あいされたい

のど飴を買った後

俺は口の中の飴を舌で転がしながら、ふと考えた。

後から冷静になって、"これ"はよくないことだと気付いた。

そう思うと、また再び暗い気持ちがどっと押し寄せてきた。

片手で頬を掴まれ、彼と目が合う。

そんな彼に、一瞬どきりとしてしまう自分がいた。

なかむはいつもの彼に戻っていて、きんときたちと普通に話していた。

俺は、浮気をしてしまった罪悪感で彼らと顔を合わせられなかった。

部屋に入ると、スマイルがスタンドの明かりを付けた薄暗い部屋で 本を読んでいた。

彼のいつも通りの表情がない顔に、心がずきりと痛む。

何を言えばいいのかわからなくなり、俺は彼から目をそらす。

すると、彼が椅子から立ち上がりこちらに近付いてきた。

俺は突然のことに硬直した。

彼は続ける。

彼が少し恥ずかしそうにうつむく。

言葉が出なかった。

スマイルは、俺が嫌いな訳じゃなかった。

俺が好きとも言ってくれた。

でも……俺は、そんな彼を裏切ってしまったのだ。

俺に、彼の恋人でいれる資格はない。

わかっている、わかっているはずなのに……

俺はその時、「はい」とも「いいえ」とも言えなかった。

俺は、最低だった。

ひたすら頭がぐるぐるして、吐き気がしてくる。

「スマイルが、好き。」

「彼の恋人でいれるなら、そうでありたい。」

「でも俺は彼を裏切った。」

「俺が彼の恋人でいれる資格など、とうにない。」

「彼とは……別れるべきなのだ。」

そんな言葉が俺の頭を駆け巡る。

息がしづらくて、呼吸が荒れ、喉が乾いてくる。

彼が心配して俺の顔を覗き込み、俺の肩に手を置こうとする。

俺は思わずその手を払いのけ、後退りをした。

彼の絶望したような顔を見て、俺は苦しくなった。

俺の言葉を遮るように、彼の怒ったような低い声が部屋に響く。

俺はその声にびくりとしたが、正直に話すしかないと思い 今日の出来事のすべてを話した。

俺は彼になかむとの全てを話した。

彼は俺の話を聞き終えると、考え込むような表情をして黙りこんだ。

部屋には沈黙が続く。

俺は彼の顔を見れなくてうつむいていると、彼が口を開いた。

彼の低い声に恐怖を感じて、俺は口をつぐむ。

彼は少し嬉しそうな顔で笑う。

彼はいたずらっぽく、俺を見て笑った。