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侑李

おはよ

あ、おはよー

高校に入って一年が過ぎた。 今日も代わり映えのない正門までの坂道。

侑李

暑いね

そう言う侑李(ゆうり)の言葉に

あっついねー

と、少し子どもじみた崩した口調で応えて “変わらない今日”を始める。

私の隣に来た侑李を横目で見ると、 夏の日差しが透き通る白い肌に キラキラと反射していた。

スッと通った鼻筋、 少し猫目な瞳に綺麗に伸びた睫毛、 サラサラと音が鳴るようになびく黒い髪、 それら全てが美しい横顔を 創り出していた。

侑李

どうしたの?

侑李に声を掛けられて いつもの“友達スイッチ”を入れる。

侑李は白いから、
焼けたら真っ赤になるのかなあって
見てただけ。

そう言いながら視線を前に戻す。

侑李

なぁんだ。
見つめてくれてるのかと思ったのに…。

え?

語尾がやけに寂しげに聞こえて 思わず振り向いてしまう。

侑李

冗談(笑)
肌ね、真っ赤になるよ。

侑李は思い出したように 日焼け止めクリームをカバンから取り出し それを腕や首に塗りだした。

その侑李の姿を通り過ぎるみんなが 横目で見ているのを私は知っている。 侑李は誰もが振り返るほどに、 整ったスタイルと容姿だった。

そんな特別な存在の侑李と私が 肩を並べて歩けているのは 小学校が同じだったから。

たった3年間、 私が親の事情で引越しをするまでの間 私と侑李は友達だった。

それから7年後 高校の入学式の日、侑李と私は再会した。

あの日、この坂道で 後ろから呼び止められて振り返ると

舞い散る桜より華やかな侑李がいたことを 昨日のことのように鮮明に覚えている。

侑李

雫ちゃんは今年海とか行くの?

記憶を読み起こしている途中、 侑李の声で“今”に意識が戻る。

うーん、行かないかなあ。侑李は?

侑李

私は焼けると
お風呂入れなくなるから行けなくて。

そういえば去年も
そう言ってたね(笑)
侑李の水着姿は、世の男子が
待ちに待ってると思うけどねえ、
きっと。

侑李

雫ちゃんは待ちに待ってくれないのー?

そう言って、いたずらっ子の様な笑顔で 顔を近づけてくる侑李の肩を 思わず力任せに押して引き離す。

私は…男子じゃないから!

侑李

ふふ、雫ちゃんが女の子なのは
私が一番よく知ってます。

得意気な表情をして言う侑李が 可愛かった。

誰もが羨むほどに綺麗な侑李が、 「一番よく知っている人」として 名前を挙げてくれるのが 私だということが、誇らしく嬉しくて…

 そして何よりも…

【好きな人】の隣で笑っていられること それが、私の幸せだった。

自分の気持ちに気が付いたのは 高校一年の冬だった。

侑李が傍に来ると 胸がトクトクと音を鳴らすのは その美しさからの 憧れの反応だと思っていた。

だけど、あの雪の降る夜

侑李

彼氏が出来たんだ。

と笑って私に報告する侑李を見たとき 私の中の何かが崩れていく音が聞こえた。

降り続ける水を含んだ雪が 地面にグチャッと落ちる音が聞こえる様に 景色が淀んでいく感覚。

おめでとう

その言葉を伝えるのに 違和感を与えるほどの間を作ってしまったことを、今となっては後悔している。

あの瞬間、 私はこれ以上ない最悪のタイミングで

自分の「本当の気持ち」に 気づいてしまったのだ。

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めためたおもしろそう

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