青山 直斗
青山 直斗
僕は一人、部屋で外を眺めていました
なにをするまでもなく、ただただ夕日を見つめて、
そんな独り言をつぶやいていました
…夕日って、いつ見ても綺麗ですよね
時には、眩しすぎて目を傷めることもありますが、
ほのかなオレンジ色で、静かに寄り添ってくれる夕日、
僕は…大好きですね
<プルルルップルルルッ
青山 直斗
突然、僕のスマホがけたたましく音を鳴らしました
通話相手は…ヒロくんでした
なにも疑問に思うことなく電話に出て、
軽い返事を返した
青山 直斗
青山 直斗
青山 直斗
青山 直斗
青山 直斗
青山 直斗
誰がいるんですかっ…?
ヒロくんのスマホからかかってきたのに、
ヒロくんの声じゃなくて、
誰だかなんて名乗ってなくて、
事情も一切わからなくて…
いきなりここに来いって…
あと、ここの角を曲がればッ!
青山 直斗
青山 直斗
風洋 ヒロ
…ヒロくんは、道路の片隅に座り込んでいました
その傍らに立ち、不安そうに彼を見つめる人が一人
面識のない人が…
ふと見えたその瞳は、
深い紫色で、
…見入られるほどにくすんでいました
…でも、そのことを気に留める余裕もなく、僕はヒロくんに駆け寄りました
青山 直斗
青山 直斗
風洋 ヒロ
青山 直斗
風洋 ヒロ
青山 直斗
僕に寄りかかるように抱き着いてきて、ぼろぼろと涙をこぼしながらかみ殺した嗚咽を上げるヒロくんは、
…これまで僕が見てきた、どんなヒロくんよりも”素”でした
…取り繕う余裕がないほどに…何かが、
なにかが…この…この、僕よりも小さな、…今にも消えそうなほどか細い体に、
風洋 ヒロ
…弱弱しく、俺の名前を続けて呼んでいて、
僕は唇を強くかみしめました
…僕は…僕は…知っていました
ヒロ君が…「ヒロ君」でないことなんて、
実際より…ほんとは、…もっと小さな子供なんだって
沢山の物を背負えるほどの背中は持っていないのだって
重くて動けないのに…強がって、
怖くて怖くて、…言い出せなくて
…僕は…僕は…『ヒロくん』を見ることが…そこに踏み出すことが怖くて…それを…避けてしまっていたのでしょうか
軽い気持ちで声をかけた…そのはずなのに、
自分が…それで憂つになることが…不安になることが…嫌で
僕は…僕は…逃げてしまったんです
青山 直斗
風洋 ヒロ
青山 直斗
青山 直斗
青山 直斗
青山 直斗
青山 直斗
青山 直斗
青山 直斗
最近…ヒロくんは、輝くようになりました
型にはまった笑顔じゃなくて、
柔らかくて…優しく微笑むような笑顔
僕はッ…その笑顔に戻す…力にもなれなかった
僕は…僕は…逃げてばかりで何もできなかった
青山 直斗
青山 直斗
風洋 ヒロ
青山 直斗
青山 直斗
風洋 ヒロ
僕は…僕は…この小さな泣き声のために…なにもできなかった
青山 直斗
風洋 ヒロ
許してくださいッ…どうか、…
僕をっ…
大切な友人から逃げ続けた僕を
青山 直斗
風洋 ヒロ
青山 直斗
青山 直斗
風洋 ヒロ
青山 直斗
青山 直斗
風洋 ヒロ
風洋 ヒロ
青山 直斗
風洋 ヒロ
まだ…距離は遠いみたいですね
でも…少しずつだって…僕も逃げないで、
少しずつ…少しずつ…
もう、僕は、
ちゃんと、「ヒロくん」を見ますから
青山 直斗
ヒロくんは…微笑みで答えてくれました
すがすがしいその笑顔に、僕は少しだけ笑いが零れました
何故か、僕はの目からこぼれてきた涙が、
沈みかけのオレンジの太陽が写って、やけにいつもより綺麗に見えました
少し前の事…
風洋 ヒロ
風洋 ヒロ
へたり込むようにして道路に座り込む、
綺麗な水色の目の少年
…ここじゃあ、…危ないな、
軽く抱き上げて、脇の方へと連れて行った
風洋 ヒロ
うつむいたまま呆然としていて、何も答えない
…仕方ないなっ…
…スマホを彼のポケットから抜け取って、顔認証でロックを開いた
電話の画面を開いて、
一番上の連絡先の人に電話をかけて…
戸惑うような、妙に落ち着いてあっけからんとした声
俺は、構わず続けた
青山 直斗
風洋 ヒロ
大丈夫…そう、だな
俺は、…行こ
…静かに2人の声と少しの嗚咽に背を向けて歩き出した
夕日と反対に向かって
A
遠くで、俺の名前を呼ぶ声が聴こえた
B
B
A
…はーッ…w
俺…何がしたいんだろな
…まっ、いーやッ!
コメント
2件
なんで万引きしたのかなぁ;;
も、もふく~ん? 万引きは、よくないっすよ~ さすがによくなくないっすか~