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第1話 - あ

2023年03月19日

#恋愛

結城真矢

コナタ

カガミさん！聞いたわよー？

コナタ

もう何で今まで教えてくれなかったのよー！

カガミ

こんばんは。なんのことですか？

コナタ

とぼけないでよ。あなたのご実家、あの高級店の「太郎寿司だったのね」

カガミ

あぁ、その事ですか。よく勘違いされますが、違いますよ。

カガミ

そんな大それたお店じゃないですよ。

コナタ

まーたまた。謙遜しちゃって。もうバレてるんだから

コナタ

観念なさいな♬

カガミ

いや、本当に違うんで。

コナタ

まさかこの私を出し抜こうとしてる？

コナタ

あなた、町内会の副会長の座、狙ってるわね？

コナタ

高級寿司屋の娘だからって副会長になれるって思ってるでしょ？

カガミ

え？なんですか、それ。

カガミ

町内会の副会長なんて狙ってないです。

カガミ

むしろ、なりたくないです。

コナタ

ふーん。じゃあそうゆう事にしておいてあげる。

コナタ

カガミさん、そういえば、今回初めての町内会の役員よね？

カガミ

はい、そうなんです、3か月前に引っ越してきたばかりなのに

カガミ

いきなり町内会の役員で困ってます

カガミ

コナタさん、副会長だったんですね。よろしくお願いします。

コナタ

引っ越してきたばかりで勝手が分からないのは仕方ないわね。

コナタ

しょうがないから、じきじきに教えてあげるわ。

コナタ

感謝なさい。

カガミ

はい・・・お願いします。

コナタ

いい？自慢じゃないけど私、かれこれ10年近く役員をやっているの

コナタ

うちの町内会古い考えだから会長＝男性って決まってるけど

コナタ

本来なら私が会長になってもおかしくないのね？

コナタ

この町内は私がいないと成り立たないみたいでね。

カガミ

へー。そうなんですか。

コナタ

だから、一つのアドバイスしてあげる

コナタ

この町内会で上手くやっていきたいなら、

コナタ

私の機嫌を損ねない事ね。私のいう事を聞いていれば安泰よ？

カガミ

そうなんですか。

コナタ

まぁ、私も長年ここに住んでいるし、色々顔がきくのよ

コナタ

だから皆私に相談しに来るわよ？

コナタ

私も大変なのよ。

コナタ

でも私を味方にした方が楽だから覚えておいてね。

カガミ

そうなんですね。でも私は大丈夫です。

コナタ

え？どうして？自分が何を言っているのか分かってる？

カガミ

子供に大人のそうゆう裏口みたいなこと見せたくないんで

カガミ

私は私で頑張ります。

コナタ

あらそう、やっぱりご実家が高級寿司屋だと違うのね

コナタ

今だけよ？そうやってのんびりいられるのは。

コナタ

後悔しても知らないから。

カガミ

いや、だからうちは高級寿司屋じゃないんで。

コナタ

あらやだ、それって「私にとってはあの程度は高級じゃないって」

コナタ

マウントまで取るのね、カガミさん。

カガミ

そんなんじゃありませんって・・・

～1週間後～

カガミ

コナタさん、ひどいじゃないですか！

カガミ

どうして教えてくれなかったんですか？

カガミ

町内会の集まりが昨日に変更になったって！

カガミ

聞くところによると、コナタさんの都合で変更にしたって。

カガミ

なんで教えてくれなかったんですか！

コナタ

あら、そういえば伝えるの忘れちゃったわねｗ

コナタ

でもあなたが言ったのよ？

コナタ

”私は私で頑張ります”って

カガミ

言いましたけど、それとこれは話が違います。

コナタ

何が違うの？誰の力も借りないんでしょ？

コナタ

一人で頑張っていうから、本来3人でやる仕事、

コナタ

今年はあなた一人にやってもらいますから★

コナタ

がんばってね！

カガミ

なんでそんなに意地悪するんですか？困ります！

コナタ

あらやだ、どっちが意地悪？

カガミ

え？私なんかしました？

コナタ

本当にあなた自覚がないのね？

コナタ

私に嘘ついたじゃない。

コナタ

知ってるのよ？トモエさんご家族にお寿司をご馳走したんでしょ？

コナタ

あなたのご実家のお寿司屋さんで。

コナタ

この私を差し置いてトモエさんをご馳走するなんて

コナタ

どういうつもり？

カガミ

え？ご馳走してませんよ？

カガミ

確かにトモエさんは私の実家が営む店で食事しましたけど

