TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

動物だって化けて出る

一覧ページ

「動物だって化けて出る」のメインビジュアル

動物だって化けて出る

1 - 動物だって化けて出る 第1話

♥

7,530

2019年04月07日

シェアするシェアする
報告する

寧々子

7月12日(日)

寧々子

さっきね

寧々子

公園でジョギングしてたら

寧々子

ベスを見つけたの

千鶴

ベスって…

千鶴

寧々子の家で飼ってた

千鶴

ワンちゃんのことだよね?

寧々子

そう

寧々子

白い毛色の

寧々子

ラブラドールレトリバー

寧々子

千鶴も覚えてるでしょ?

千鶴

そりゃ覚えてるけど…

千鶴

そんなわけないよ…

千鶴

他の犬と見間違えたんじゃない?

寧々子

見間違いなんかじゃない!

寧々子

この目ではっきり見たの

寧々子

あれはベスだった

千鶴

寧々子…

千鶴

気持ちはわかるけど

千鶴

受け入れなきゃダメだと思う

千鶴

ベスはもう、いないんだよ

寧々子

そんなことわかってる!

寧々子

玄関で冷たくなってたベスを

寧々子

私が最初に見つけたんだから

寧々子

獣医さんに老衰だって言われて

寧々子

ペット霊園でお葬式もしてもらった

寧々子

ベスが死んじゃったことは…

寧々子

わかってる

千鶴

それなら

千鶴

ベスとはもう会えないってことも

千鶴

わかるよね?

寧々子

違うの!

寧々子

そうじゃないから

寧々子

いますごく不安で…

千鶴

寧々子?

千鶴

大丈夫?

寧々子

さっき私が走ったのは

寧々子

ベスの散歩コースだったの

寧々子

二週間ぶりに

寧々子

ベスとの思い出のコースを

寧々子

走りたくなって

千鶴

うん

寧々子

散歩してるときのベスは

寧々子

すごくいい子だった

千鶴

そうだったね…

寧々子

おじいちゃんだから

寧々子

スピードはゆっくりだったけど

寧々子

歩くのを嫌がったりしないで

寧々子

しっかりついて来てくれた

千鶴

優しくて

千鶴

頭のいい子だったもんね

寧々子

だけどね

寧々子

そんなベスもたまに

寧々子

変な行動をとるときがあったの

千鶴

変なって?

寧々子

中央公園の東側に

寧々子

小さな温室があるのわかる?

千鶴

わかるよ

千鶴

ハーブとか育ててる場所だよね

寧々子

そう

寧々子

散歩のとき

寧々子

あの温室の前を通ると

寧々子

なぜかベスは歩くのをやめて

寧々子

座り込んじゃうの

千鶴

いつもそうだったの?

寧々子

今年の春から急に

寧々子

立ち止まるようになって

寧々子

そのあとは毎回そうだった

寧々子

道の端っこに座って

寧々子

じっと温室のほうを見てるの

寧々子

誰かを待ってるみたいに

千鶴

温室の中に入りたかったのかな?

寧々子

わかんない…

寧々子

リードをちょっと引っぱると

寧々子

すぐ歩き出してくれたから

寧々子

気にしなかったんだけど…

千鶴

もしかして

千鶴

寧々子がさっき見たっていうベスも?

寧々子

そうなの

寧々子

あのときみたいに温室を見てた

寧々子

気づいて駆け寄ろうとしたら

寧々子

ちょっとだけこっちを振り向いて

寧々子

それから…

千鶴

どうなったの?

寧々子

消えちゃったの

寧々子

夜の闇に吸い込まれるみたいに

寧々子

いなくなっちゃった

千鶴

不思議な話だね…

寧々子

これってなんなのかな?

寧々子

ただの幻覚?

寧々子

それともあれは

寧々子

ベスの幽霊だったの?

千鶴

ごめん寧々子

千鶴

私にもわからないよ…

寧々子

そうだよね…

千鶴

きびしい言い方かもしれないけど

千鶴

早く忘れたほうがいいと思う

千鶴

どっちにしたって

千鶴

ベスが戻って来ることはないんだから

7月13日(月)

寧々子

(千鶴にはああ言われたけど)

寧々子

(やっぱり気になる)

寧々子

(本当にベスだったのか)

寧々子

(もういちど確かめたい)

寧々子

(──また温室の前まで来たけど)

寧々子

(今夜はなにも見えないな…)

寧々子

(やっぱり、幻覚だったのかな?)

ガサ…

寧々子

(あれ?)

ガサ…ガサ、ガサッ!

寧々子

(茂みの奥になにかいる!?)

寧々子

ベス?

寧々子

ベスなの?

謎の男子

──失礼だな

謎の男子

誰がベスだよ

 

寧々子

きゃっ!

寧々子

…え?

寧々子

あなたは…誰?

謎の男子

だからベスじゃないって

寧々子

そんなの見ればわかるけど…

寧々子

その制服

寧々子

私と同じ高校だよね

寧々子

いきなり茂みから出てきて…

寧々子

こんなところでなにしてたの?

謎の男子

さあね

謎の男子

もしかしたら

謎の男子

君と同じことかもよ

寧々子

え?

謎の男子

だって

謎の男子

君にも見えるんだろ?

寧々子

それって、まさか──

管理人

コラおまえら!

管理人

いま何時だと思ってる!

謎の男子

あーあ

謎の男子

邪魔が入ったみたいだ

管理人

その制服

管理人

鈴鳴高校の生徒だな

管理人

早く帰れ!

管理人

学校に連絡するぞ

謎の男子

わかりましたよ

謎の男子

帰ります

寧々子

ちょっ…

寧々子

ちょっと待って!

寧々子

ねえ!

寧々子

待ってってば

謎の男子

ついて来ないでくれるかな

謎の男子

ウチの住所とか知られたくないんだけど

寧々子

だったらここで話して!

寧々子

あなたにもベスが見えたの?

謎の男子

…ベスかどうかは知らないけど

謎の男子

白い犬の幽霊は見たよ

寧々子

幽霊…?

寧々子

じゃあ、あれはやっぱり

寧々子

ベスの幽霊なの?

謎の男子

…君の犬は

謎の男子

この世にまだ未練があるみたいだ

謎の男子

だから幽霊になって

謎の男子

化けて出たんだよ
loading

この作品はいかがでしたか?

7,530

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