対角線(学パロ/赤水)

放課後、教室に残って最近行われた試験の結果を見せ合う そしてなんでこんなに必死になっているかというと…

こいつが急にそんなことを言い出して、思わず顔をしかめる 僕は勉強が苦手だから

こんなやり取りをしたのが、ちょうど一ヶ月前…

そう言ってモブ1が2枚の紙を指差す

指摘されてやっと気がついた 僕とれるの点数がまったく同じことに

あからさまに不服そうにしているれると、それに爆笑するモブ1とモブ2

高校に入ってすぐ、僕はこの3人と仲良くなった だから学校ではこの4人でいることがほとんどだ でも、

あれ、とは多分あの超めんどくさい仕事のことを言っている 図書館で見つかったいらない蔵書を、校舎の端にある倉庫に運ぶというやつ しかも結構量があるらしく、それを昨日モブ1が愚痴っていたのを覚えている しかも、

れると、2人だからなぁ……。 さっきこの3人とすぐ仲良くなったとは言ったが、実のところ、未だにれると2人きりで話したことはない もちろん、別に嫌いとかではない ただ、今さら2人にされると気まずくなりそうで怖い れるもさっきから黙ってるし

適当に言い残してモブ1とモブ2が颯爽と帰ってしまい、僕とれるが2人取り残される ずいぶん長く話していたようで、教室に他に生徒はいなかった

モブ1とモブ2が帰った瞬間、明らかに口数が減ったれる もしかして今まで2人で喋る機会が無かったのって偶然じゃなくて、意図的に避けられてた…？

この空気に耐えられなくて何か喋らなきゃ、そう思って口を開く

罰ゲームとして命令された仕事を片付けるため、僕たちは静かな教室を後にした

運ぶ蔵書の量は多いとは聞いていたが、それでも想像よりも多かった

倉庫が校舎の端にあるので、距離もずいぶん長い でも、長く感じるのは多分物理的な距離のせいだけではない

れるは一瞬も振り返ることなく僕の前をスタスタと歩いて行く 身長は僕より数センチ低くて、肌も真っ白で力弱そうなのに、本を多めに持ってくれてて、優しい人だっていうのは分かる やっぱり、僕のこと嫌いなのかな？ 今さら言い出しづらいだけで、本当は僕と関わりたくなかったりするのかな？ そうだとしたら、少し申し訳ないな…。 というか、そうじゃないと辻褄が合わない気がする 手を叩きながら大声で笑う、いつものれるが頭に浮かぶ 真意を確かめたい気もするけれど、やっぱり直接聞くのはこわい

無駄に話しかけてこれ以上不快に思われるのも嫌で、追いつこうと少し歩みを速めた

コツ、コツと2人の足音だけが廊下に響いた

やっと重い荷物と空気から解放されて一気に気が抜け、流れるようにイスに倒れこむ

暗くてほんのり涼しい倉庫は、思っていたよりも居心地がよかった

そう言ってさっさと出ていこうとする ねえ、やっぱり、……れるは僕のこと嫌いなの？ なんで2人だと喋ってくれないの…？

自然と口にしていた めんどくさがられるかも、怒られるかもしれないのに

案の定、必要最低限の返答と冷淡な目つきしか返ってこなかった 聞かなくても、分かる。さっきの問いの、答えなんて。

代わりに、別の疑問を投げかける 肩身の狭い思いをしながら、れるに我慢させながら関わるのは嫌だ それだったら、もう。

このまま終えるのもなんとなく癪で、何かしてやろうといういたずら心がはたらく そう思い、立ち上がってれるに近づく

そんな僕に明らかに警戒心を見せ、遠のこうとする れるが動いた拍子に、れるから1枚の紙が落ちる

拾い上げると、なにか絵のようなものが目に入ってきた

それを見て、目を疑う 相合傘の下に、僕の名前とれるの名前が書いてあった

僕がそれについて言及すると、顔を真っ赤にしてしゃがみこんでしまった。

れるって僕のこと好きなの、？その言葉を飲み込む

違かったら恥ずかしすぎるし、違くなくてもなんて反応したらいいか分からない

それだけ呟いて、れるは走って出て行ってしまった

待ってよ、と引きとめようとしてもそれも無視されてしまった

追いかけるか迷ったが、気になって廊下に出た頃にはもうれるの姿はなかった

多分傍から見たら仲良しな友達の、僕とれる でも実際には、さっきまで2人だけで喋ったこともなかった 今だってれるが何考えてるのかも分からない れるは、考えていることを教えてくれない 僕にも、それを知ろうとする勇気がない

僕はただ、れると本当の意味での友達になりたかった こんな、ただ一緒にいるだけの数合わせみたいな上辺だけの関係じゃなくて。 れるは、何を隠してるの？ それが悪い結果でもいいから、教えてよ。 れるだけが知ってる、本当の答えを。