一覧ページ

フィロソフィー街へようこそ！第1話「メメント・モリ」

第1話 - フィロソフィー街へようこそ！第1話「メメント・モリ」

2025年10月15日

#ギャグ

#シリアス

#哲学

#オリジナル

#一次創作

丹々骸(ににむくろ)

田中

(.....ここ、どこだ....？)

目が覚めると、田中は見知らぬ夜の森にいた。

田中

(仕事帰りにそのままどこかに迷い込んだのか....？帰り道は......。ん？)

田中

(灯りが見える。街....？)

灯りに向かって歩くと、石橋がかかっており、その両端にガス灯が立っていた。

田中

(森を抜けて....石橋を渡った先に街があるのか。....それにしても....知らないところだ。そもそもこんなに西洋っぽい場所、日本にあったのか....)

田中

(とにかく、街の人に帰り道を聞こう)

街に入ると、そこにはきらびやかな夜の街があった。それは19〜20世紀の西洋の街のようで、色々な店が点在しているようだった。田中が呆気にとられていると、正面から何者かが近づいてくる。3人組のようだ。

プラトン

やあ、初めまして！フィロソフィー街へようこそ！

田中

えっ、びっくりした.....、誰.....

プラトン

私はプラトン。そして横にいるのが私の弟子のアリストテレスくんだ。

アリストテレス

“一応”弟子をしているだけのアリストテレスです。そしてこっちが新人のデイヴィッドくんです。

デイヴィッド

いやあの....お二人共、急に話しかけたらそりゃ驚かれますよ....。

プラトン

アリストテレスくん！一応とはなんだ！

田中

あの.....、すみません、ここがどこだか分からなくて......。帰り道を聞きたいのですが.....。

プラトン

ここは理想都市さ！✨️✨️✨️

田中

りそ.....、え？

アリストテレス

違います。ここは黄泉(よみ)です。妄言ばかり吐かないでください。

プラトン

師匠の言葉を妄言扱い....！？

デイヴィッド

だから、お二人共...！その説明は混乱を招きますよ.....！！！

田中

........あの、俺死んだんですか。

デイヴィッド

あ、えーと....し、死んでは無いんです！今のところ.....。

田中

今のところ.....？

デイヴィッド

あなたは現世で、生と死の間をさ迷っている状態です。つまりは仮死状態....ですかね。

田中

.....夢の中.....？であってますか？

デイヴィッド

ま、まあ、その捉え方で大丈夫です！ここは「フィロソフィー街」といって、貴方のような迷える魂をおもてなしする場所です。

田中

おもてなし...？

プラトン

そう！生と死の狭間に作られたこの場所は、現世に生きる人間たちの休息の場なのだよ。

アリストテレス

まあ、現世の人間たちが頑張りすぎてるので、意識を失っている間は現世のことを考えず休んだり遊んだりしていいという、神の粋な計らいですよ。

田中

.......なるほど....？

デイヴィッド

そ、そういうことですので！めいいっぱい楽しんで行ってください！....ようこそ、フィロソフィー街へ！

田中

バー...ですか

プラトン

君はお酒は好きかい？ここのカクテルは美味しいよ〜。

アリストテレス

あんたが飲みたいだけでしょう。

田中

お酒....は、好きでも嫌いでもないです。

プラトン

せっかくゆっくり出来るのだから楽しもうじゃないか！バーテンダー、彼にここのオリジナルカクテルを頼むよ。あと私にも。

デイヴィッド

あ...えっと、無理して飲まなくても良いですからね。一番大切なのは、貴方に楽しんでもらうことなので.....。

田中

いえ....、大丈夫です。ありがとうございます。

田中

(どうせ夢だから.....、何も考えなくていいか)

田中

(それにしても、こんなに夢だとわかる夢は初めてだ。普通に世界観が謎だし、この人達も外国の人...？っぽいけど日本語が通じるし....)

田中

(あ.....。夢の中でも代金はかかるのか....？)

田中

あの.....、お代って....。

アリストテレス

ああ、心配いりません。ここはおもてなしの場所ですから、代金は必要ないです。

田中

.....貴方たちは....、どうやって生計を....、いや....夢だからそんなことを聞いても意味無いか....。

プラトン

ははは、私たちはこの街の従業員として作られた存在だからね。おもてなしが仕事で、あとは自由にしているよ。

田中

なるほど......？

その後、田中は差し出されたカクテルを飲んだ

田中

あの....美味しかったです。ありがとうございます。

プラトン

それは良かった！次はどこに行こうか？カジノやレストラン、喫茶店等もあるぞ！

田中

えーと....、そういえば、目って、いつ覚めるんでしょう....。

デイヴィッド

....えっと、貴方は今仮死状態で....、現世に戻れるかは分からないのですが、時間が来たら街の大時計の鐘がなります。それまではこの街でゆっくりすることができます。

田中

.....じゃあ...このまま死ぬ場合も...あるんですね。

アリストテレス

その場合は死後の世界へ行くことになります。

田中

(そもそもなんで....、仮死状態なんかになったんだ.....？思い出せない....)

