日美華
えっ、えっ…?
翼
な、なんだ、これ…
空
日美華が…翼の…小指を?
ケン
嘘、か…?
鈴心
いや…本物だよ…ね
夢芽
ね、ねぇ、プールにナイフなんか無かったよね?
蒼太
…あぁ、無かった…はず
美術部はおととい、全部員でプールを掃除した。
その時には、どこにもナイフなど…刃物はひとつも無かった。
アンドレア
今まで時間制限なんか無かったのに…
廣貴
…もしさ、ナイフがプールにあったとして…日美華、出来んのか?
美花
日美華ちゃん、翼くん…
空
…ちょっと、プール行ってくる。
空
ケン、一緒に来て!
ケン
う、うん!
「中学校のプール」
空
ついた…。
ケン
ん?…ねぇ、空。
空
何?
ケン
バケツ…掃除したときに、全部…回収したよね…
空
え?うん…っ!?
外から見てみると、プールの中にひっくり返ったバケツがあった。
空
あの中?
ケン
…どこから入るの?
空
う~んと…あれ?いつもの出入口が開いてる…
ケン
え?いつも閉まってるよね?
空
うん…
空
とりあえず入ろう…
「プール内」
ケン
あ、危なくないかな…
空
…多分
空
私、開けてみるね
ケン
うん…
空は、そっとバケツをひっくり返した。
しかし、中を覗いた空は、すぐに元通りにした。
ケン
ど、どうしたの、空。
空
…
ケン
空?大丈夫?
空
…うん、私は、何ともない…
ケン
…ナイフ、あったの?
空
…あった
ケン
じゃあどうして…
空
手
ケン
え?
空
…真っ赤な…手首があるの。
ケン
えっ?
空
一緒に入ってたの…ナイフ1つにしては重いなと思って、覗いたら…
ケン
…そうなんだ…
ケン
じゃあ、僕がとるよ。空はちょっと離れてて。
空
…うん、ありがとう。
ケンは、空が後ろを向いたのを確認して、バケツをひっくり返した。
ケン
っ…!!
そこには空が言った通り、作り物とは思えないリアルな手首と、綺麗なナイフが置いてあった。
ケンはナイフだけを取り、手首とバケツはそのままにして、空の所へ戻った。
ケン
空
空
ケン!
ケン
取れたから…帰ろう。
空
…うん。
ケン
(空、顔色悪いな…そりゃそうか。)
ケン
(男の僕でも、あんなの見たらトラウマになりそうだし。)
空
…ごめんね、ケン
ケン
大丈夫だよ
「手城家」
日美華
空ちゃん、ケンくん!
空
ただいま
鈴心
お帰りなさい。
翼
ナイフ…あったか?
ケン
うん…
蒼太
…マジか。大丈夫か?
二人とも…
二人とも…
廣貴
やったら翼の指が、やらなかったら日美華の指が…か。
空
…日美華。
アンドレア
翼。
日美華
…私、頑張るよ。
ごめんね、翼くん…
ごめんね、翼くん…
翼
…いや、大丈夫。
俺も覚悟決めるよ。
俺も覚悟決めるよ。
翼
ただ、明日まで待ってくれないか?
美花
明日まで?
翼
おう。ちょっと心の整理するから。
夢芽
…期限は3日だし、大丈夫じゃない?
空
うん。
ケン
じゃあ、二人とも、今日はゆっくり休んで。
日美華
うん…ありがとう。
翼
…ありがとな。
今日はそこで解散となった。
帰り道、空は家が近いケンと一緒に帰っていた。
ケン
…空、大丈夫?
顔色悪いよ?
顔色悪いよ?
空
…えっ、あ、うん…
空
平気だよ
ケン
(本当かな…足元おぼついてるし…)
ケン
(今にも倒れそうな…)
その時、空が前へ倒れた。
ケン
!?
反射神経で受け止めたが、空の体は少し冷たかった。
ケン
…無理、してたんだ…
ケン
ごめんね、空。
ケンは空をおんぶすると、また歩き出した。
ケン
…王様は、何が目的なんだ…?