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書士官
保安官
マクスウェル様から お借りした書物を抱えて俯く私…
気まずそうな顔を浮かべた書士官が、扉をしめる。
手酷い大失敗を披露してしまった…
保安官
『『『魔っ法!!魔っ法!!』』』
保安官
…と、発狂して見せたはいいが… 過ぎてしまったこと… いくら後悔しようが終わったものは終わった。
頭を振るい… 手元に抱えていた魔道書物を、扉に寄りかかりながら開く やはり、その書物に書いてある文字は未知のものだが… 私はこの文字が何故か読める…
同時に、研究室で聞いた話を振り返る。 聞いた話の半分は理解できなかったが… 根本的な所はみな分かりやすく教えてくれた。
彼等が告げるに… この文字の名は
「ハイス文字」
この地よりはるか東方の山岳に住み… 灯火と探究を司る神 『エノル』を信仰する 『ノイエノルド』 と呼ばれた人々がいる。
まだ言葉というものが 口伝によって伝えられた遙か昔… 彼らを始めする神々を崇拝した古の民族は 空気中に存在する魔力の中に漂う 不特定多数の小さな模様を見出す事で… 魔力という概念を探求してきた。
しかし当時の探求は 不規則に漂う模様の組み合わせを 抜き出すのみであり… 膨大な模様の組み合わせから 力の強い術に変えられるかは 各個人の感性に依存し… また対立した意見を有する探究者同士による戦いの歴史が数多く紡がれた。 最たるものは3000年以上前の 「魔刃戦争」と呼ばれる戦い… ノイエノルドを始めとした古代の魔力探究者勢力が参戦し… その多くは衰退し滅びたとされ… 今や勝ち残った「ノイエノルド」以外の民族はその名すら知る者はいないとされる…
それゆえに… 古代の魔力探究の時代とは… 強者のみが生き残る 苛烈な時代でもあった。
ある時… どこからともなくやってきた異邦の旅人が その模様が時折見せる羅列を見た時 旅人の故郷で使用されていた 「文字」 に似ていると告げる。
長い年月をかけた結果文章化する事に成功し… それらはやがて 『ノイエノルドの賢者語』 と呼ばれる古の言語となった… 時代が進み 賢者語は世界各地にも 語り継がれていくにつれ… 当時から存在した 各地の様々な種族が住まう集落の長達は その文字を元に、様々な言語として 作り替えて言ったという。
ハイネリウス王国の民が話すサーネス語も そんな一連の歴史を経て… 今や200万人という王国に 連なる民が操る言葉となった。
またハイス文字を使用した言葉の中には ギュンター語やアーバンティサクス語と 呼ばれるものも存在しており これらの違いは、使用される文法が大きいが… 単語という点は互換性がある為 言葉が通じない場合は 筆読することによって異言語話者との 言葉のやり取りはかろうじて 出来るようになっている。
保安官
私はこの構造を持つ文字に ひとつ心当たりがあった…
保安官
いや…城の作りを見た限り 生前の大英帝国の様な構造や 装飾が施されている。 似たような文化形態を有するなら 自然と文字が似通う可能性はある。
保安官
いずれこの辺りについて もっと深堀していく事にしよう。 ではここから本日の一大目標のお時間… 魔法の習得に移ろう! マクスウェル様からお借りした書物を見つめる… するとちょっとした違和感を感じた
『イスハーク式 炎系元素 軍令法術教本』
保安官
それは明らかに実戦向けの専門書… どう考えても高度な知識のみ記されてそうな気配を放つ。
保安官
本をめくると… 冒頭に以下の文章が記されている。
多く、苦境を強いられるこの世におうて… 我が魔力の探究、斯様に記すを許され… 不詳なる半生なれど機を賜いたもうた御方への忠… 並び身に余る僥倖、筆舌に尽くし難くあり。 その一端此処に記し、後進なる全ての守り手への道標足らん事… 切に渇望するもの也 『騎士長 アウンサン・イスハーク』
保安官
そこに記される前書きは、今は亡き著者が敬虔な人物であったことが伺える。 慢心せず… 驕りもない… 献身的な精神を持つ者が紡げる美しい言葉… これは、経緯を払って読むべき書物だ。
保安官
続きのページを読んでいく… うーん難しい… 理論的な話が多い… 何らかの事前知識がないと 理解に苦労する文言がずらりと並んでいた… そうして文字読んでくと…
保安官
おっと、またしても狂気に走るところだった… マクスウェル様が言うに この書物は基礎的な内容が書かれたもの。 最低限は理解出来ねば魔法習得は夢のまた夢ということだ。 自分自身を窘め、とあるページをめくる