デイヴィッド

と、とにかく、今は楽しむことを考えて貰えたら....。

プラトン

疑問を抱き、思索するのは良いことだ！己について、死について考えるのは哲学の鉄板だからね！

デイヴィッド

おもてなしする気あります！？考え込んでたら楽しめないじゃないですか！いや、考えることが楽しい場合もありますけど....。

田中

ちょっと、散歩をしてきてもいいですか？

田中

一人でゆっくりしてみたくて.....。

プラトン

もちろんだとも！なにか困ったことがあればここへ戻ってくると良い。私はもう一杯飲んでいるから！

アリストテレス

仕事中にそんなに飲まないでください。引きちぎりますよ。

プラトン

何を！？！？

田中

........

田中

ここは雰囲気があたたかい気がする....。

田中

神様って....いたんだな....。わざわざこんな場所を作って........、慈悲深いことだ.....。

田中

(まあ...これが俺の作り出した夢である可能性の方が高いんだけど.....)

田中

(でも、感覚は妙にリアルなんだよな.....)

田中

......？なんか、道の先から転がって..........、樽？

田中

えっ.....！！！こっちに向かってくる！！うわぁあああ！！！

田中

はあ....はあ.......、樽から逃げてたら.....、いつの間にか森の中に......。これって外の森に繋がってるのか.....？

田中

ん.....？

マルティン・ハイデガー

...........

田中

.....人だ.....。森の中に........。

マルティン・ハイデガー

.......現存在か。

田中

目が合った....、え.....なんて.....？

マルティン・ハイデガー

人間とは、存在を忘れた存在者だ。

田中

........(なに....言ってるんだろう)

マルティン・ハイデガー

.....悩みがあるなら、聞こう。

田中

え.....あ.....(これも、おもてなしか......なるほど)

田中

.....記憶が曖昧なので、悩みとか.....あまり分からないんですが、.........もし、本当に生と死の狭間をさ迷ってるとして........。このまま死ぬかもしれないのか......と考えて.....。

田中

でも.....なんか、別にいいかって、思ってしまって。

マルティン・ハイデガー

........勿体無い。

田中

え？

マルティン・ハイデガー

死に直面した時こそ、現存在(人間)というのは本来的な生き方ができる。

田中

な、なるほど.....？

マルティン・ハイデガー

死は必ず、いずれ訪れる。だがそれを直視し意識できる者は意外と少ない。お前は今、死に直面し、本来的な生き方について考える時間を与えられている。ならば生について、己の本当にしたいことについて、ゆっくり考えるべきだ。

田中

......したいこと。

マルティン・ハイデガー

生とは概念ではなく、存在の出来事にすぎない。

田中

(....言ってることは難しくてよく分からないけど、.....死を意識したら、本当にしたいことを優先できる、という話だろうか)

田中

......もし、意識が戻ったら、考えてみようと思います。自分のしたいこと.....があるのか、ないのか。

マルティン・ハイデガー

道に迷った時、死を思うことで己の本来的な生き方を選ぶことが出来る。明日死ぬかもしれないと思いながら、死が訪れるまで人間という存在としてあるほかないのだ。

ゴーン、ゴーン

田中

！鐘....の音。

マルティン・ハイデガー

時間だ。一現存在。また、機会があれば。

田中

えっ、あ.....、名前.....、

田中が名前を聞こうとした瞬間、彼の目の前は一面、白に染まった

田中

..............

田中

.....え、ここ.....は..........。

田中

病院？

田中

.......なにか、夢を.....見ていたような.....。

田中

...........あ。

田中

そうか.....、思い出した。

田中

俺.......死のうとしたんだ.....。

田中

仕事しかしていない人生なのに、仕事が上手くいかなくて、それで....嫌になって...........。

田中

じゃあ........、失敗、したのか....。

田中

............

田中

...........どうしよう。

田中

生きていたって、辛いだけだ。

田中

.............次は.....、

死は必ず、いずれ訪れる。

生について、己の本当にしたいことについて、ゆっくり考えるべきだ。

田中

..........

田中

今のは.......、夢の.......記憶.....？

田中

........人はいつか死ぬ。

田中

..............したいこと......か.........。

〜その後、フィロソフィー街にて〜

デイヴィッド

この前の人.....、現世に魂が戻ったみたいですけど、今頃どうしてるんでしょう。

プラトン

それは私たちには分からないことだからなあ。しかし少しでもここで楽しんでくれたと思おうじゃないか！

アリストテレス

あんたは酒を飲んでただけでしょうが。

プラトン

案内をちゃんとしただろう！彼もお酒喜んでくれたし.....。

アリストテレス

まあ今回はいつもより妄言が少なかったので良しとします。

プラトン

どういうこと！？そんないつも妄言しか言ってないみたいな....。

アリストテレス

そう言ってますが？

プラトン

ひどい......！！！！

デイヴィッド

あはは.........

この作品はいかがでしたか？

0件

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう！

丹々骸(ににむくろ)

プロフィール

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい！がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

フィロソフィー街へようこそ！ 第1話「メメント・モリ」

第1話 - フィロソフィー街へようこそ！第1話「メメント・モリ」

関連するタグ

フィロソフィー街へようこそ！第1話「メメント・モリ」