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車のエンジンが、静かに唸っている。 僕ら五人は、その中で暮らしている。
男が四人、女の子が一人。
イベントみたいなものらしい。 親のいない子とか、 親に預けられた子が集まって、 数日間だけ一緒に過ごすんだって。
外はずっと雨だ。 川の水位が上がってきてて、さっきからざわざわしている。
みんな焦ってる。 僕たちはタオルを投げ合って、 濡れた体を拭きながら、 他のグループと合流して逃げる。
モブ
って震える子に、 自分のタオルを渡した。
モブ
笑ってくれる。 その笑顔だけで、少し救われる。
そのときだ。
1人の女の子が僕らの車に 飛び込んできた。
???
って。
名前は、アオイ。
ボブくらいの髪の長さで、 ちょっとヤンチャそうな笑顔。
でもその笑顔を見た瞬間、
場の空気が一気に明るくなった。
さっきまでの重たい雨音が、遠くに消えていくみたいだった。
みんな、ちょっとずつ 落ち着いてきた頃、
僕
僕は、なんとなく口にする。
僕
アオイは黙ってこっちを見た。 笑ってもいない。 でも、否定もしていない。 その沈黙が、 少し優しくて、 少しあたたかかった。
夜になると、僕らは車の中で ふざけ合う。 意味のない話をして、 くだらないことで笑い転げる。 アオイも笑ってる。 その声が、窓にぶつかって、 外の雨と混ざり合う。
僕
そう思いながら寝た。
僕たちは四人で歌のコンクールに 出る予定だった。 アオイは参加しないって 言ってたけど、 なんとなく、 会場には来てくれる気がしてた。
会場は、なぜか図書館だった。
声を合わせて歌う。 息が合うたびに、 隣の三人の笑顔が見える。 でも、視線を客席に向けても、 アオイの姿は見えなかった。
歌い終わったあと、外に出る。 雨はもう止んでいて、空気が冷たい。
僕
僕が聞くけど、誰も答えられない。
駅に着く。 電車はぎゅうぎゅう。
僕
電車を眺めたまま、そう言う。
そのとき、 気づいたら隣にお母さんがいた。 無理やり電車に乗り込んで、 僕を残したまま、扉が閉まる。
僕
気づけば、周りに誰もいない。
車も、仲間も、アオイもいない。 ただ、濡れたアスファルトの匂いと、 遠くで鳴る発車のベルだけが 残っていた。
僕
夢、だったんだ、…
あの4人に会いたい。 アオイに会いたい。
FTMの僕は、 やっぱり普通じゃないのかな。
あの夢のイベントは、 現実にあるのかな。
たしか、九州の方だった気がする…