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夕雨

…今日も、雨。

6月の上旬。今年は梅雨入り、早いなぁ。

夕雨

はぁ。

今の天気はまるで私の気持ちを表しているよう。

夕雨

学校、憂鬱だなー…

夕雨

雨なんて、嫌い。

この空も、私の心も

夕雨

早く、晴れればいいのに。

ガラガラガラ…

私が教室の扉を開けるとうるさかった教室がしんと静まり返る。

夕雨

……

だがそれは一瞬で、また騒ぎ始める。そこからたまに聞こえる声。

クラスメイト

うわ、来た雨女!

クラスメイト

よく学校来れるよねぇ

クラスメイト

二時間も遅刻ですよー?(笑)

クラスメイト

コイツが雨降らしてるせいで部活がさぁ……

夕雨

(全部聞こえてるっつーの。)

夕雨

(この雨は私のせいじゃないでしょ。どうしてそんな事を…)

雨の日はこうやってこそこそ言われて、いじめられる。雨が続く梅雨の時期なんて最悪だろう。

まぁ、三時間目から登校する私も悪いのだが。

夕雨

はぁ……

今日ため息をつくのはこれで20回目。高校に入学してからまだ半年もたってないのにこれだ。そりゃため息もつきたくなる。

夕雨

もう帰りたい…ボソ

ダン!!

澄晴

皆おはよう!

夕雨

(雨の日は皆気分が悪い、と言うわけではないらしい。一人だけ、やたらハイテンションな奴がいる。)

夕雨

(蒼城澄晴。)

クラスメイト

おー来たな晴れ男!

クラスメイト

この天気を晴らしてくれよー澄晴

クラスメイト

雨女のせいで私達ちょー困ってんだよねぇ

クラスメイト

お願い助けて~!

夕雨

(蒼城君が来たって、天気は全く変わらないのに…)

澄晴

おいおい、俺は晴れ男じゃねえよ(笑)

夕雨

……

彼が来ると教室が明るくなる。ある意味では晴れ男なのかも。と私は考えた

休み時間

美嵐

ねぇ、空桜音さん!

夕雨

は、はい

夕雨

(花咲美嵐さん……)

美嵐

…私、あなたと仲良くなりたいの。

夕雨

え?

美嵐

お友達にならない?

夕雨

……

夕雨

(いきなり何なんだこの人…あまりに急すぎないか?)

夕雨

気持ちは嬉しいけど…私……

女子生徒達

美嵐の誘いを断るなんて!信じられないわ!

女子生徒達

陰キャのくせして!

夕雨

っ……

美嵐

酷いわ、皆。

美嵐

ごめんなさいね、この人達が

夕雨

…いえ。(意外と優しい……?)

美嵐

まぁ、少しずつで良いのよ。いきなり言った私も悪いわね

美嵐

あ!そうだ!あなたに見せたいものがあるの!

美嵐

来て来て!

夕雨

はっはい…!

夕雨

え、トイレ?

美嵐

そうよ。こっそり掃除道具入れに隠してたの。

夕雨

? 何を────

バッシャーン!

夕雨

え……

寒い、冷たい。全身濡れて……

美嵐

水バケツ。トイレの水よ。

美嵐

……ふふっ、似合ってるわ

美嵐

さすが、雨女ね(笑)

女子生徒達

さっすが美嵐!

女子生徒達

やだ、びっしょびしょじゃん

女子生徒達

雨女だあ、こっわー

夕雨

っ……

少しでも人を信じた私が馬鹿だった

美嵐

…うちのクラスに不幸を招くような奴は要らないのよ。

美嵐

私だけじゃない。皆そう思ってるわ

夕雨

……

夕雨

…やめて、お願い…………

涙が、零れた。

澄晴

おい!

美嵐

あら、澄晴君。見てこれ

美嵐

これこそ醜い雨女

夕雨

……

澄晴

やめろよ。高校生にもなってこんなこと。

美嵐

…は?

澄晴

この人は雨女なんかじゃない。

澄晴

空桜音さん、保健室に行こう。着替えがあるはずだ

夕雨

…私のことなんか、ほっといて───

澄晴

よっこらしょっと

夕雨

わっ…!?

夕雨

(おんぶしてでも連れてくってか……)

澄晴

…人に不幸を与えるお前らが醜いと俺は思う。

美嵐

っ…はぁ!?

澄晴

じゃあな!

夕雨

…ありがと、助かった。

澄晴

別にー、あんなの見つけてそのままにしておくわけないだろ。

澄晴

それより、水かぶった以外に何かされた?

夕雨

ううん、特に何も。

澄晴

そっか。

夕雨

体操服も着替えたし、もう教室戻ろうか。

澄晴

え、大丈夫?

