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第2話読み終えたよ……重い、すごく重かった。心春の仮面が周りの人に次々剥がされていく感じ、読んでてこっちまで息苦しくなった。特に柊馬の「無理してる時の顔だろ」って一言、初対面なのに核心突きすぎてて鳥肌たった。家での母親とのシーンもキツかった……「私が全部やるからね」って自分を♡♡♡て笑う心春の姿が痛い。でも柊馬から送られた「無理して笑うな」が誰よりも響いてる気がする。続き、めっちゃ気になるよ……読ませてください!
_____________
__その瞬間、顔から笑顔が完全に消え失せ、心春の体は制御を失ったように震え出す。
静まり返った廊下に、心春がその場から走り去る、激しい足音だけが虚しく響き渡る。
周囲のガヤガヤとした喧騒を置き去りにして、心春は脱兎のごとく廊下を走り去る。振り返ることもせず、ただポケットに手を突っ込んだまま___先輩である駿(しゅん)と蓮(れん)が、冷淡でいてどこか愉しそうな瞳で、遠ざかる心春の背中をじっと見送っている。
心春はカバンをまるで唯一のすがりつくもののように強く抱きしめながら、足元を狂わせ、フラフラと歩く。過呼吸気味になった胸は激しく上下し、冷たい呼吸ばかりが浅く繰り返されていた。
だから私は、みんなが求める『良い子』の仮面を被るしかなかったのに
__その時、張り詰めた静寂を破るようにして、スマホの低いバイブ音が不気味に響き始める。
恐る恐るその画面に目を向けると、そこには、母親から一通のメッセージが届いていた。
心春、どうしてまだ帰ってこないの? ままを一人にしないで
__ああ、帰らなきゃ。私は、お母さんを支えなきゃいけない。私がしっかりしないと、あの家は__壊れちゃうから__
心春は自分の頬を両手で強く叩き、その激痛で、濁りかけた意識を無理やり覚醒させる。
まばたきをした瞬間に。その瞳にはどこか歪な偽物のハイライトが灯り、再び誰もが安心するような、害のないいつもの「笑顔」がその顔に張り付く。
リビングに足を踏み入れた瞬間、心春の言葉が凍りつく。
部屋の床には今朝の焦げたトーストの皿がそのまま放置され、割れたグラスの透明な破片がバラバラに散らばっている。
その暗闇の底のようなソファの隅に、小さく膝を抱えて座り込んでいる影__実の母親である白瀬千春(しらせ ちはる)が、狂気的な目元をギラつかせて心春を睨みつけていた。
__心春は瞬時にそこへ駆け寄り、折れてしまいそうなほど細い母親の肩を、強く抱きしめる。
必死に母親をなだめ、聖母のような笑顔で背中をさする姉の姿を、リビングの入り口の暗がりに立つ遥斗が、冷徹極まりない目で見つめている。
心春は家の中がしんと静まり返った深夜。ようやく片付けを終えて、疲れ果てた体を重そうに引きずりながら、一人で冷たい廊下を歩く。
遥斗の部屋の前を通りかかったとき、ガチャリと静かにドアが開く。
部屋の明かりを背にしてそこに立っているのは、寝巻き姿の遥斗だ。
冷え切ったナイフのような鋭い視線が、暗がりに佇む心春の顔へと真っ直ぐに突き刺さる。
__その直後、目の前で激しく閉まるドアの音が、鼓膜を震わせるほどの衝撃とともに鳴り響いた。
心春は廊下の冷たい壁に背中を預け、ずるずるとその場に座り込む。
暗闇に包まれた空間の中、自分の本当の感情が何も分からない恐怖に襲われ、声もなくただ涙を流し続けるしかなかった。
翌日の昼休み、雲一つない青空の下。一人で屋上のフェンスに寄りかかり、虚ろな目で遠くの景色を見つめている。
目の下には寝不足のうっすらとしたクマがあるが、その顔には、いつも通りの完璧な笑顔が張り付いたまま__
私は、何のために生きてるんだろう。もう、笑い方も、泣き方も、何も分からない__
だったら、その顔辞めれば?
