。 早く帰って欲しい 喋りかけられたくない などと美容師らしからぬ 感情ばかりだった。
ニッコリ微笑んだまま 固まっていると、 不意に店内にいつもとは 少し違う雰囲気の音楽が流れた。 それは直ぐに蘇枋の耳に入り、 蘇枋の心の中へと すぐに溶け込んだ。
甘ったれた声ではなく、 どこか澄んでいて 爽やかさを感じる低い声。 穏やかになる楽器の音 普段音楽等に興味は無いが、 この日 何故かこの曲にすごく心を 奪われた。
蘇枋
自分の心情を誤魔化すかの様に 女性に薄っぺらい甘い言葉を 掛けた。 女性は嬉しそうに顔を綻ばせ こちらをじっと見てきた。 手の震えから感じ取れるとは とても緊張した様子だと言うこと。
美容室に女性らしい高く緊張で強ばった声が響いた。 他の美容師達は、 またかとちらりこちらに視線を 向けては、自分の作業へと 戻っていた。
蘇枋
蘇枋
もちろんこれらは真っ赤な嘘。 面倒事を避ける 1つの手段である。
女性はとても残念そうに 視線を下に向けた。 そして何かを決意したかの様に ばっと下に下ろされていた はずの視線は、蘇枋を しっかりと捉えていた。
蘇枋
蘇枋
ひらりと扉に向かう女性に手を振り 退店させた。 自分の口が自分のモノでは 無いようにスラスラと 出てくる嘘の言葉に はぁ、と1つ軽いため息を 付いて、スタッフルームへと 戻った。
桐生
一足先に休憩を取っていた 桐生くんがヒラリと軽くてを降っていた。 俺も手を軽く振り返して 近くにあった椅子に座った。
蘇枋
桐生
桐生
蘇枋
フワフワ緩く喋る 桐生君の優しさに ニッコリ微笑んだ。 この空間が一番心が休まる時かもしれない。
その時ふと思い出した。 さっき流れていた 耳に残る様な曲。 今まで音楽という物に 興味は全くなかったが、 さっき聞いたあの曲 あの1曲にとても惹かれた。
蘇枋
蘇枋
耳に残ったフレーズを 頼りに 桐生に聞いてみた。 ネットに詳しい彼ならば、 何か知っているのではないかと
桐生
桐生
蘇枋
それは残念と 軽い口調で言ってみた。 眉を下げて笑う姿を見て 桐生君が 目を細めふにゃりと笑った。
桐生
桐生
蘇枋
桐生君の揺さぶりかけた様な 言葉に揺らされる事無く お得意のポーカーフェイスで にっこり笑った。
桐生
蘇枋
桐生
桐生
そんな事ないよと 笑いながらその後も 桐生君と少し 談笑をした。 気づけば時計は休憩に来てから 10分程立っていた。
蘇枋
桐生
蘇枋
蘇枋
桐生
桐生
自身の荷物を持ち上げ、 桐生くんの優しい言葉に いつもの笑顔を にっこりと向けた。
蘇枋
桐生
蘇枋
はしたないとは 分かっているが、 日頃の疲れに ベットに転がり込む以外の 選択肢はなかった
精神的にも肉体的にも 疲れる毎日。 ベットに転がり込んで 柔らかい布団に顔を埋める。
蘇枋
こんなに疲れていても やはり思い浮かぶのは さっきの透き通るような綺麗な曲。
気になって 布団に埋もれながら スマホを取りだした。 頭に残ったキーワードを とりあえず検索してみる。
1番上にでてきた曲を タップしてみるが、 仕事中に聴いた曲、 惹かれるような声とは 全然違うものが流れた
蘇枋
はぁっと 浅いため息を着き、 スマホを軽くスクロールする。 次々名前がついた曲が 画面を流れて行くが、 どれもピンと来るものは なかった。
蘇枋
これもあれも、 どれも探していた曲では なくて、 眉間に皺が寄る。
蘇枋
疲れも溜まっているし、 今日は寝よう。 そう思い、 スマホをスっとスクロール した所で、 指を止めた。
スクロールした先は 次々とカラフルな サムネの曲の中に、 一つだけ真っ黒で 名前も特に書かれていない 物が流れ出てきた。
今日はこれで最後。 最後の1回。 そう思い、何も特徴の 無い動画をタップした。
スマホから流れてきた 音声に、 思わずゴクリと唾液を飲んだ。 その声は、 仕事中に聞いた あの透き通る様で少し低めの声。 俺の指は、気づけば 何回もその動画を再生していた。
大した視聴数も いいねの数も 2桁を超えていないその曲に どうしてこんなにも引き付け られるのだろうか。
