かける
お、昼休みか
かける
疲れたー、早速弁当だな。
女
あのー、かける先輩!
かける
ん?
女
ご飯一緒してもいいですか?
女
私もお弁当なので!
かける
そっか、全然いいよ。
女
ありがとうございます!
俺も一応先輩。
こういう風に誘われるのは、俺がここにいていい証明みたいになって、
ちょっと嬉しかったりする。
女
先輩、最近は毎日お弁当ですね!
女
健康に気を使っているんですか?
かける
いや、知らん。
女
え、知らないって?
かける
俺が作ってるわけじゃないからな。
女
え、じゃあ、お母さんが作ったとかですか!
女
いいですね。愛を感じます!
あれ、こいつに俺が結婚してること言ってなかったっけかな。
かける
俺、一応、結婚してるんだよね。
かける
だから、これ作ったの、俺の妻。
女
えっ!!
女
結婚してたんですか!
女
もう?!
かける
もうって、俺もう32だぞ笑
かける
別におかしくないだろ。
女
いや、そういうことじゃなくて。
女
えっと、じゃあ、お見合いとかってことですか?!
かける
はあ?さっきから何言ってんだお前
女
先輩こそ、いろいろ話が噛み合ってませんよ!
かける
こっちのセリフだっつの笑
女
えー、えー、えーー!
かける
うるせぇぞ、さっきから
女
え、だって、この前まで凄い落ち込んでたじゃないですか。
女
落ち込んでたっていうか、もう心ここにあらずっていうか。
かける
なんの話をしてるんだ?
女
なんの話って?!
女
かける先輩の奥さんが、事故で亡くなった話ですよ。
かける
かける
…何を言ってるんだ?お前は。
女
かける先輩こそ、なんなんですか?おかしいですよ。今日。
女
今日というか、最近!
女
まるで、あの事故のこと忘れたみたいに!
女
違う女までつくって!
かける
おかしいのはお前だろ!
かける
何ふざけたこと言ってんだよ
かける
まいは、生きてる!現に、この弁当だってまいが作った!!
女
思い出した!そうだ。あの事故で死んだのは、確か、
女
まいって名前の人だった…
かける
だから、生きてるっつってんだろっ!!
かける
頭冷やしてこいよ!
女
頭を冷やすのはかける先輩です!
女
というか、その焦り様。
女
もう、事故があったってこと、認めたようなものじゃないですか。
女
私が言っていることを理解できないなら、そんなに食いつきませんよ。
かける
うるせえ!!
かける
かける
…もういい。
そう言って、俺は、部屋を出て、
トイレに座り、うなだれた。
まいは、生きている。
だって、昨日、一緒に星空を見て、キスした。
弁当だって、作ってくれた。
でも、でも、でも…
心のどこかに取っ掛かりがあるのは、気のせいではなかった。
続く