突然聞こえた声に、心春は勢いよく振り返る。
そこには、一人の男子生徒がぽつんと立っていた。少し不機嫌そうな目付きに、どこか近寄り難いぶっきらぼうな雰囲気。だけど、その双眸の視線だけは、妙に真っ直ぐだった。
柊馬は面倒臭そうに頭をかきながらも、その瞳でじっと、心春の顔を見つめる。
※ト書きが変わります。
突然の衝撃、大きく跳ねる心臓。激しい鼓動を感じながら、ただじっと耐えている。
千歳にも蓮や駿、遥斗にも言われた。 昨日も遥斗に言われた。 でも。 初めて出会ったはずの人にまで見抜かれるなんて。
昼休み終了後。チャイムの音が現実の境界線を告げるように鳴り響く。教室へと戻り、自分の席に腰を下ろした心春だったが、教科書を開く指先は冷たく強張ったままだった。黒板の上を滑るチョークの音も、教師の単調な声も、今の心春の鼓膜には一切届かない。
なんで分かったの……?
シャーペンを握る指先に、じわりと力が入る。ノートの端を無意味に黒く塗りつぶしながら、頭の中でさっきの男の不器用な声が何度も再生される。
ただ「仮面がバレた」んじゃない。まるで私の脳内の動きをすべて知っているかのような、あの確信に満ちたぶっきらぼうなトーン。それが、言いようのない不気味なノイズとなって胸の奥を激しくかき乱す。
その笑顔
無理してる時の顔だろ
違う……
私はちゃんと出来てる……
千歳や遥斗、駿、蓮以外の誰にも気付かれてない……
そう自分に言い聞かせるように、奥歯をきつく噛み締める。これまでの人生、他人の望む「白瀬心春」を演じることで、辛うじて自分の居場所を守ってきた。
なのに、あの男は私の脳内に直接土足で踏み込んできたかのような、底寒い錯覚が全身を支配していく。
その瞬間__
白瀬
黒板を叩く鋭いチョークの音と共に、担任に名前を当てられる。
大きく弾かれるように立ち上がった心春の、上の空だったことが丸分かりな間抜けな返事。それに対し、教室内から小さく笑い声が沸き起こる。
恥ずかしそうに細い指で前髪をかき、目元をふにゃりと下げる。いつもの笑顔、いつもの優等生、いつもの仮面狂った歯車をほんの一瞬で噛み合わせるように、いつもの調和された日常へと、白瀬心春を演じ直す。
だが 教室後方 窓際の席
夕暮れの光が差し込む教室の片隅。周囲に馴染もうとせず、少し無骨でクールな雰囲気を纏って佇んでいる少年。昼休みに心春の心を乱した張本人である柊馬だけが、つまらなそうに、けれど心春が「次にどう動くか」をすべて予測していたかのような淡々とした視線で、じっとこちらを見ていた。
見抜かれているんじゃない。私の思考回路そのものが、この男に完全に読まれている。
目が合った瞬間、心春の背筋にゾクッと冷たい悪悪寒が走る。
見ないで
終礼の号令が終わるや否や、母親から頼まれていた買い出しのために急いで荷物をまとめ、廊下へと飛び出す。一刻も早く、あのすべてを先回りしてくるような不気味な視線から逃れたかった。
しかし、逸る足元が焦りを生み、曲がり角で勢いよく誰かの胸元へとぶつかってしまう。底の浅いローファーが、キュッと床を滑った。
ゆっくりと視線を上げると、そこに立ちはだかっていたのは、外した制服の第一ボタンから覗く鎖骨が妙に自然体な、あの柊馬だった。
ぶっきらぼうで「なんか嫌な奴」と思わせるようなクールなオーラを纏いながら、彼はただ静かに、心春の次の行動ルートを塞ぐようにそこに佇んでいた。
最悪
よりによってこの人
最悪のタイミングで、一番会いたくなかった男が目の前にいる現実。
逃げ出したい衝動を必死に抑え込み、固まった笑顔の下で息を呑む。
低いけれど、どこか不器用な、そして恐ろしいほど的確に核心を突く低音が降ってくる。
笑顔を顔面に貼り付けたまま、心春の思考回路が完全にフリーズする。
他人の目を欺くための完璧な「仮面」が、この男の前では、まるで最初から透明なガラス板であるかのように意味を成さない。
小馬鹿にするわけでも、からかうわけでもない。ただ、心春と同じ景色が見えてしまっているからこその、あまりにもフラットで、あまりにも生々しい問いかけ。柊馬はただ静かに、心春の頭の中をそのまま覗き込むように見つめてきた。
