目を覚ました女は
辺りをキョロキョロと見回している
黎
ああ、起きましたね
???
んん
眠そうに目をこすった後
オレと黎をじっと見る
黎がやさしく話しかける
黎
ご気分はいかがですか?
???
・・・少し
コウ
さっきよりは顔色良くなったな
オレは女の頭をなでた
???
・・・
女は変わらず無口だが
まっすぐにこちらを見ている
黎は鍋でつくっていた雑炊をよそい
そいつに差し出した
黎
とりあえず、食べなさい
???
・・・
女は無言でそれを受け取り
少し見た後、食べ出した
コウ
食欲はあるみたいだな
少しすると、女は雑炊を食い終わり
黎に器を返した
???
ごちそうさまでした
黎
はい、お粗末様でした
黎
僕はこの森に住む鬼の黎です
黎
そして彼は
コウ
水の精霊のコウだ
黎
あなたの名前は?
???
・・・私は
???
・・・人型(ひとがた)です
黎
っつ!
コウ
?
黎は驚いたような顔をしたが
オレは理解出来なかった
黎は優しく女の目を見て言った
黎
あなたの本当の名前を言って良いんですよ?
???
・・・叩かない?
黎
叩きませんよ
???
私の名前は・・・
明日
木霊 明日(こだま あす)です
明日と名乗った女は
名乗った瞬間に
身をこわばらせた
オレは本心に従って言った
コウ
良い名前だな
黎
ええ、きれいな名前です
明日
!・・・
感情の無かった女の顔に
少しだけ驚きの感情が宿った
<黎視点>
黎
あなたはどうしてあそこにいたんです?
木霊さんと名乗ったその少女に僕は尋ねた
明日
・・・ご主人様に命じられたので
コウ
ご主人様?
黎
ご主人様のお名前は?
明日
タカダ ユキヒサ様
黎
・・・なるほど
色々わかってきたぞ
僕が納得をしている間に
木霊さんはクワーっとあくびをした
コウ
眠いのか?
木霊さんはコクンと頷いた
明日
ごめんなさい
コウ
謝るなよ
コウ
寝る子は育つってやつだ
コウ
寝て良いぞ
また木霊さんは頷いて
コウの横で寝始めた
少しすると小さな寝息が聞こえた
コウは木霊さんが寝たのを確認して、僕の方を見る
コウ
ねえさ
コウ
人型ってどういう意味だ?
黎
ああ、そっか
黎
君は西国の生まれだからわからないか
黎
「人型」って言うのはね
黎
人の形だけど人で無い者
黎
つまり
黎
「奴隷」を示す言葉なんだよ
コウ
・・・はあ?
コウ
・・・そんな言葉を
コウ
こんな幼いやつに言わせてるのかよ
黎
ひどいものだね
黎
それと、僕
黎
木霊の名には聞き覚えがあるよ
コウ
そうなのか?
コウ
こいつ何者なんだ?
黎
木霊は代々、巫女や陰陽師の家系なんだ
黎
霊的な悩みや現象の相談にのって
黎
その技術や知識を使って
黎
お祓いや助言などをしていた
黎
人々に思想を押しつけたりすることはなく
黎
穏やかで優しく
黎
村人川も信頼されていたよ
黎
僕と不可侵の約束を結ぶきっかけになったのも
黎
木霊の一族だ
コウ
なるほどな
コウ
木霊の巫女っぽい服装もそういう事なのかもな
コウ
でも、どうしてその家の娘がイケニエに?
黎
これは僕の予想だけど
黎
何かのきっかけで彼女の家族が居なくなってしまった
黎
そして
黎
今まで権力者でも無いのに信頼を得る木霊家をよく思っていなかった
黎
村長家系のタカダは
黎
一人になった彼女を召使い、それどころか奴隷にして
黎
挙げ句の果てに生贄として彼女を使ったんだろう
コウ
あり得そうな話だな
コウ
実際はそうでないと思いたいけど
コウ
クズな人間はどこまでもクズさ
黎
そうだね
黎
彼女の家族に一体何があったんだろう
明日
お父さんとお母さん
目が覚めたのか
木霊さんは話し出した