夕雨

うん、平気。

澄晴

無理してない?

夕雨

!……

夕雨

…大丈夫。なんか、迷惑かけちゃってごめんね。

澄晴

全然迷惑じゃない。

澄晴

寧ろ、空桜音さんを守れて良かった。役に立てて嬉しいくらい

ドキッ

夕雨

夕雨

(な、何だろ。蒼城君の微笑んだ姿を見た瞬間、なんか、胸が……)

澄晴

空桜音さん?

澄晴

顔、赤いけど…

澄晴

やっぱり、まだ保健室にいた方が

夕雨

ほっ本当に元気だから!

夕雨

じゃっじゃあね!!

ピューーン!

澄晴

えっ、ちょっと待っ────

澄晴

…行ってしまった……

澄晴

俺ら、同じクラスなのに……

放課後。(まだ雨は降ってます)

夕雨

はぁぁ……

夕雨

何だか疲れたなあ

夕雨

(蒼城君のことを考えると変に胸が痛くなるんだけど……)

夕雨

(ドキドキじゃないし、これはもしや…)

夕雨

(私、蒼城君の事が嫌いなのかな!?)

夕雨

(だって、胸がドキドキ高鳴るんじゃなくてきゅっと少しの痛みを感じるんだよ…?これは恋ではないだろ……)

美嵐

ねぇ、

ビクッ

夕雨

で、出た…

美嵐

人をお化け呼ばわりしないでくれる?

女子生徒達

サイテーっ!美嵐に失礼でしょ!

美嵐

アンタ、澄晴に助けてもらったからって調子こいてると痛い目見るわよ

夕雨

あの……私…

澄晴

あーっ!空桜音さん!!

澄晴

ごめんね、お待たせ~っ!

夕雨

え?

美嵐

は?

澄晴

いやぁー委員会が長引いちゃってさ?

澄晴

よし、帰ろう!

夕雨

えっちょっと蒼城く───

澄晴

良いから、俺に従って コソッ

夕雨

(て、手を握られてる!?)

夕雨

分かった…

澄晴

これに懲りてもうやめるんだな、花咲!

美嵐

うっ……

女子生徒達

アイツのしつこさがよく分かったわ……

澄晴

ごめんっ!

二人で傘を差して帰り始めて、彼はそう言った。

澄晴

俺はなんて馬鹿なことを…

夕雨

ううん、ありがとう。助かったよ

夕雨

また助けてもらって…本当に申し訳ない。私、自分で何も言えなかった…

夕雨

本当、私って弱い……

そう呟くと雨がより激しくなってくる

澄晴

うわ、すげえ雨。

夕雨

…私のせいだね。

澄晴

え?

夕雨

雨女。

澄晴

それは、あいつらが言ってることで…っ!

夕雨

でも事実だよ。私の気分が悪くなったり落ち込んだりしたとき雨が強くなる。怒ったら雷鳴るし(笑)

夕雨

雨女って言うのは本当なんだよ

澄晴

……

夕雨

だから、もう私のことなんか放っておいて────

バサッ

傘が落ちる音。気付いたときには…

夕雨

蒼城、君……?

澄晴

何でそんなことばっか言うんだよ!

抱き締められていた。

夕雨

えっと、あの…!

澄晴

じゃあ俺が!晴れ男になる!

澄晴

夕雨さんの気持ちを晴らせるようになってみせるよ!

夕雨

曇っていた私の瞳に光が宿ったのはその時だったと思う。そして恋だと気付いたときでもある。

澄晴

俺は君の事が好きだからただ守りたいって言ってるだけだ!

夕雨

…え?

澄晴

あ。

夕雨

(好き…それは……)

澄晴

あぁもう言う!

澄晴

俺、君の事が好きなんだ。入学式ん時からずっと!

夕雨

……

夕雨

本当に?

澄晴

マジ!

夕雨

…嬉しい。とっても。

夕雨

私も、好きだから。

澄晴

え、本当!?

澄晴

よっしゃ!

夕雨

ふふ、蒼城君って面白いね

澄晴

…笑った。やっと。

夕雨

え?

澄晴

空桜音さんは、笑顔が一番可愛いよ。

夕雨

!…ありがとう。

夕雨

あ…!

夕雨

晴れて、きた…

澄晴

じゃあ今、夕雨は嬉しいってことか

夕雨

え?

澄晴

空の色は今の夕雨の気持ちを表してるんだろ?

澄晴

あ、ごめん。名前で呼んだ

夕雨

ううん、嬉しいよ。澄晴君。

澄晴

夕雨!

夕雨

ちょ、いきなりハグしないでよっ

私はこの日の蒼空を忘れることはないだろう。

あなたといたらきっと、私の心はいつまでも澄んだ蒼い空かも。

happyend.

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