男
簡素なクロゼットで仕切られた向こう側から
男の声が呼びかけた。
男
僕は小さくため息をついて
白い天井を見上げた。
僕
男
男
僕
僕が告げると
むせたような笑い声が聞こえた。
僕
僕
男
男
ヒューっと男のノドが鳴く。
目隠し程度の
薄いピンク色をしたカーテンが
僅かに揺れた。
4階の片隅にある病室にいるのは
僕と
隣の男だけだ。
僕
僕
男は何も答えず
ただ苦しそうな木枯らしの音だけが
静かな4号室に響いていた。
ここはいつでも
気配に溢れている。
たとえ深夜でも
闇が訪れることはない。
オレンジ色をした常夜灯が天井に映す影を
僕はカーテン越しに見つめる。
影を見つめながら思う。
僕
僕
何人に尋ねただろう。
誰に尋ねても
明確な答えは返ってこなかった。
あれは何人目だったか。
男
そう言った男がいた。
男
男
男
男
男
男
男
男
男
男
半眼から熱い涙がこぼれた。
パタパタとせわしない足音がカーテンを揺らす。
苦しそうな木枯らしの音はもう
聞こえない。
僕を坊主と呼んだあの男が
今夜そっと
旅に出たのだろう。
僕は彼に何を語ったのか。
彼は最期に何と答えたのか。
僕はただ耳を澄まして
命の消える音を聞いた。
看護師A
看護師B
看護師B
看護師A
看護師A
看護師B
看護師B
看護師A
看護師B
看護師B
看護師A
看護師A
看護師A
看護師A
看護師B
看護師B
了
コメント
2件
タイトルを見て、ハッ!としました。奥深い内容ですね…