茜くん
…っはぁ、は…っ
せんぱいから逃げて、うちの近くの公園に行く
でも、やっぱり意識は逸らせなくて────
茜くん
…うわ、暗……いつのまに
帰ろうと思い立ち上がると思わずつまずく
茜くん
いてっ…っださ
さっきまでずっと泣いていたのに、また涙が溢れる
茜くん
(今日でぜんぶ、涙枯れたらいいのに…)
茜くん
…好きだった、なぁ……
茜くん
(それに────)
ポツリとそう言ったとき、頬に冷ややかな感触が伝わる
散沢副会長
…何、しているの
茜くん
!?
散沢副会長
どうぞ、ジュース
茜くん
あ、ありがとう…
茜くん
(いちごミルク…おれのイメージこれなのかな…)
散沢副会長
その…家、そこなのですが
散沢副会長
泣いてます…?
茜くん
あ、おれもこの辺…近いですね
どう答えたらいいか分からなくて、俯く
散沢副会長
…敬語、使えたのですね
茜くん
へ?あ、はい
茜くん
月せんぱいは、昔の知り合い?…って感じで
その名前にまた泣きそうになる
散沢副会長
…おおかた、燐咲さんに振られたというところですか
茜くん
!
散沢副会長
分かりやすい…それでそんなに、泣くんですか
茜くん
そりゃあ…好きでしたから
茜くん
でも、2回目だったんです
散沢副会長
え?
茜くん
(そのときは会長のこと好きか聞いても分からないって言ってたのに)
茜くん
(…月せんぱいの口から、好きだって、聞きたくなかった…っ)
ぼろ、と涙が溢れてまた止まらなかった
茜くん
(はやく、枯れろ)
散沢副会長
…ごめんなさい
茜くん
え?
散沢副会長
あなたのこと、勘違いしてましたわ
散沢副会長
…もっと、チャラい感じだと
茜くん
ええ…
茜くん
ああ、だからおれがきれーって言ったらイヤな顔したんですか?
散沢副会長
…はい
散沢副会長
元カレに、似てたんです
茜くん
え?
散沢副会長
あ
茜くん
…ふふ
茜くん
聞かせてくれますか?
散沢副会長
今はあなたの方が───
茜くん
違うこと、考えてたいです
散沢副会長
…そうですか
散沢さん
散沢副会長
あ、はい?
散沢さんってどうしてみんなに敬語なの?
散沢副会長
特に意味はありませんが…
あははっ、なにそれ変なの〜
散沢副会長
ひどい言いようですね…
ん?ううん、違う違う
面白いなーって思って?
散沢副会長
…そう、ですか
うん!ずっときれーだな〜って思ってて…だから話せて嬉しい!
その日から彼はよく話しかけてくるようになりました
周りからもお似合いだとか言われるようになって
わたしも、彼がいるおかげで話しやすかったし居心地が良かったです
だから────
俺、散沢のこと好きなんじゃねえのーって周りから言われてて
流れになっちゃうけどさ
ほんとに好きだから、俺は
付き合うことにしましたの
彼は人に恋人がいることを話すのを頑なに嫌がりました
それでもまあいいと思っていましたが、違ったようです
ね〜、ウチが本命なんだよねぇ?
ったりめーじゃん!つか、他のコたちって割とマジメなの多いんだよ笑
ほら、最近できたのは敬語使うカタクルシイやつだっつったろ
あー!笑、それ会ってみたい!
ね、てかぁ、なんでそんなコたちと付き合うわけぇ?
夢見せてやってんだよ!笑
楽しいぜぇ?王子様かヒーローにでもなった気分で
きゃはっ!サイテーぇ
アンタは器用すぎ〜笑
だろ?
あー、でもな、アイツ…1番最近の、このクラスのやつなんだけどさ
敬語の?
ん、そ
今まででいっちばんツラいいんだよな〜
バレるまでに1回くらいはヤりてぇわ笑
ちょっとー?まーいいけどっ
ほんと物分かりいいよなお前〜♥
低脳、愚の骨頂
そんな言葉しか沸きません
茜くん
ええ…それでその彼氏とは?
散沢副会長
その場で振りましたわ
茜くん
おお…かっこいい
散沢副会長
そんなものでもないですが
散沢副会長
…というか、人に話す日が来るとは思いませんでしたわ
茜くん
そうなんですか?副会長かっこいーのに
散沢副会長
あなたこそ…泣くほど本気で恋をしてるなんて、すごいじゃないですか
茜くん
傷の舐め合い…
散沢副会長
ふふ、ですね
散沢副会長
散沢副会長
…燐咲さんなら、またふつうに接してくれますわ
茜くん
うん、おれもそー思う!