保安官
魔導書の前の方に記されていたとある文字…
保安官
それは攻撃魔法について 記されるページだ。 以下の手順を踏む必要がある。
【ファグニス(着火セヨ)】 イスハーク自身が見出した 火元素系攻撃魔法。 火の玉を飛ばすのではなく、空間そのものを燃やす法術であり… 他の魔法に比べ、攻撃命中までの時間差が極わずかである強みを有する。 イスハークは生前説いた。 『我が着火を防げぬ者、王国の守り手たる資格無し!』と…
保安官
恐らく、イスハークという人物は気高い精神の持ち主でもあったのだ… だからこそ言ったのだろう… 「自分ごとき未熟者の魔法、対処できないやつは話にならないぞ」 と…
なお、『ファグニス』を使用する際は以下の手順が必要になるそうだ。
1.中指を絡めた人差し指を眉間に充て、火を思い浮かべる。 2.対象を火で焼く姿を思い浮かべながら、詠唱『渇望(かつぼう)するは揺らめく赤、揺蕩(たゆた)いて灯せ』と唱える 3.絡めた中指と人差し指を対象に向けて腕ごと延ばし、【着火せよーファグニスー】と唱える。
以上の所作を行う事で、燃やしたい相手の傍に小規模の炎が発生する…
らしいが…
保安官
尚、ページの一番下にこう書いてあった。
『※対象が燃える様子を鮮明に思い描けるものならば中の詠唱は不要。 尚、我が魔法にて【着火セヨ】は初歩であり…詠唱が必要な者はその程度故に、我流等夢のまた夢である』
保安官
違う、コイツはあれだ、天才肌のヤツで… 自分が出来ることはみんなもできるはずというおおよそ一般的感覚に共感できないへそ曲だ。 その証拠に、随分と 攻めた物言いをしてくる。 本来なら必要性のあまりない こんな一文を載っけての挑発… 気骨のある人間ならばこうとも取れる…
『この程度、センスあるやつは詠唱なんぞ要らん。 できないお前はお手本通りやれヘタクソ‼️』
保安官
そう言って 辺りに何かいい的はないか探すが… 部屋内の高級そうな品々にそんなご無体は働けない…
保安官
1個あった。 懐からカミサマの置き手紙を取り出す。結局処分するタイミングが取れなかったが、ちょうどいい練習用の的だ、使用させてもらおう… 手紙をテーブルの上に置く。
保安官
そうして、4メートルほど後方に構える。
保安官
中指を絡めた人差し指を眉間に付ける… 頭に思い浮かべるのは火… そうして、手紙を燃やすイメージを浮かべる…
保安官
腕ごと指を伸ばして手紙を指さす!
・・・
・・・
・・・
何も起こらなかった!
保安官
直後、指の形を色々変え、連呼して行く!
保安官
保安官
保安官
保安官
…
何も起こらなかった
保安官
圧倒的敗北感を抱かされ… 拳を握って地面に四つん這いになって叫んでしまう…
きっとこの光景を著作者が見たら腹抱えて笑ってるに違いない…💢💢💢
保安官
それと同時に…こうも感じる。
騎士長イスハークは『ファグニス』という魔法を生み出した達人だからこそ行程を省略できたわけで… ど素人が一発で同じことが出来れば 誰だって天才だ…
保安官
己自身に苦言を呈し… もう一度、魔法書を読み込む。
今一度… 詠唱文数回音読する。
保安官
言葉の意味をしっかりとかみ締めながら… 魔法書を閉じ、今一度テーブル上の置き手紙を見つめる
もう一度、深く息を吸って…吐く…
ほんの一瞬息をとめた後… 目を瞑って中指を人差し指に絡め 眉間に充てた…
今度はより手紙が燃える光景を 頭に思い浮かべ… 口を開く…
保安官
その言葉と共に、指先と頭が熱くなる… 全身に循環していた『何か』が、頭と心臓を経由して… 指先に集まる感覚が宿った…
そうして直後、目を見開いて… 腕ごと指先を伸ばし唱える!!
保安官
指先に集まった熱い感触が打ち出され、テーブルの上の置き手紙が一気に燃える!
保安官
上手くいった…! なるほど、これが魔法を扱う感覚というものか…! 初歩的と書かれてはいたが、こういう未知の力を少しでも手に付けられた感触… 我ながら達成感を感じた。
テーブルを見ると、置き手紙のほとんどはもはや燃え尽きたがまだ切れ端などが残る。
保安官
ふと、視界が一気に真っ暗になる感覚を覚える…
保安官
ドタン!!!
立ってられなくなりその場に倒れ込む…
四肢が打ち上げられた川魚のように小刻みに震え… 焦点が定まらなくなった目と… 緩んだ口元からヨダレをドロドロ垂れ流す…
朦朧とする意識の中… 遠くからノックの音が聞こえる…
エレノア
ミランダ
保安官
2人を見たところで意識を保てず… そのまま気を失った…