6年生の春休みーーつまり、あと1週間もすれば、中学生になるっていう3月の終わり。
宿題がないのをいいことに、わたし、紅月飛鳥はめいいっぱいだらけていた。
どのくらい、だらけていたかといえば、家にあるマンガのほとんどを読みなおしてしまうぐらい。
その数、ざっと100冊。
飛鳥
そのマンガも、いま読んでいるので最後だ。
お父さん
ドアのむこうから、お父さんの声がした。
飛鳥
わたしは、読んでいたマンガに目を落としたまま答える。
お父さん
飛鳥
あと、マンガは半分くらいページがのこっている。
主人公がピンチで、すっごくこのあとが気になるところ。
お父さん
お父さんの言葉に、顔を上げる。
大事な話?いったいなんだろう?
首をかしげたけど、思いうかばない。
...あっ。
もしかして、再婚相手が見つかったとか?
お母さんはわたしが小さいころに、交通事故で亡くなっている。
でも、あのお父さんに女の人を見つけてくるなんて、できるとは思えないけど。
わたしは、マンガにうしろ髪を引かれつつ、立ちあがる。
飛鳥
ドアを開けると、お父さんが立っていた。
おない年の子にくらべて背が高いわたしが、見あげないといけないぐらい、お父さんの背は高い。
180センチは、かるく越えてる。
わたしが言うのもなんだけれど、お父さんは、体操選手のようなしなやかな体つきで、顔もまあまあ、いけている。
ふつうならモテそうだけど、服装が破壊的にダメだった。まったく気をつかわないのだ。
いまも、よれよれのシャツを平気で着ている。わたしがいくら言っても、洋服ダンスの上から順番に着ているとしか思えない、かっこうをしているのだ。
お父さん
飛鳥
お父さん
飛鳥
お父さん
お父さんはそう言って、部屋に入っていく。
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