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最近、緑のことを考えると、胸がざわつく。
それは、嬉しさとかときめきじゃなくて、焦りとか、ざらついた不安。
誰かに取られてしまうような、そんな感覚。
たとえば今日。
教室の隅で、緑と橙は並んで笑っていた。
それだけで、授業の内容が全く頭に入らなくなる。
黒板の文字も、先生の声も、全部、薄い膜の向こう側にあるみたいだった。
緑 。
休み時間、後ろから緑の声がして、私はびくりと肩を揺らした。
桃 。
なんでもないフリをして笑う。いつものように。
でも、その笑顔が自分でも上手く作れていないことくらい、気づいていた。
緑 。
桃 。
嘘だ。避けてる。
自分から距離を置こうとしている。
緑が悪いわけじゃない。悪いのは_私だ。
好きになんて、ならなきゃ良かった。
こんなふうに苦しくなるくらいなら、幼なじみのままでいればよかったのに。
でも、もう遅い。
桃 。
緑の問いかけから逃げるように、私は教室を出た。
廊下の窓辺。
風がカーテンを揺らして、頬を撫でる。
目を閉じると、心がじんわり傷んだ。
気づかないふりは、もうできない。
私が、緑のことをずっと好きだったことも。
そして、緑が私を"そういう目"では見ていないことも。
ちゃんとわかってた。 ずっと、わかってた。
でも、あきらめ方がわからなかった。