今日は休日、気持ちのいい陽射しが照りつける掃除日和だ。
毎年毎年、我が家の面々は旦那も子供も私がやいやいゲキを飛ばさないと動かず、大掃除がろくに進まない為
今年こそは早く終わらせようと、 休みとなるとすぐに遊びに行ってしまう夏帆、それに着いていく仁を
なんとか家に繋ぎ止めて、それぞれが作った魔窟の掃除をする様に言い聞かせた。
夏帆
夏帆
夏帆
夏帆
漫画雑誌の塔の群に挑みかかる娘は、捨てるものの分別作業とうそぶき、パラパラと中身を確認しては
お気に入りのキャラクターが活躍する回だとか、何かと理由をつけて保存用に仕分け、また新しい塔を建立していっているようだ。
窓拭きをしながら監視をしているが、一向に捨てる雑誌が増える様子はない。
仁
仁
仁
仁にはいらないおもちゃを選ぶように言っておいたはずだけど…
早速飽きてしまったようで、ニチアサのヒーローごっこ遊びをせがんできた。
夏帆
夏帆
夏帆
夏帆
見ると、ヤイダーの刀を構える仁のズボンのベルト部分に、夏帆のおもちゃが刺されている。
脇差か何かのつもりなのだろうか。
取り返そうと夏帆が仁に掴みかかる。
仁
ごっこ遊びを邪魔されまいと、ドタドタと部屋のソファやローテーブルを駆使して逃げ回る。
付き合いのため一緒に番組を見ている限り、ヤイダーナイフなどという武器は設定上存在しない。
仁が考えたオリジナルの武器なのだろう。
…
二人の様子など呑気に実況している場合じゃない!
紬
紬
夏帆
仁
拓海
拓海
拓海
…ピキ。
紬
紬
拓海
拓海
拓海
拓海
拓海
拓海
音痴な歌声を響かせ、呑気にブランチを食べようとするどころかストック不足を前もって伝えない拓海。
…
紬
紬
紬
拓海
夏帆
仁
紬
紬
夏帆
紬
紬
紬
紬
叱り飛ばしながらズンズンと玄関まで進み、靴箱の上にある車の鍵を鷲掴みして外に出た。
紬
紬
スーパーへ向かう慣れた道。
ぼやきながらハンドルを握る。
紬
紬
紬
見通しの良い道を惰性で進んでいると、ぐるぐるといろんなことを考えてしまう。
紬
紬
紬
紬
紬
紬
レジに向かう途中、おつとめ品売り場が目に入る。
いつもの癖でそちらに目をやったところ…
紬
昔よく飲んでいたフレーバーティーの缶ボトルが売られていた。
紬
紬
それを棚から買い物カゴへと移し、レジへと並んだ。
紬
あんなにも怒って家を飛び出したから気まずいのもあり
さっき買った紅茶を片手に公園で休憩する事にした。
紬
紬
ボトル缶の紅茶を好んで飲む様になる前は、茶葉から買って飲んでいた記憶はある。
でも育った家庭は純和風。
出てくるおやつもクッキーなんて洒落たものではなくて
おばあちゃんが顔見知りの店で買ってくる、まんじゅうなんかの和菓子が主だった。
それなのになんで紅茶を好き好んで飲んでいたんだっけ。
学校でみんなが飲んでいたからそれを真似して?
…いや、他に理由があった気がするけど…
紬
紬
紬
フレア総統…
それは昔私が読んでいた少女漫画の悪役。
主人公の住んでいる国と敵対関係にある国のトップである。
灰色の短髪をオールバックにして、軍服をかっちり着こなし
右の眉元から左の小鼻辺りにかけ、鼻筋に刀傷のある影のある初老の男キャラ。
フレア総統
高官
高官
高官
フレア総統
フレア総統
フレア総統
バシュッ!
高官
性格は冷徹非情、失敗した部下は見せしめの為にその場で斬り伏せる残酷な一面を持つ。
でも…
フレア総統
フレア総統
フレア総統
その手段を選ばない政治のやり口は自分の国の民を思うが為の事。
フレア総統
フレア総統
フレア総統
フレア総統
側近
さらに策略の間にお茶やお菓子を嗜むなど甘党な部分もある。
その残忍だけれど真摯に統治をする姿、またギャップに当時の私はすっかり惚れ込んでしまったのだ。
…でもそのワンマンぶりに反対する軍の反乱因子と、作品の主な舞台である、フロスト共和国出身の主人公の幼なじみ達が結託して
フレア総統率いる国防軍と正面衝突して大規模な戦争が始まり、最終的には総統は処刑されてしまう。
私は泣いた。かなり泣いた。
なんとか総統が処刑されず、主人公達と大円団を迎える事は出来なかったのか?
色々考え、考え抜いて…
フレア総統
紬(子供時代)
紬(子供時代)
紬(子供時代)
紬(子供時代)
紬(子供時代)
フレア総統
フレア総統
紬(子供時代)
紬(子供時代)
紬(子供時代)
考えた結果。
私の空想でフレア総統を家に招く遊びをたまにするようになった。
フレア総統
紬(子供時代)
紬(子供時代)
紬(子供時代)
フレア総統
私の空想のお茶会では、私が考えつく「なるべく優しい政治」を総統に提案して
それを実行してみんなから愛される優しい国家元首になって、フロスト国始め周辺国に和平条約を結んでもらう。
そうすれば「私の中の世界」では皆んな仲良く結末を迎えることができる。
そのお茶会の影響で私は紅茶を好きになったんだった。
フレア総統
フレア総統
フレア総統
フレア総統
紬
紬
スーパーで保冷用に氷を貰っているとしても、その効果には限度がある。
空想遊びが身につき過ぎて、たまにこうやって心の声が総統の声として頭に響く時がある。
…そんな時、私もまだまだ子供っぽいな、と少し恥ずかしくなってしまう。
フレア総統
フレア総統
フレア総統
フレア総統
フレア総統
フレア総統
紬
思い返してみれば、夏帆のキャラクターへの愛も、仁のごっこ遊び癖も、私からの遺伝なのかもしれない。
紬
紬
紬
紬
拓海
拓海
夏帆
仁
留守の間、怒鳴り散らしたせいで泣いてしまったのか、夏帆の声は暗く、鼻の頭も少々赤い。
仁は私の顔を見るや否や、私におもちゃを取られまいとしているのか
手に持った変身リングを後ろに隠す始末だ。
紬
紬
紬
夏帆
夏帆に了承を得て、雑誌の一つを手に取る。
紬
紬
紬
紬
夏帆
夏帆の目が輝きだす。
紬
紬
紬
紬
紬
仁
仁
紬
紬
紬
紬
拓海
紬
紬
紬
ふとしたきっかけで私の子供の頃の面影が子供達にあると気づき、少し親身になれた。
私自体もたまには余裕を作るために休憩が要るんだよね。
疲れた時は紅茶と和菓子で一息入れよう。
…子供の頃に見たフレア総統の様に。
#TELLER文芸部 ベロニカさん案
テーマ:紅茶 追加お題:面影
コメント
5件
子ども達に、昔の自分の面影を見たんですね! 紬ママの空想遊びも、可愛かったです( *´︶`*)
仁くん可愛いーー!!紬ママはこれからも良きママとして頑張ってください☺