グルッペン・フューラー
……

そして、肩で息をしながら覚悟を決めたように足を無理に上げて部屋に入る
そんな姿を知るグルッペンはサクラにこの部屋にいる事を強制しなかった
彼自身、先代の遺物である部屋に大切な彼女を入れるのは嫌だった
グルッペン・フューラー
(連絡も何も無い……一体何処へ……)

グルッペン・フューラー
誰だ

レパロウ
グルッペン総統代理様
第二近距離部隊所属のレパロウです

グルッペン・フューラー
ああ、入れ

レパロウ
失礼致します

扉が開かれると、レパロウを先頭に呼んでいたショッピとチーノが入ってくる
グルッペン・フューラー
急に済まないな、2人とも

ショッピ
いえ、構いませんよ

チーノ
一体、なんですか?グルッペンさん

レパロウ
では、俺はここで……

グルッペン・フューラー
いや、お前も残れ

レパロウ
えっ……よろしいのですか?

グルッペン・フューラー
お前も……先代に恨みがあると聞いているぞ?

レパロウ
……

ショッピ
レパロウさんは、本年入隊では?

グルッペン・フューラー
ああ、しかし1度退団しているんだ

グルッペン・フューラー
今回は2度目の入隊だな

レパロウ
……何処でお知りになられたのですか?グルッペン様

レパロウ
(面倒な人だ……俺の計画がぱぁになるかもしれない可能性……)

チーノ
それは一体なぜ……

グルッペン・フューラー
さぁな?それは本人から説明して貰おうか

チーノ
(分かってる癖に……面白がっている)

ショッピ
(グルッペンさんの事だから、確認は済んでいるはず……となれば)

ショッピ
(先代の意志を継ぐ者か……サクラさんの過去を知る者か……)

レパロウ
はぁ……

レパロウ
どこからお話すれば良いのか……

グルッペン・フューラー
軍学校卒業年数そして第一次入隊時期、初参戦戦争を言え

グルッペン・フューラー
彼らも賢い。それだけで年代は分かるだろう

レパロウ
では、我々国国立軍人育成学校D年卒業の第3期生

レパロウ
入隊時期はE年からM年の約9年間

レパロウ
初参加戦争は、F年の2月、我々国領土拡大に伴う民族戦争でした

ショッピ
って事は……先代達と同期ですか

レパロウ
そうですね……先代総統【サタン】と3年間同僚でした

レパロウ
サクラとは、幼馴染と聞いております

レパロウ
年齢は彼女の方が下らしいですが

レパロウ
拷問も引き受けていた外交官の【ドリーク】や護衛部隊隊長の【剣吾】も

チーノ
なぜ、1度退団を?ご家庭のご理由でもおありでしたか?

レパロウ
俺は、彼らを裏切りました

レパロウ
その報いを受けただけです

ショッピ
裏切り……ですか

レパロウ
皆様が、補佐部隊として集められる前は長い付き合いだからと俺が補佐をしていました

レパロウ
その中で、彼らがサクラさんに取る待遇や態度に違和感を感じていたんです

レパロウ
彼ら、特に【サタン】とエドワードに関しては、サクラさんを溺愛していましたし

レパロウ
アルトやドリーク、剣吾もサクラさんをとても大切にしていました

レパロウ
先代達にとって、サクラさんは家族であったような感じです

グルッペン・フューラー
そんな彼らが、先輩を苦しめた……

グルッペン・フューラー
疑いたくなるな、私達が知る先代は、憎らしかったから

チーノ
そうですね……詳しくは知りませんけど功績を上げ続けている兵士の昇級をしなかったりとか

レパロウ
俺はそれを許せなかったんです

レパロウ
努力はした者が報われる為にする行動

レパロウ
なのに、彼らはそれを無視し優秀だった彼女を傷付けた

レパロウ
だから俺は……彼女に近付いて支えていた

レパロウ
彼女を全面的に否定する人間がいるのなら、全面的に支える人も必要だ

レパロウ
それを、彼らは裏切りと認定しました

レパロウ
それにより、退団か彼女との関係を切るかを選ばせられました

グルッペン・フューラー
(そこまでして……先輩を苦しめたかったのか……!)

ショッピ
(どうしてそこまで……サクラさんを苦しめる必要が)

チーノ
(あの人が何をしたって言うんだ……あんな優しい人が)

レパロウ
俺はそこで退団を選びました

レパロウ
兵士じゃ無くなれば、完全な彼女の味方として過ごせると判断したんです

レパロウ
だけど、それを察知してか
彼らは外部との連絡を遮断しました

レパロウ
兵士と家族の手紙など全てを禁止、差し入れすら幹部直々にチェックする程

レパロウ
そんな徹底的な規則を作ることで、彼女が更に逃げる事を許さなかった

レパロウ
俺は……彼女を軍に残した事を後悔しました

レパロウ
俺が連れ出せていたら、彼女は酷い扱いを受けなかったんじゃないのかって

レパロウ
あんな地獄から、逃げ出させることが出来たんじゃないかって

グルッペン・フューラー
もういい……十分わかった

ショッピ
……そんな酷いことをしていたんですね、先代は

ショッピ
あの人が、【翔太】さんがそれに加担していたなんて……信じたくありませんが

レパロウ
あの人は……よく彼女の近くに銃痕を残していましたね

レパロウ
彼女の脚を狙って撃っていたんでしょう

レパロウ
彼女の当初の武器は、人に負けない脚力ですから

ショッピ
(あの人の衣服から、いつも火薬の匂いがしていたのは……)

ショッピ
(俺らの訓練前に、サクラさんを攻撃をしていたから……!あの野郎!)

