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クロト
クロト
クロト
半ば呆れながら俺は振り返る。
ソル
片目を瞑り、ドヤ顔で胸を張るソル師匠に「いえ全く」と告げ、俺は小さく溜息を吐いた。
俺たちは師匠達に無理矢理連れ出され、とある共和国へ足を運んでいた。
ここに来るのなら、別に今日でなくとも良かっただろうに……。
今日詰まっていた俺の予定を、ノリノリで全てキャンセルした張本人は口を尖らせ全力で不満の意を表現していた。
……不満の意を表現したいのはこちらの方なのだが。
通りに所狭しと並んでいる店からは、多種多様な匂いが漂っている。
……流石に、六百年前から続いている店はないか。
少しの寂寥感を胸に、以前彼女と来た時のことをぼんやりと思い出す。
ソル
ソル
ソル
師匠は同意を求める為に後ろを歩くレミの方を振り返り、固まる。
何事かとつられて俺も振り返り、それから大きなため息を吐いた。
クロト
クロト
──そこには誰もいなかった。
彼女の血を継いでいるレミのことだ、大方何かに見惚れ、観察していたところを置いて行かれたのだろう。
余所見はするなと、言い聞かせていたはずなんだがなぁ……。
思わず天を仰ぎかけ、こめかみに手を当ててその衝動を留めた。
天を仰いだところで、レミの不注意が治るわけではない。
というか、そんなことで治るくらいなら、いくらだって天を仰いでやる。
クロト
ソル
ソル
クロト
クロト
ソル
達観した表情で、ソル師匠は乾いた笑いを漏らした。
……それにしたって、各々の行動が自由すぎて困る。
比喩ではなく本当に首輪でも付けておくべきだったのだろうか。
反省点と改善点を頭の中で列挙していると、ソル師匠が目を細めて俺に尋ねかけた。
ソル
ソル
クロト
クロト
ソル
ソル
ソル
師匠のその言葉で思い起こされるのは、アロミネルが巻き起こしたトラブルと珍事件の数々で。
クロト
クロト
ソル
肩を竦めてそう答えるソル師匠の橙髪を、涼やかな風がたなびかせた。
──まるでイルミネーションのようだ。
ふと視線を右の方へずらしてみると、そちらの方には出店が沢山並んでいる。
色とりどりの光がチカチカと瞬く辺りを見渡しながら、ぼんやりと私はそう思った。
高揚感と、寂寥感に似た何かが心の中に交互に浮かぶのを、どうにかこうにか押し留めようとして、やめた。
祭りというのはそういうものだろう。
……なら、少しは。
レミ
人知れずそう呟いて、テンションを上げるための何かを探すために、辺りをキョロキョロと見渡す。
私のその行動は、人混みの中では不規則で迷惑な動きだったのだろう。
私は正面衝突に近い形で人とぶつかってしまった。
レミ
???
慌てて頭を下げて謝ると、私がぶつかってしまったスカイブルーの髪を持つ女性は、特に気にした様子もなくそう言った。
彼女の耳元では、四角い宝石のような飾りが揺れている。
う~ん、あれ、何処かで見たことあるような──。
レミ
ちょっと待って、その宝石みたいな飾りって、世界警察のお偉いさんが身につける物でしょ⁉︎
どうしてそんな重鎮みたいな人がこんな場所に……もしかして私を捕まえに⁉︎
軽くパニックになりかけたけど、問題の女性がびっくりしている様子に頭が冷えた。
……一旦落ち着こう。
この女性が着用しているのは、世界警察が勤務時に着用している制服ではない。おそらく私服だ。
更に手にはチラシのようなものを沢山持ってるし……。
もしかしたら、彼女の耳元で揺れているイヤリングは何の意味も持たないただのアクセサリーで、世界警察に勤めている人じゃないのかもしれない。
……あ、分かった! きっとこの人は出店でアルバイトしているんだ!
クロト
レミ
物理的な意味で頭に衝撃が走る。
驚いて振り向くと、そこにはクロトがいた。
呆れたような目で見つめられていることを不思議に思って──すぐに私は明後日の方向を向いた。
お、怒られる。確実に。絶対に。人通りの多い所で騒ぐなって。
先ほどとはまた違う意味で血の気が引いて、震える声で私はクロトに訊ねる。
レミ
クロト
レミ
クロト
レミ
レミ
クロト
む、失礼な。クロトの方がはぐれてたんじゃないの?
抗議の意を示すべく私が頬を膨らませていると、人混みの向こう側からソルさんが手を振って近づいてきた。
ソル
ソル
レミ
彼女の言葉から察するに、今回はどうやら私の方が迷子だったようだ。
う、本当にごめんなさい……はぐれた上に知らない人とぶつかったり、突然大声をあげたりしてしまって……。
私が肩を落としていると、ソルさんが優しく声を掛けてくれた。
ソル
ソル
私が静かに頷いているのを、クロトがありえないと言いたげな目で見つめてくる。
……ソルさんはクロトと違って、ちゃんと女の子への気遣いができる方なんだよーだ。
ソル
ソル
ソルさんがさり気なく空色の髪の女性に尋ねる。
完璧な笑顔の仮面の下では、私と同じように目の前の人物が警察関係者かどうかを探っているのだろうか。
大声を出してしまった私とは違い、彼女の態度には余裕さえ感じられる。
凄いな……。
???
???
