美香
そうね、驚いたわ
美香
きっと、二度と忘れられないと思うの
美香
聞きたいの?
美香
…いいわ、話してあげる
美香
暑い暑い、夏だった
美香
その日は私の誕生日だったの
美香
だから委員会の仕事を早く終わらせて、家に帰った
美香
親がね、パーティーしようって張り切ってたの
美香
だから私も楽しみにしてたわ
美香
やっと家に着いて、ドアを開けた
美香
誰もいなかったのよ
美香
机の上にメモがあって、
美香へ お買い物に行ってくるから、留守番お願いね。 お母さんより
美香
って書いてあった
美香
だから私、自分の部屋で待ってたの
美香
そうね、20分くらい経った頃かしら
美香
玄関のドアが開く音がして
美香
お母さんの声がしたの
母親
みか、ただいま
美香
って。
美香
本を閉じて部屋のドアを開けたの
美香
そしたらね
母親
みか、どこにいるの?
美香
…って、聞こえた
美香
変だなって思ったわ
美香
私の部屋って一階にあったんだけど
美香
玄関から部屋のドア、見えるはずなのよ
美香
当然私からも、お母さんが見えてた
美香
でも、特に気にならなかったの
美香
『何言ってるの、私ここにいるじゃない』
美香
って言いながら、私は玄関まで行った
美香
でもね
母親
馬鹿言わないで
母親
みか、どこに隠れてるの?
美香
え?
美香
って、本当にそう思ったわ
美香
美香
…だって私、すぐ目の前にいたのよ
美香
てっきり私、お母さんがおかしくなったと思って
美香
その場でお父さんに電話したの
美香
とにかく必死で説明して
美香
早く帰ってきてくれるように頼んだ
美香
その間もお母さんは、私を呼び続けてたわ
母親
みか、みか
母親
どこなの、どこにいるの
母親
かくれてないででてきてちょうだい
母親
みか
母親
みか
母親
みか
美香
…って
美香
怖くなって、私はお母さんをリビングに連れて行った
美香
ソファに座らせて
美香
落ち着くように、お茶を淹れようと思ったの
美香
もちろんお母さんは私を呼んでいた
美香
…目の焦点が合わないまま。
美香
それからお湯を沸かそうと思って、キッチンに行ったの
美香
そしたら
母親
まって
美香
お母さんがそう叫んだの
美香
その場で立ち止まって
美香
『お母さん、どうしたの?』って
美香
呼びかけて
美香
それで
美香
それで
ピーーンポーーーン
美香
……
美香
ああ
美香
お母さんだわ
美香
ごめんね、少し待ってて…
美香
おかあさん
美香
おかえりなさい
美香
どこにいってたの?
美香
そっか
美香
いまね、***がきてるのよ
美香
美香
おかあさんにも、しょうかいしなくちゃね
美香
…ねぇ、
美香
こっちにきて
美香
はやく
美香
はやく
美香
はやく
美香
はやく
美香
はやく
美香
はやく
美香
はやく
はやくこい!!
祐一
っていう、
祐一
夢を見たんだ
美香
…何よそれ?
美香
私、なんでそんな怖くなってんの
美香
大体私のお母さんは普通だからね
祐一
知ってるけどさ
祐一
なんか、すっげぇ気味悪い夢だったなぁ
美香
ふーん
〜♪
祐一
電話鳴ってるぞ
美香
ん、ああ
祐一
にしても暑いなぁ
祐一
扇風機ぐらい回せよ…
祐一
…美香、誰から
美香
おかあさんから
祐一
…お母さん?
祐一
出ないの?
美香
でない
美香
ゆういちがでてよ
祐一
祐一
…は?
祐一
なんでだよ
美香
いいから
美香
はやくでてよ
祐一
…美香
美香
ゆういちでて
美香
はやくでて
祐一
おい
美香
はやくでて
祐一
電話切れ、美香
美香
はやくでて
祐一
美香!
美香
はやく
美香
はやく
美香
はやく
美香
はやく
美香
はやく
はやくでろ!!!
ねぇ、知ってる?
**高校の人がね、死んじゃったんだって。
しのだゆういちって人。
漢字は習ってないからわかんないけど。
教室でいきなり倒れたらしいよ
そのまま起きなかったみたい
何かあったのかな…
え?
名前?
なんで知ってるか?
だって私、
その人のいとこだもん。
…作文?
うん、もう終わってるよ。
この夏の一番の思い出を書いたんだ。
…どんなタイトルかって?
『親せきのおそう式』だよ。
…ね?
おもしろそうでしょ?