目が覚めたら病院にいて右腕がなかった
なおきり
涙は出なかった
自分のせいで妹が死んだ
自分のせいで家族が壊れた
自分は被害者ではない
身勝手でなにもできない愚図の
加害者だ
自分に泣く資格なんてない
数日後
じゃぱぱ
メンバーがお見舞いに来てくれた 嬉しかった
そして、顔を見て思った この人たちにもう迷惑をかけたくない
その日は嘘をついて早く帰ってもらった
退院して事務所に行った
そこは前と何も変わらなかった
俺のボケで笑ってくれる人がいて
ツッコミを入れてくれる人がいて
みんな、俺をひとりにしないようにしてくれた
気を使われているのかと少し申し訳なく思った
でも、俺をせいで空気が変わってしまうことを恐れていた自分にとって
みんなのいつも通りの笑顔は救いだった
それでも、不意に考えてしまう
生きている意味と価値を
思い出してしまう
母に言われた言葉を
俺の心は段々と、それでいて確実に蝕まれていった
なおきり
って誰も待ってないか…
ほんの数ヶ月前までは返事が返ってきたのに
涙が出そうになるのをこらえた
部屋に入ってタバコを吸った
タバコを吸い始めたのは退院してから
少しでも早く死ねるように願って吸っている
痛くないのに体を傷つけてくれる
俺にとって、魔法みたいなアイテム
なおきり
まただ
ひとりになるといつも泣きそうになる
なおきり
そして、泣かないために手首を切る
右腕はまだうまく動かせない
そのせいで左手首がぐちゃぐちゃに抉れる
でも、それでいい
泣くよりはまだマシだ
こんな体で今の自分に何ができる?
そう自問自答して出てくる答えはいつも同じ
なにもできないよ
今日は10月19日
俺の誕生日の前日
俺は今日
死のうと思う
自分の未来に価値が見いだせなくなったから
自分のことを考えれば考えれるほど
惨めだったから
なおきり
なおきり







