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目の前を鳥が飛んでいき、冷ややかな風が通り過ぎる。
普段より一段と冷え込む外気に、体が凍える。
今日はクリスマスだと言うのに、ベランダからただ外を眺めるだけ。
下に見える街中は、誰もが幸せそうで、至る所に宝石が散りばめられている。
───ここに来て何年が経っただろうか。
5年…いや、6年は経っているはずなのに、未だに1人前とは言えない自身がなんとも悲しく思える。
生まれの地は皆と同じ。
親の育てかたが悪かったという、ただそれだけだった。
それは僕のせいじゃないのに、1人前になれないのが、悔しくてしょうがなかった。
耳をよく澄ますと、人々の声や、車の音、ビルの大型モニターの音…
多くの音が聞こえる。
その中に、愛の言葉も混じって聞こえてくる。
樹
ポツリと呟いた言葉が、闇にさらわれ消えていった。
愛、とはなんなのか。
僕はまだ理解できぬまま、長い長い時間を過ごしている。
友人たちから、試験に合格したという知らせが何通も届けられる。
劣等感は募るばかりで、僕を成長させてはくれなかった。
人々にはみな愛があるし、友人たちにも愛があった。
この世界で愛がないのは僕ただ1人だけ。
そんな気さえして、愛があり、幸せがある彼らを恨めしく思った。
樹