今まで聞いてきた流行りの 曲等に、 こんな感情を抱くことは なかったのに。
蘇枋
気づけば自分の顔に 熱が集まっていた。 誰も見ていないのに、 思わず顔を隠す様に 手を口元に置いた。
この胸の高鳴りを どうやって収めよう。 今にも 眠ってしまいそうな程 だった体の疲れは、 この1曲で、 この1曲だけで
俺は今夜眠れなくなる程 胸の高鳴りと、 顔の熱を 抑えられなかった。
この時に、 俺は顔も素性も 何も知らない貴方に、 君に、
声だけを知っている君に、 恋をしたのかもしれない。
桐生
桐生
最近の俺の様子に、 桐生君が首をかしげ 聞いてきた。 その目は好奇心溢れる目 をしていて、 新作ゲームを 今から遊ぼうとする子供の 様な楽しげな目だった。
蘇枋
桐生
蘇枋
蘇枋
桐生
桐生
蘇枋
蘇枋
蘇枋
蘇枋
蘇枋
言うか迷ったが、 桐生君になら 話してもいいだろう。 そう思い自分の気持ちを 口に出した
ちゃんと本心をうちあけたのは いつぶりだろうか。
桐生
蘇枋
眉を下げて笑うと、 桐生君は ごめんごめんと 軽く謝った。
桐生
桐生
桐生
桐生
さらに興味心身に 身を乗り出して 話を詳しく聞こうと 桐生君が問い詰めてきた。 その様子に、俺は 眉を下げて笑うだけだ。
蘇枋
桐生
蘇枋
桐生
蘇枋
声からして男性だ。 そんな相手に恋をするのを、 好意を寄せるのを 気持ち悪いと思って しまうだろうか。
それでも桐生君は にっこり笑って、 「すおちゃんの恋 俺は応援してるよ」 と言ってくれた。
きっと叶わぬ恋だけど、 こうやって誰かが 俺の好意を 大切にしてくれる それだけでどこか救われた。
蘇枋
蘇枋
桐生
長い袖を フリフリと振りながら、 応援の言葉をくれた。 この応援は 一体どっちに対しての 応援なのだろうか。
蘇枋
予約表に書かれた名前を 指でなぞりながら 確認して行く。 今日はお客さんも少なく、 名簿が何時もより 明らかに少ない。
3時から予約しているのは たった1名の様だ。
予約表に書かれた たった1枚の名前は、 「桜遥」 そうかかれていた。
蘇枋
女性。 そう思ってしまえば、 口から軽くため息が 漏れてしまう。 また甘ったるい声で 言い寄られてしまうのだろうか。 またあの鼻に来る様な 甘い甘い香水の匂いが 漂ってくるのだろうか。
思考はどんどん暗い方へと 進んでしまう。 それを振り払うかの様に ドアがからりと鈴の音 を鳴らしながら空いた。 お得意なポーカーフェイスを 取り繕って お客さんに 対応しようと ドアの方へ 足を近ずけた。
蘇枋
桜
少し口ごもりながらも 名前を言葉にした。 顔をほんのり赤くして 喋る姿は、 お客さんとして くる女性とは、 少し違うものを感じた。
髪は白と黒のツートーンで 目の色は左右で違う 瞳の色だった。 左目は蜂蜜の様に 綺麗な琥珀色 右目は黒曜石の様に 綺麗な黒色だった。
この容姿だけでも 人極目を引かれた。
そして声もだ。 どこか芯があって 透き通るような 少し低めな声だった。
知っている。 彼の事を 何も知らない俺は、 どこか彼を知っている。
桜
さっきから一言も話さない俺に 彼は可愛らしく困惑の色を 見せた。 少ししどろもどろさせ 高と思ったら、 急に俯き 髪を触った。
少しだけ見えたその表情は とても悲しそうに見えて、 言うつもりのなかった言葉が 喉につっかえていたはずの音が
彼の姿を見た途端に するりとでてきた。
「_____________」
蘇枋
驚いて目を大きく見開いた彼は 視線を思わずこっちに 向けた様だった。 綺麗すぎる容姿に、 何もかもが彼に奪われ 溶けていく。
俺の思わず発した言葉は、 彼の心に届いただろうか。 彼は口をパクパクと動かしては 言葉を発しない。
そんな彼を今迄にないほど 優しく、優しく見つめて微笑んだ。 俺の顔にも彼の顔にも 熱が登るのを感じる。
蘇枋
蘇枋
蘇枋
美容室に緩やかで 優しい風がふきぬけた。 音に乗せて気持ちをくれた彼に 俺は何か返せただろうか。
美容室には、 俺達の音が、 優しい音が響いていた。
蘇枋
桜
桜
声に乗せて君へ届け。
ℯ𝓃𝒹