これ以上ここにいたら、自分の脳みそを丸ごと乗っ取られてしまいそうで怖かった。
しかし
トッ、トッ、と階段を降りながら、胸だけが妙に不快にざわつき続ける。
心臓が、今まで体験したことのない奇妙なテンポでうるさく脈打っていた。
どうして
どうしてあの人の言葉だけ
私の思考の先回りを執拗に叩いて、すとんと一番深い場所まで、まっすぐに届いちゃうんだろう。
昨日あれだけのことがあったのに、いつもと同じ日常の顔をして、同じ教室にいなければならない現実がひどく憂鬱だった。
窓際の席
そこには、いつもと変わらず気怠げなオーラを纏った進藤柊馬(しんどう とうま)がいる。
そう自分に強く言い聞かせ、視線を不自然なほど真っ直ぐ前へと固定する。
関わりたくない。私の脳内を土足で荒らすようなあの不気味な男を、視界に入れることすら避けたかった。
でも気になる
意識すればするほど、マグネットのように意識が引っ張られてしまう。
授業中。教科書をめくるフリをしながら、何度も、何度も、無意識に視線が窓際へと向いてしまう。
その度に
あらかじめ予測していたかのように、柊馬と目が合う。
慌てて逸らす心臓が嫌な跳ね方をして、冷や汗が背中を伝う。なんであの人は、私が盗み見るタイミングを、最初から全部知っているみたいにこっちを見てるの。
カバンを抱え、逃げるように校門を出ようとしたその時、背後から聞き馴染みのある明るい声に呼び止められる。
小学校時代から、_との絶交の時も、自分の人生の一番暗かった時期をずっと横で見守り、支え続けてくれた6年間の幼馴染であり、唯一の親友。
実らなかった4年間の両片想いの相手であり元彼。今でも自分にとっての、唯一無二の「避難所」。
一瞬だけ戸惑ったものの、心春はすぐにいつもの完璧な笑顔の仮面を顔に貼り付ける。千歳の前だけでは、いつだって「上手く笑えている良い子」でありたかった。
二人で歩く。夕暮れの街並みを、他愛もない会話を交わしながら並んで歩いていく。昔から変わらない千歳の物静かでマイペースな空気感が、柊馬によって乱された心春の心を、少しずつ凪へと戻していく。
千歳がふと、少し伏し目がちな視線を心春へと向け、歩調を緩めて覗き込んできた。
波風を立てないための、いつもの満点の笑顔で笑う。
貼り付けたはずの笑顔のまま、心春の全身の血がスッと引いていく。
頭の中で2日前の遥斗の冷酷な言葉、昨日の柊馬のぶっきらぼうな指摘それぞれの声が、鼓膜の奥で激しく重なり合ってリフレインする。
また……
また私の嘘がバレた。なんでみんな、そんなに私の外側を剥がそうとするの。引きつる頬を必死に抑え、呼吸が浅くなる。
そう優しく、どこか切なげに微笑む千歳。けれど、千歳はそこで終わる。それ以上は踏み込まない。内面に繊細な不安症を抱えている千歳は、心春の暗闇をすべて知っていながらも、これ以上踏み込んでお互いの関係が壊れてしまうことを、誰よりも怖がっているから。傷つけないように一歩引いて、優しい言葉をかけることしか、千歳にはできない。
一方で遠くから
二人が歩く下校路から少し離れた歩道。柊馬が、ポケットに手を突っ込んだまま、千歳と並んで歩く心春の光景をじっと見つめていた。心春の中に、どうしても忘れることのできない大好きな_の残像を見てしまう。気にかけているのも、気になるという感情があるからなのは確かだ。けれどそれ以上に、柊馬の胸の奥には、_の断ち切れない強い未練が重く横たわっていた。
___________
柊馬のすぐ隣から、ひょっこりと顔を出したのは、先輩の駿だ。柊馬と駿は仲が良いかと言われればごく「普通」の、よくある先輩・後輩としての距離感。
視線を逸らし、ぶっきらぼうに呟く。
駿は、柊馬が心春をじっと見つめている理由を、単純な興味や好意だと思って、ニヤニヤとからかうように笑う。その視線の裏にある、柊馬が今も_の影を必死に追いかけているという「本当の未練」にまでは、駿は気づいていない。
心春のスマホ暗闇の中で、ベッドの上に置かれたスマートフォンが、冷たいバイブ音と共に青白く光る。
知らない番号から通知画面に表示されたのは、登録されていない、見覚えのない無機質な数字の羅列。
無理して笑うな。
たった一言だけの、短文のメッセージ。
……は?