カガミ

ちゃんと代金いただいていますよ？

コナタ

嘘ばっかり！トモエさんちは3人の子供がいるのよ？

コナタ

あんな高級店で食事が出来るわけないじゃない！

コナタ

ご馳走したって認めなさい！

カガミ

本当にご馳走なんてしてません。

カガミ

うちの店は良心的な価格なので、よく家族連れで見えますよ。

コナタ

ハイ出たーマウント！

コナタ

高級寿司屋なのに何が”良心的なお値段”よ！

コナタ

数字読める？本当に頭に来るわね！

コナタ

あなたいったい誰と会話しているか分かっているわよね？

カガミ

コナタさんですよね？

コナタ

そうよ！私の夫が誰かご存知？

カガミ

知りません。

コナタ

本当に常識がないのねｗ

コナタ

わたしの夫は木村商事の社長よ

カガミ

そうなんですね。

コナタ

あなた木村商事をまさか知らない？

コナタ

この地域じゃかなり有名な企業よ！？

カガミ

たまに看板を見かけた事があるかもしれません。

カガミ

でもわたし、この地域に引っ越してきてまだ数ケ月なんで

カガミ

あまりよく分からないです。すみませんが。

コナタ

あなたどこまで人を馬鹿にする気？

コナタ

本当に失礼しちゃう！

コナタ

私を怒らせるとどうなると思う！？

カガミ

どうなるんですか？

コナタ

夫に話して、この町から居られなくなる位、たやすい事よ？

コナタ

そうなってもいいの？

カガミ

それはまた引っ越しの手続きとか面倒なので

カガミ

遠慮したいです。

コナタ

でしょ？だったら最後のチャンスをあなたにあげる。

コナタ

本当に私って優しいでしょ？

カガミ

チャンスって何ですか？

コナタ

今度知り合いと高級寿司屋に食べに行ってあげるわ。

コナタ

もちろんあなたの奢りでね。

コナタ

そしたら今までの事全部水に流してあげる。

コナタ

町内会の仕事ももう一人つけてあげる。

コナタ

どう？悪くない話でしょ？

カガミ

それは無理です。無理無理。

カガミ

わたしそんなお金ないので。

カガミ

あんな高い店無理です、払えません

カガミ

って言うか、たとえファーストフードであっても

カガミ

奢るとかありえないです。

コナタ

本当にあなたって強情ね。

コナタ

呆れるわ。

コナタ

きっと今はムキになってるだけでしょ？

コナタ

少し頭を冷やしなさい。

コナタ

また連絡するから、宜しくね。

カガミ

無理ですってばー！

～2週間後～

コナタ

カガミさん？まだ見えないの？

コナタ

早く来た方がいいわよ？

コナタ

昨晩のLINE見たかしら？

カガミ

こんにちは。見ましたよLINE。

カガミ

お寿司屋さんに行くってありましたね。

カガミ

今お寿司屋さんにいるんですか？

コナタ

そうよ？あなた今日はお店手伝わなくていいの？

カガミ

手伝ってますよ。今は休憩中です。

カガミ

あと30分したらまた店戻ります。

コナタ

こんな忙しそうな店なのに、よく休憩なんてできるわね。

コナタ

大将が可哀そう。

コナタ

取り敢えず、この後の皿洗いとか大変そうだから

コナタ

いま顔を出してお金置いて行ってよ。

コナタ

早く来た方がいいと思うけど。

カガミ

今日はいつもより空いてますよ？

カガミ

早く上がれそうです。

コナタ

お店が満席なのよ？忙しいみたいよ？

コナタ

ま、私達がいるからなんだけどねｗ

カガミ

お店、席数少ないみたいですからね。

カガミ

何人で食べているんですか？

コナタ

親戚をみんな呼んで20人くらいかしら。

コナタ

食べ盛りの子もいて、会計かなり膨れ上がっているわよ？

コナタ

早く来てストップかけた方がいいかも。

カガミ

今、おいくらくらいですか？

コナタ

50万円は言ってるわよ？大丈夫？

カガミ

大丈夫じゃないですか？大将も握り買いありそうですね。

カガミ

いいなー。わたしもいつかそこのお寿司食べたいって思ってて

カガミ

羨ましい限りです。

コナタ

自分ちの店なんだから、いくらでも食べられるでしょ？

コナタ

まかないとかで出してもらえないの？

カガミ

ないですないです。せいぜい、フライドポテトとか焼き鳥位ですかね。

コナタ

え？ポテト？焼き鳥？

コナタ

そんなメニュー、この店にあるの？

カガミ

ないんじゃないですか？お寿司屋さんだし。

コナタ

