白虎と俺には何もない。 本当の名前も、戸籍も。 ただ一つ、与えられたのもがあるとするならば使命だけ。
何もない俺らを繋ぎ留めているのはネットの存在だけだ。 ネットは暗闇のようなものだ、人を傷つける行為が平然と行われる。
蓮
小さい時からアイツと俺は一緒で…そうだったはずなのに。
最近はずっと、拭えない違和感が心の中を暴れている。 今まで気にしていなかったことが、彼の言葉のせいで気になる様になってしまった。
彼とはもうこれで、終わり。 いつも通りであれば何の問題はなかったはずだというのに……
暇72
本当にありがとうございました。
こさめも怪我無く無事でした。
こさめも怪我無く無事でした。
蓮
それは良かったですね。
報酬についてですが、みことさんという方に既に支払ってもらってますので。
報酬についてですが、みことさんという方に既に支払ってもらってますので。
2人を繋いでいるのは、ネットだけ…のはずだった。
暇72
一つ聞いてもいいですか?
蓮
答えられる範囲であれば
暇72
前に会ったことはありませんか?
小さい頃なんですけど…
小さい頃なんですけど…
胸にじんわりと熱いものが広がる。 子供の頃の記憶がない俺にとって、小さい頃に会った事がある類の話は辛かった。 俺だけ、その記憶がないのだから。
蓮
すみません、覚えていません。
暇72
そうですか、変なこと聞いてすみません。
本当にありがとうございました。
本当にありがとうございました。
白虎からの通知でハッとし、すぐに気を取り直した。
2人で飲み終わり、繁華街を歩いている時に、俺は彼から言われたことについて話した。
蓮
どう思う?会ってたと思うか?
白虎
さぁなぁ?
覚えてんの?お前自身。
覚えてんの?お前自身。
蓮
いつも通りだよ。
覚えてない。
覚えてない。
白虎
だよなぁ、いつも通り気にしなくていいと思うぞ。
そう言ってタバコに火をつける。 それを見た俺は眉をひそめた。
蓮
路上喫煙禁止。
白虎
へっ、ほっとけ。
白虎は唯一、俺と同じ境遇の奴だ。 幼い時の記憶をなくし、同じように上からの使命を背負っている。
名前もない、何もなかった俺がここまで生きていられるのはこいつの存在があったからかもしれない。 いわゆる精神安定剤だ。 互いに安心して、自分は大丈夫だと奮い立たせているのかもしれない。
だが、 俺も白虎もこれから、 彼らにもっと関わらなければいけないことを、 まだ理解していなかった。