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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

あれから俺は1度も病室を出なかった。

看護師さんとお医者さん以外会ってないし、連絡も絶った。

ただひたすらと呼吸を続けるだけ。

それをして行くうちに、あの一時は夢だったのか、なんて思い始めてしまう。

大好きだった歌も、透と話す事も。全てが出来なくなった。

折角透の好きな曲を覚えたのに、とか。

折角話したい事が出来たのに、とか。

後悔しては考えるの繰り返しなんだ。

ガラッ

看護師

橘さーん?

看護師

ご友人を名乗られる方が来ておりますが…辞めときますか?

首を縦に降る。

看護師

そうですか…ってちょっと!

松山 薫

六花!

橘 六花

っ…

松山…

松山 薫

あの後倒れたって聞いて、心配したんだぞ!

松山 薫

透に容体聞いても答えてくんないしさぁ!

松山 薫

びっくりしたわぁ!馬鹿野郎!

橘 六花

そうか、心配してたんだ。

ごめんね。

松山 薫

な、なんか喋ってくれよ…

看護師

…橘さんは今喋れません。

松山 薫

え…なんで、ですか?

看護師

ストレス性の失声症と判断されました。理由は…わかりません。

松山 薫

…俺のせい、だよな。

首を横に振る。だって松山は何も悪くないから。

松山 薫

違う…?じゃあ、なんで、

看護師

すいませんがそろそろお帰りください。病室で大きい声を出されると迷惑になります。

松山 薫

あ、はい…ごめんなさい。

松山 薫

明日も来るからな!

看護師

大きい声を出さないでください。

松山 薫

ごめんなさい。

そう言って松山は看護師さんに連れてかれた。

なんだアイツ。ドアが閉まるまで凝視すんじゃねぇよ。怖いわ。

無意識に上がらなかった口角が上がる。

ああ、そうか、俺は…

本当は誰かそばに居て欲しかったんだ。

それからというもの、アイツは毎日来た。

松山 薫

〜…でな、…〜だったんだよ!

声デカイデカイデカイ。

俺は松山と意思疎通を図るため、紙とペンを用意して話していた。

声がデカいんだよ。自重しろ。

松山 薫

あっ、サーセンッ。

俺は徐々に食事もとるようになった。だけど、まだ声は出ない。

松山 薫

声、いつになったら戻るんだろうな〜。

さあ?

松山 薫

さあじゃねぇよ〜…

松山 薫

あ、そう言えばさ、透が…

ダンッ!

俺はアイツの話をずっと聞いていたい。でも…

離れるって、決めんだよ。決めた。だけど、だけど…

ごめん、今は雨宮の話はよしてくれ。

松山 薫

わかっ、た。

今だけ、今だけは我慢しないと。…戸惑いながらも了承してくれた松山に、心底俺は感謝した。

松山 薫

そう言えば…その、お前が倒れた日の返事、くれないかな…

そう、俺は告白された。

紛れもないこいつに。

ごめん、分からないんだ。

松山 薫

そっか、ごめんな…

いや、大丈夫。

そう、大丈夫だから。

夕方になり、松山は帰っていった。

この時間はとても憂鬱だ。

早く、来ないかな…

目を閉じて、深く眠った。

松山 薫

おい、透。

雨宮 透

あー?

一緒に遊んでいた透に話しかける。

松山 薫

お前、六花と何があった?

雨宮 透

…ははっ、なんでもねーよ。

松山 薫

なんもねぇ訳ねぇだろ、じゃなきゃ六花がお前の話を聞きたくないって言うわけない。

雨宮 透

っ、…松山には関係ない。

松山 薫

あんな切羽詰った顔で言われたらそりゃ誰だって気になるだろ。

松山 薫

本心は聞いてないけど、辛そうな顔してた。

松山 薫

今からでもいい、会いに行ってこい。

雨宮 透

なんで俺が…

松山 薫

っ、うるせぇ!アイツはな、大好きな歌も歌えねぇ、食事は喉を通らねぇ、人と喋ることも出来ねぇ、そしてなにより!

松山 薫

お前と顔を合わせることが出来なくなった!

松山 薫

アイツは言ってたぞ?

松山 薫

「雨宮と会うのが怖い」「心配かけたくない」「俺が悪い」「親友なのに」って!震えながら!俺達に心配をかけないために!笑って、貫き通して!

松山 薫

アイツは俺らより何倍も努力して何倍も我慢してるんだ!

雨宮 透

え…?そんなこと、言ってたの…アイツ。

雨宮 透

てか、話せないって何、歌えないって、何?

松山 薫

…ストレス性失声症だと。

松山 薫

もう声は戻らないかもしれないって。

雨宮 透

うそ、だろ…

松山 薫

嘘じゃない!

松山 薫

その目で確かめてこいよ!

松山 薫

お前は、お前は!

松山 薫

1番の、親友なんだろ…?

松山 薫

なあ、そうだろ?

松山 薫

お前は俺が欲しいものを持ってるんだ!

松山 薫

会いにくらいいってやれよ!

雨宮 透

わ、かった…!ありがと、松山!

雨宮 透

俺行ってくる!

本当にこれでよかったのか?

俺の中にある心の根元が耳元で囁いた気がした。

本当は行かせたくない。でも、今だけはアイツを行かせなきゃなんねーんだ。

…ま、六花が元気になったらそれはそれで結果オーライってとこか。

頑張れよ、六花。道は険しいぞ。

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