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主
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nmmn注意⚠️ キャラ崩壊注意⚠️ 誤字脱字注意⚠️ 血表現注意⚠️ 花魁パロ
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17,奪い返す灯
切見世の夜は、異様なほど静まり返っていた。
表の遊郭では三味線と笑い声が絶えないはずなのに、ここではそれらが遠い幻のようにしか響かない。
湿り気を帯びた板の間に転がる人影の間を、番人が無造作に歩き回る。
粗野な声と共に、女をひとり乱暴に引きずり起こす。
痩せ細った肩が悲鳴を上げても、誰も助けようとはしない。
ここでは、それが日常だった。
翠嵐もまた、その目を閉じていた。
病の熱に浮かされ、意識は途切れ途切れ。
咳のたびに胸が裂けるように痛み、血が喉を焼いた。
翠嵐
咳き込むたび、口端から赤が零れ落ちる。
番人のひとりが呟き、足先で翠嵐の肩を突いた。
笑い声が重なり、暗い座敷に冷たい音を落とす。
その瞬間。
裂帛の声が、闇を切り裂いた。
振り返る番人の目に映ったのは、必死に駆け込んできた黈羽の姿だった。
身体を振り絞り、乱暴に翠嵐を蹴ろうとした男に飛びかかる。
怒号と共に拳が振り下ろされる。
だが黈羽は怯まず、その手を掴んだ。
黈羽
叫びと共に噛み付くようにしがみつく。
隙を突いて翠嵐の腕を引き、必死に抱き起こす。
番人が怒声を上げる。
だが、背後の闇から声が重なった。
蒼霞
蒼霞の静かな声。
桃李
桃李が拳を構える。
茈月
茈月が薄笑みを浮かべる。
紅鶴が扇を閉じ、静かに一歩前に出た。
紅鶴
六人の視線に、番人たちがわずかに怯む。
その一瞬の隙に、黈羽は翠嵐を背負い直した。
黈羽
裏路地を駆け抜ける。
湿った空気を切り裂きながら、みことの背中ですちは微かに呻いた。
翠嵐
黈羽
みことの声は震えていた。
黈羽
黈羽
黈羽
すちの目尻に、熱いものが滲んだ。
花鏡楼の裏座敷。
灯りも落とされ、人目を避けた小部屋に六人はすちを寝かせた。
桃李
らんが呻く。
桃李
桃李
こさめが頷く。
蒼霞
紅鶴
紅鶴
なつが言い、桶に汲んだ清水を持ち寄る。
いるまは懐から取り出した包みを広げた。
茈月
茈月
桃李
桃李
らんが固く言い、握った飯を小さくちぎってすちの口へ運ぶ。
苦しげに咳き込みながらも、すちはわずかに飲み下した。
黈羽
みことが手を握り締める。
黈羽
黈羽
夜が更け、座敷に雨音が近づいた。
外では相変わらず吉原の喧騒が続く。
だが、その片隅で、五人はひとつの命を守るために必死に動いていた。
すちの胸はまだ荒く波打っている。
だが、その息は確かに――繋がっていた。
17・了
主
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𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝♡180
主
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