レパロウ
それでも、俺はもう一般兵

レパロウ
貴方達のように、簡単に近付ける立場じゃなくなった

レパロウ
実力をあげて、少しでも早く彼女に見つけてもらう

レパロウ
気付いて貰ってから……彼女を意志を確認するつもりだった

チーノ
サクラさんの意志……ですか?

レパロウ
どうせ、変わってないだろうけど……

レパロウ
彼女にとって、サタン達の存在は絶対的だ

レパロウ
彼らに憧れ、彼らのことを誰よりも1番知っている

レパロウ
生活面の性格すらも、彼女は把握している

レパロウ
そんな彼女の意志を変えるのは簡単じゃない

レパロウ
それが、建前であろうと彼女は「ここに残る」と言うだろうね

レパロウ
彼らが創り上げた国と軍部が、彼女の逃げ場を防ぐ防波堤

レパロウ
逃がす気のない牢屋と言っても過言じゃない

レパロウ
彼女を逃がすには、この軍部を崩壊させ国としての役割を無くすしたかない

レパロウ
でも、そのトップは君たちでも敵わない戦闘の女神

グルッペン・フューラー
ああ、彼女は戦に愛された女神だ

グルッペン・フューラー
全ての技術、身体能力が戦いをするためだけに与えられたかのような力

グルッペン・フューラー
そして、自然でなおかつ他者に影響を与える突飛っした才能

グルッペン・フューラー
それを超えることなど、烏滸がましい

レパロウ
……

レパロウ
グルッペン様、では貴方は

レパロウ
彼女の何になろうと言うのですか

グルッペン・フューラー
何者にもならないさ

グルッペン・フューラー
先輩の意志と共に、私は姿を変えよう

グルッペン・フューラー
変幻自在の従者さ

レパロウ
(……そんなこと、言ってられるのも今だけなのに)

チーノ
(急に、レパロウさんの顔が曇った……?)

レパロウ
とりあえず、俺の話は以上です

グルッペン・フューラー
ああ、わかった

グルッペン・フューラー
お前は自室に戻れ

グルッペン・フューラー
明日からは自身の部隊で過ごす事を命じる

レパロウ
畏まりました。失礼致します

チーノ
グルッペンさん……

ショッピ
あの人を、レパロウさんをどうするんですか?

ショッピ
先代に恨みを持つ人間だとしても、彼はサクラさんを独り占めする気ですよ

グルッペン・フューラー
別に、彼は俺達の脅威になり得ない

グルッペン・フューラー
ましてや、使い勝手のいい駒に過ぎない

グルッペン・フューラー
我々がサクラ先輩の駒であると同様にな

グルッペン・フューラー
そこで、2人に折り入って頼みがある

チーノ
それが俺らを呼んだ理由ですよね

グルッペン・フューラー
今現在、各部隊内で内通または賄賂を受け取っている兵士を皆殺しにしろ

グルッペン・フューラー
先輩が居なくなったと言う情報を、決して外部に漏らすな

チーノ
わかりました

ショッピ
了解っす

グルッペン・フューラー
そして、これはチーノ個人に依頼だ

チーノ
どのようなご依頼で?

グルッペン・フューラー
過去の記憶及び精神的支えの存在を消す薬品を開発しろ

グルッペン・フューラー
期間はいくら掛かっても構わない

グルッペン・フューラー
必ず完成させ、報告しろ

チーノ
(無茶な依頼だ)

チーノ
(人間が人間の記憶を消すことなんて、不可能)

チーノ
(現代技術でも、古代技術にもないそんな神の御業)

チーノ
(そんな物を、薬品として開発しろだなんて……命が何個あっても足りない)

グルッペン・フューラー
自白剤とでも名を偽るか

グルッペン・フューラー
未完成でも報告してくれればいい

ショッピ
そんなあぶない代物を…まさかサクラさんに使うなんて言いませんよね?

グルッペン・フューラー
……

グルッペン・フューラー
もう俺は……

グルッペン・フューラー
後悔したくないんだ

グルッペン・フューラー
こんな荒業しか出来ない、俺を許してくれ

チーノ
……

ショッピ
……

自信家でカリスマ性のある名高き人間
グルッペン・フューラー
そんな彼が己を嫌うかのような発言に口を出せる者はその組織にはいない
チーノ
わかりました

チーノ
今の技術で実現させるのは、かなり困難です

チーノ
なるべく……お力になれるように努力します

ショッピ
では、俺らは失礼します

グルッペン・フューラー
……

グルッペン・フューラー
俺はもう……
