逃避

そう言って紹介された自分の妻だと言われた女性は金髪で猫目の可愛らしい普通の女性だった。全く知らない。

間髪入れず、そう言いきった自分を見て、見知らぬ女性は驚いたような顔をした。女なんて嫌いだ。

自分のことをアクセサリーか何かのようにしか考えていない。利己的で狡猾で姑息。

そういう女を何人も見てきて、結婚なんかしないとおふくろに何度言いきったことか。

この女もきっとそうなんだろう。

じっと見つめる俺を呆然とした顔で見つめかえされる。この状況が本当なのか？と疑っているようだった。

医者は意外にもあっさりしていた。

二日後、場地は退院した。

退院の日に迎えに来てくれた千冬と呼ばれる自分の妻であるらしい女性に自宅に着いた途端場地は口を開く。

千冬の話を聞くと、場地の会社で勤めていた千冬と出会った場地。何度か話している内に仲良くなったという。そしてちょうど千冬か酷いストーカー被害を受けていたのを場地に相談。二人で知恵を出し会い、１年ほど偽装結婚することになったらしい。千冬は場地に男性としての魅力を感じていなかったので場地は虫除けとして結婚をしたのだ。

場地は偽装結婚だとバレないために場地は千冬に惚れ込んでいるという嘘を風潮して皆はそれを信じているらしい。

結婚してからストーカー被害がなくなり、最近借金の返済も終わり、今月末には離婚をしようか話し合っていたのだとか。

違和感を覚える。家の中でも"場地さん”と呼ばれているのか？自分は何か大事なことを忘れているのでは？この女性にまつわる、何か大事なことを…

驚いたような顔をした千冬を見て自分の言ったことを反省する。千冬が作るのは当たり前かのような言い方は気に障るだろう。失言だったと思い謝罪する。

千冬の言う通りだ。自分は人が作った物に抵抗がある。

間違ってないのに、何故かそれを寂しく感じる。

その日、１人で食べたうどんはすごく味気なかった。