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威榴真side
紫龍いるま
告白しても必ず 結ばれるとは限らない。
晴れて両思いになったとして いつまで続くかは未知数だ。
紫龍いるま
紫龍いるま
赤暇なつ
恋愛に関わる脳内物質が丁度 その頃に効果が切れるからだという。
個人差はあるらしいが妙に説得力が あるなと思ったのも事実だった。
片思いならば あとは自分の心がけ次第だ。
好きなだけ相手を想っていられるし 自分のタイミングで 終わることも出来る。
紫龍いるま
きっと夏都も同じような 思いなのだろう。
いつからとは聞いたことが なかったが彼も片想いの真っ最中だ。
夏都の想い人、雨乃 恋醒 は 蘭と美琴の親友でもある。
だから何かと話す機会が あるのだが何故か夏都は 彼女の前では貝になってしまう。
本人曰く、 「こさめ、可愛すぎ ... 緊張する、無理 ... 」 ということらしい。
あからさますぎて澄絺と俺は 苦笑してしまうのだが 当の恋醒は天然ということも あってか、まるで気付いて いないようだった。
紫龍いるま
数々の受賞歴を誇る美術部の 部長という肩書きも手伝ってか 周囲からは 「よく分からないけど、 何か凄いらしい」 という扱いだ。
才能が有り余っているのか時折、 信じられないような大胆な行動に出る あたりは澄絺とよく似ている。
男子の間では 「取り敢えず美少女」 というポジションで落ち着いているが 密かに狙っている輩も 少なくないと聞く。
それこそ学年問わず、だ。
最も本人は蘭に聞く限り 「恋より友情!美術!」 というスタンスらしいが。
紫龍いるま
話くらい聞くぞという 思いで放った言葉だったが 夏都を更に撃沈させてしまった。
机と額がぶつかる鈍い音が響き 虚な声が聞こえてくる。
赤暇なつ
紫龍いるま
夏都の肩をぽんと叩き 帰り支度を始めようと席を立つ。
開けっ放しの窓に向かうと 外から賑やかな声が聞こえてきた。
紫龍いるま
赤暇なつ
よろよろと立ち上がり 夏都も窓側にやってくる。
俺は場所を空けながら 「あれ」と指を指す。
何処か焦点の合わなかった夏都の瞳が 真下の光景にぎょっとなる。
赤暇なつ
赤暇なつ
紫龍いるま
赤暇なつ
赤暇なつ
紫龍いるま
言ってから失敗したと気が付いた。
声に棘があるし言葉選びも 嫌味っぽく聞こえたはずだ。
心配になって夏都の顔を盗み見ると 運悪くバッチリ視線が 合ってしまった。
赤暇なつ
赤暇なつ
紫龍いるま
反射的に答えてしまい俺は益々 頭を抱えたい衝動に襲われた。
友人の露骨すぎるリアクションに 夏都は苦笑するばかりだ。
乾 奈唯心とはあまり 話したことがないが蘭と漫画の趣味が 合うことは知っている。
俺も妹の穂留彗(ほとけ)や 蘭の影響で幅広く読む方ではあるが 出版社や雑誌ごとの 特徴なんていうコアな話で 盛り上がられるとお手上げだ。
蚊帳の外に追いやられることも 多く 奈唯心と蘭が話している時は 極力距離を置くようにしている。
紫龍いるま
まじまじと観察するような 視線を送る俺の横で 夏都は眩しそうに目を細めている。
赤暇なつ
言いながら夏都は 窓の桟に頬杖をつく。
視線は変わらず奈唯心に 向けられているが実際は 別のことを考えているのだろう。
紫龍いるま
言い逃げするように 俺は鞄を取りに机に戻る。
夏都は呆気に取られていたがすぐに 「威榴真、今のもっかい!」 と叫び出す。
紫龍いるま
紫龍いるま
赤暇なつ
紫龍いるま
赤暇なつ
赤暇なつ
紫龍いるま
我ながらアホみたいなことを しているなと俺は内心苦笑する。
だがこのノリが 心地いいことも事実だった。
才能とか恋とか 自分のままじゃならないものと 対峙し続けるのは想像以上に辛い。
紫龍いるま