じゃあ、どうしてメニューにないものをまかないで食べているの？

カガミ

うちの店では取り扱っているんで。

コナタ

え？どういう事？

カガミ

うちの店、「次郎ですけど？」

カガミ

今コナタさんが食事されているお寿司屋さんの上にあります。

カガミ

是非是非二次会でお使いください★

コナタ

へ？

コナタ

次郎？太郎じゃなくて？

カガミ

次郎です。ややこしいですよね。

カガミ

よく間違い電話がきますｗ

コナタ

高級寿司屋の太郎じゃないの？

カガミ

違いますって！「安くて上手い！でやらせて頂いている」

カガミ

焼き鳥居酒屋の次郎です！

カガミ

って知ってますよね？よく使って頂いているので！

カガミ

あざーす！

コナタ

嘘でしょ？じゃあ。ここのお会計は誰が支払うの？

カガミ

そんなの親戚を呼び集めたコナタさんがはらうべきでは？

カガミ

旦那さんの名前を使ってお店で好き放題やっているって

カガミ

そこのバイト君がさっき教えてくれましたよｗ

コナタ

そんな・・・約束がちがうじゃない！

カガミ

何か約束しましたっけ？

カガミ

あ、来週から生ビール最初の1杯半額キャンペーンやりますよ！

カガミ

ぜひ彼氏さんと来てください！

カガミ

あの町内会の田中さんでしたっけ？

コナタ

なんでそれを知っているの？

コナタ

彼とはなんでもないわ！

カガミ

とぼけなくても分かりますって。

カガミ

もうしょっ中うちの店使っているじゃないですか！

カガミ

毎回個室でね。

カガミ

私は基本厨房なんで気づかなかったと思いますが。

カガミ

でもうちの店では有名ですよｗ

コナタ

彼氏じゃないし！

カガミ

じゃあ、個室でイチャイチャするのやめてくれません？

カガミ

結構噂になってますよ？商店街中で。

コナタ

私の夫に言うつもり？いくら出せば許してくれる？

カガミ

いや、その前に田中さんの奥さんが弁護士雇ったって聞きました。

カガミ

今日あたり、コナタさんのご主人の会社に乗り込むって聞きました。

カガミ

私は何も言いませんよ？忙しいんで！

カガミ

興味もないし。

カガミ

あ、でも町内会の副会長、誰にやってもらいます？

コナタ

そんな・・・どうしよう

～一月後～

コナタ

こんにちは。お店繁盛してるそうね。

コナタ

この間、雑誌に載ってたわね？

カガミ

コナタさん？

カガミ

お久しぶりですね・・・どうしたんですか？急に

カガミ

あ、この間の謝罪なら結構ですよ？

カガミ

コナタさんも色々大変だったって聞いてます。

コナタ

別に？何か私悪いことしたかしら？

カガミ

もういいです。

コナタ

大変って離婚したって話？

コナタ

私が離婚してあげたんだからね！？勘違いしないで！

カガミ

あ、そうなんですかｗじゃあそうゆう事で。

カガミ

で、お店ですか？まぁ、おかげさまで何とかやってます。

コナタ

それは良い事ね！この前散歩してたら工事中の所あったわね。

コナタ

なんか、お宅の店に似てたんだけど、移転するの？

カガミ

あ、それ2号店ですね。今建設中で。

コナタ

やっぱりそうなの！？ねぇ、じゃあ新しいスタッフ必要よね？

カガミ

まぁ、そうですね

コナタ

あなたは1号店のままよね？

カガミ

どうでしょう・・・なんでですか？

コナタ

知り合いにね、居酒屋でバイトしたいって人がいて

コナタ

ちょっと聞いただけよ。深い意味はないわ

カガミ

コナタさん。無理しなくていいですよ？

カガミ

色々噂聞いてますから。

コナタ

何よ…！

～後日談～

カガミ

その後、町内会内の噂によると

カガミ

コナタさんは親戚中の前で不倫を暴露＆離婚を突き付けられ

カガミ

かなりプライドが傷つき半月程引きこもってしまったそうです

カガミ

そして、自宅からも追い出されて行くあてのないコナタさんは

カガミ

廃墟寸前の公民館近くのボロアパートに引っ越し

カガミ

不倫相手の奥さんと元夫の慰謝料支払いのために

カガミ

朝から晩まで働きづめらしいです。

カガミ

その話を聞いて、今度2号店を出す予定のうちの居酒屋に

カガミ

バイトの面接に来ないことを祈る私でした。

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結城真矢

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