女性はソルさんに手に持っていた紙を一枚手渡す。
彼女はそれではと会釈して、雑踏の中へと消えていった。
長いお祭りも終盤に差し掛かり、最後の大きなパレードが始まった頃、私達はリュンナさんが予約を取ったという近くのレストランで夕食をとっていた。
煌びやかな店内では華やかに着飾った人たちが和やかに談笑している。
変装用のドレスは着てるけど、私みたいな庶民が来ていいような場所じゃないよ……。
気後れしながら白身魚のムニエルをつつく。
焦がしバターとレモンの風味が魚の味を引き立てていて、本当に美味しい……怖い……美味しい……怖い……。
私が無心でナイフとフォークを動かしていると、目の前に座っているソルさんがふっと吹き出した。
ソル
ソル
ソルさんに勧められるがままに色々な料理を口に運ぶ。
お腹の中が美味しいで満たされていくの、幸せだなぁ……。
私が食べている様子を微笑みながら眺めていたソルさんは、ふと「そういえば」と切り出した。
ソル
レミ
レミ
別の世界で学生してました、なんて言うわけにもいかないので、この世界に来てからのことを素直に述べる。
ソルさんは目を瞬かせた後、得心顔で頷いた。
ソル
レミ
ソル
ソル
遠い日を思い返す彼女の瞳が一瞬とても鋭く見えた気がして、私は首を傾げる。
ソルさんは私のそんな様子に気が付いたのか、ニコッとこちらに笑いかけた。
ソル
レミ
アロミネルさんと私とを比べる発言はこれまでにもいくつかあったけど……彼女より私が小動物みたいで可愛い、なんて言われたのは今回が初めてだ。
ソルさんは機嫌が良さそうにワインが入ったグラスをクルクルと回す。
その頬は紅潮していて……もしやこの人酔ってるな?
ワインを一気に飲み干し、また違うお酒の瓶を開けようとしたソルさんの手に、クロトが水の入ったコップを握らせた。
ソル
ソル
ソル
ソル
ふわふわと笑っていたソルさんが急に真顔になる。
クロトは澄ました顔で応えた。
クロト
クロト
ソル
ユリ
リュンナ
ラン
リュンナ
各々が談笑しながら料理を口に運んでいく。
色々とあったけど、今日は本当に楽しい日だなぁなんて思いながら、私は葡萄ジュースで喉を潤した。
……おかしい。
もうそろそろデザートが運ばれてきてもいい頃合いなのにと、私は店内の時計を見遣る。
最後にウエイトレスさんが肉料理を持ってきてくれてから、もう随分と時間が経っている。
すっかり酔いが醒めた様子のソルさんが、おかしいわねと呟いた。
ソル
リュンナ
クロト
クロトの提案に、ソルさんとリュンナさんは答えない。
……いや、答えられなかったという方が正しい。
クロトの言葉の直後、グラグラと大きく店が揺れたのだから。
レミ
クロト
──刹那、バリバリと盛大な音を立てて床が破られる。
そこから出て来たのは、金髪と青髪の女性達だ。
………………はい?
サファ
ドミノ
サファ
ドミノ
サファ
ドミノとサファ
ドミノとサファ
ドミノ
サファ
ドミノとサファ
……ちょっと待って、何も分からない、私のデザートは⁉︎
周りのお客さんも皆困惑したように顔を見合わせている。
当然だろう。私だって床を突き破って登場する怪盗なんて、今の今まで見たことが無かった。
リュンナ
クロト
ソル
リュンナさんがクロトへ目配せをして、ソルさんを二人がかりで抑えている。
どうしてソルさんは暴れて……いや、一旦放っておこう。
ユリ
ラン
ユリちゃんとラン君は目をキラキラとさせて、怪盗達を眺めている。
……二人は怪盗がとっても好きだもんね。一旦放っておこう。
あれ? もしかしてこの中でまともにデザートの心配してるの私だけ?
なんてことを考えているうちに、床を突き破った怪盗達は目的のものを盗むために店内を走り回る。
ドミノと名乗った怪盗が輪になった糸を器用に操り、店員さんや警備員の動きを封じている内に、もう一人の怪盗サファがタペストリーを盗み出す手口は、確かに手慣れていて、素直に凄いなと感心できるものだった。
ユリちゃんやラン君がはしゃぐのも無理はない。
……無理はないけど、私のデザート…………。
去り際の挨拶のようなものだろうか、ウインクして走り去った彼女らを、私たちは(私だけかもしれないが)呆然と見送った。
その数秒後、ソルさんがバンと勢いよく机を叩く。
ソル
彼女の口から漏れ出たその言葉は、地獄の底から這い上がってきた何かが発する呪詛のような響きを持っていた。
互いに責任を押し付けようとしているクロトとリュンナさんの背が小さく見える。
巻き込まれたくないなら一切音を出してはならないと、残りの私を含めた三人は本能的に悟ってしまい、身動き一つとれない。
ソルさんは満面の笑みで男二人を見据えた。
ソル
ソル
リュンナ
ソル
リュンナ
ソル
クロト
クロト
ソル
クロト
ソル
鼻息荒くそう言ったソルさんは、ぐるりと私たちの方も見渡して不敵に微笑む。
う〜ん、これ完全に巻き込まれちゃったなぁ。
それでも心のどこかでワクワクしている自分がいるのは、きっと祭りの高揚感がまだ尾を引いているからだろう。
ソルさんはパチンと手を叩いて、謳い上げるかのように、高らかに宣言する。
ソル
ソル