差出人不明
でも 文面を見た瞬間誰か分かる。避難所であるはずの千歳ですら踏み込まなかった私の境界線を、あまりにも正確に先回りし、頭の中をそのまま覗き見してくるような、あの気持ち悪いほどの理解度。
恐怖と鳥肌が全身を駆け巡る。進藤柊馬が、自分ではなく「陽葵の思考回路」をなぞってメッセージを送ってきていることなど、今の心春には知る由もない。知らない番号を見つめたまま、心春はガタガタと震える手でスマホを強く握りしめるしかなかった。
ベッドの上。 部屋の明かりも付けず、ただひたすらに静まり返った暗闇の中、スマホの液晶画面から放たれる青白い光だけが、薄暗く心春の顔を照らしている。
なんで連絡先知ってるの……
画面に表示されているのは、昨夜届いたきり、未だに既読をつけられないでいる一通のメッセージ。
『無理して笑うな』
たったそれだけの、短い言葉。
なのに。喉元を冷たい刃物で優しくなぞられているような、不気味な胸の奥のざわつきが、どうしても頭から離れてくれない。
気持ち悪い
怖い
なのに……
なんでこんなに気になるの……
震える指先で、一度は返信画面を開く。 文字を打ち込もうとして、すぐに閉じる。 諦めきれずに、また開く。 そして、息を呑んでまた閉じる。
自分の心が、あの進藤柊馬という男の存在にどれほど激しく揺さぶられているかを痛感し、何度も繰り返したあと、結局逃げるようにスマホを画面ごとベッドに伏せた。
翌日
朝の教室。 そこには、いつものように誰に対しても優しく微笑む、いつも通りの笑顔があった。
周りの声に完璧に合わせて調和を保つ、いつも通りの挨拶。 波風を立てないための、いつも通りの白瀬心春。(しらさき こはる)
クラスメイト 「白瀬おはよー!」
何一つ濁りのない、ごく自然な笑顔。誰の目にも完璧に映る、いつもの笑顔。
昨日までなら、その仮面を被っているだけで、何の問題もなくやり過ごせていたはずだった。だけど。
また笑ってる
自分の顔に張り付いた笑顔を自覚した瞬間、あの耳の奥に残る柊馬のぶっきらぼうな言葉が、呪いのように頭をよぎる。
ガタン⸻不意に、教室内の一角で静かな音が響く。
声にならない声を漏らし、心春の肩がビクッと小さく跳ね上がる。
教室の後ろ。ただ柊馬が登校してきて、自分の席に座っただけ。
本当にそれだけなのに。
彼が視界に入った瞬間、心臓がトクンと嫌な激しい音を立てて脈打ちし始めた。
__________
昼休み
ざわざわとした生徒たちの声が響く昼休み。
喉の渇きを癒そうと、一人で自動販売機に飲み物を買いに行こうとしていた心春は、廊下の曲がり角で突如として足を止める。
少し先に。 私が一番会いたくないはずの男、柊馬がいた。
戻ろうかな……
関わりたくない。 心春がそう判断して、静かに回れ右をしようとしたその時。
まるで背後にも目があるかのような、気負いのない、けれど正確にこちらを捉えた低い声が投げかけられる。
反射的に、いつもの無害な笑顔を取り繕って言い返す。
けれど、柊馬のその真っ直ぐな瞳は、心春のそんな外面の抵抗などハナから意味を成さないと言わんばかりに、ぶっきらぼうに言葉を重ねてくる。
やはり、私の頭の中をそのまま覗き見しているみたいだ。 完璧に、図星だった。
廊下の喧騒を置き去りにして、二人の間を張り詰めた沈黙が流れる。
視線が絡み合い、しばらくの間、お互いに真っ直ぐ睨み合う。
けれど、底の知れない彼の眼差しに耐えかねて、先に気まずそうに目を逸らしたのは心春のほうだった。
心春のイラ立ちをすべて受け流しながら、柊馬は少し面倒そうに大きな手で自分の頭をかく。
初対面は最悪だし、ぶっきらぼうで「なんか嫌な奴」のはずなのに。
そのそっけない横顔をじっと見つめていると。なぜだろう。間違いなく出会って間もないはずの他人なのに、胸の奥から、少しだけ懐かしい気がした。
まるでずっと昔から、この温度感を知っているかのような、奇妙な感覚。
ポツリと、誰に聞かせるでもなく、柊馬の薄い唇からそんな独り言が溢れる。
何でもない、と話を打ち切って、柊馬はそのまま心春の横を通り過ぎ、立ち去ろうとする。
だが、ほんの数歩進んだところで、彼はふと足を止め、振り返ることもせずに言葉を落とした。
今度こそ、柊馬は振り返りもせず、そのまま廊下の向こうへと歩いて行ってしまう。
静かに取り残された心春だけが、夕暮れのような切なさを帯びた彼のその言葉を、頭の中で何度も何度も反芻する。
あいつって…誰?
なんであの人……
私のこと知ってるみたいな言い方するの……?
#悲しい物語
Nana
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