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ガタイの良い屈強な身体
後ろで一つにまとめられた長い髪
彼はいつもと変わらない
あの優しく包みこんでくれそうな 穏やかな瞳を細め
暖かな笑顔で俺を出迎えた
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パチパチパチ
掌の合わさる乾いた音が反響する
悠佑
悠佑
悠佑
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悠佑
悠佑
彼は頷きながらしみじみとそう言った
俺は脊髄反射で解析魔法を行使する
疑ったのだ
目の前の男は確実に
俺の知ってる“あの”悠佑さんなのかと
幻影魔法?
じゃなきゃ変身魔法か?
解析の結果
魔法の類は使われていないことが判明
悠佑
思考が読まれてる
よくよく考えてみると
わざわざ 解析する必要はなかったのかもしれない
だって……
俺の鼓膜を刺激するこの声色が
纏う雰囲気が
彼が彼以外の何者でもないことを 証明しているのだから
認めざるを得ない
彼は国立大図書館館長
「悠佑」本人だ
待て…………館長?
黒幕が………館長、?
ッッッくそ!
自分の顔から血の気が引いていくのが分かる
何故気付かなかった
何故こんな単純な考えに思い至らなかった
自身のあまりにも愚かな思考回路に
怒りを覚える
悠佑さん = 館長 = 黒幕!
そういうことじゃねぇか!!!
俺は悠佑さんに背を向けた
出入り口へと走り出す
時を同じくして
俺が向かった出入り口から
二人の影が現れた
狙ったかのようなタイミング
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[ ]
[ ]
聞き覚えのある声を発するその片影は
ゆっくりとこちらに接近した
モニターの光りに照らされ
正体が顕(あらわ)となる
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俺は憎しみを込めた声で彼の名を呼んだ
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if
if
嬉しくもない正解音を口ずさみながら 登場したいふさん
彼の両腕の中には
意識を失い ぐったりと横たわるいるまがいた
遅かったか
俺は唇を強く噛んだ
if
悠佑
if
悠佑さんが褒めて いふさんが自慢げに返事するこの構図
大量の書物に囲まれたあの場所で 幾度となく観てきた光景が
目の前で再現されている
あの柔らかかった雰囲気とは 似ても似つかぬものだけれど…
キャッキャする二人を横目に
俺は呟く
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その声が聞こえたのか
彼らは騒ぐのをやめ
互いの顔を見合わせた
悠佑
if
昨日起きた事件と現状況を振り返り
情報を整理する
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悠佑
俺は大きく息を吸い込んだ
ゆっくりと吐いて
冷静に話すよう努める
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ここまで話し、一呼吸置く
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if
俺の言葉と被せるように
沈黙を貫いていたいふさんが口を開いた
if
if
if
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彼は苦笑いを浮かべた
if
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if
………確かに
if
if
if
if
if
if
if
if
彼はまるで思い出話をするような調子で そう言った
ヘラヘラ話されると腹が立ってくる
if
if
微弱ながら煽りの含まれた彼の声色に
俺の怒りメーターが急上昇した
でも、その通りだ
いふさんの言動は矛盾していた
今だから分かる
当時の俺はそんな余裕なんてなかったんだ
せいぜい違和感を抱く程度で……
いふさんへの怒りが 己の失態に対する怒りへとシフトしていく
悠佑
悠佑さんの一言で
俺の心は更に惨めな屍と化した
俺がもっと早く彼らの計画に気付いていれば
今とは違っていたんだろうな
いふさんが俺たちを追って
平然とこの施設に入ってきたことも
冷静に考えたらおかしいよな
いふさんがもともと
この場所を知っていたとしか考えられない
だって俺
転移魔法の痕跡は綺麗さっぱり消してきたもん
せめてそこで疑っておけばなぁ
対策するなり警戒するなりできたんだろうn………
………は?
そこまで考えた俺は
あることに気が付いた
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感情の無い声
そんな俺の言葉を聞いた彼らの表情が
不気味に変貌していく
「ようやく解答(こたえ)に辿り着いたか」
そう言っているようだった
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if
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勢いのまま、一気に畳み掛ける
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悠佑
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悠佑さんのワントーン低い声が
俺の熱弁を遮る
どす黒い影を落とす彼の顔
俺はそんな彼のオーラに気圧され
口を閉ざさざるを得なかった
悠佑
悠佑
そう言いながら俺に歩み寄る悠佑さん
彼は背中の方から何かを取り出している
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首輪だ
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俺は一度下ろしていた腕を再度持ち上げ
即座に攻撃魔法陣を展開した
そんな俺の様子を見て
彼は深く溜息をつく
悠佑
悠佑
いるま
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うめき声のする方へと視線を動かす
そこには
意識のないまま 床に転がって悶え苦しむいるまと
そんな彼を冷たく見下ろす
いふさんの姿があった