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はやとと別れた後、食堂を出た彩は いつもの帰宅路から少し遠回りをして家へ帰った。

(なんで、ちょっと遠回りしてるかって?)

(少しでもアイツと一緒に行ける可能性を上げたいのよ。誰かと展示会行くの憧れだったし。)

(って…私、誰に話しかけてるんだか…)

家に到着した彩はランドセルを靴箱の隣に放り投げて、リビングへ かけ出した。

ママ、ただいま〜!

彩の母

あら彩、おかえりなさい。

彩の母

今日は早かったのね

もぉ、ママに朝言ったじゃん!

今日は美術館で展示会があるから、それに行く人のための特別な日課なの!

彩の母

あ、そういえば朝そんな事言ってたわね。

彩の母

あ、そうそう今日、朝に学校からメール来て「転校生が来る」って聞いたんだけど、

彩の母

彩は転校生と仲良く出来た?

う、うーん。出来たけど…

彩の母

けど?

今日、展示会誘ってみたんだけど…予定あるって言われて、ちょっと一緒に行くのが嫌で断られた感じしたし…

彩の母

そんな事ないわよ、彩。

彩の母

アンタは優しい子なんだから!皆アンタのこと好きよ!

そう…かな。

彩の母

そうそう。だから大丈夫!

彩の母

諦めずアプローチし続けなさい!

アプローチって…ママ、私別に恋してるわけじゃ…

彩の母

あら、そうなの!?

彩の母

彩の母

まぁ、恋じゃなくても一緒に行きたいって気持ちはあるのよね!

え、まぁ…。

と彩は照れくさそうに 頬を軽く掻いた。

彩の母

じゃあ母さんの為に調べ物してきてくれない?ちょーど暇つぶしになるだろうし!

調べ物って、ママの週刊誌の記事?

彩の母

ええ、今週の記事はなんと最近話題の「カラー」についてにしようと思うの!

い、色?色についてなら家に資料なんて腐るほど…

と書斎へ向かおうとUターンした彩の腕を、彩の母はガシッと掴んだ。

彩の母

ちがうの!そっちのカラーじゃない!色じゃない!

はぁ?色でしょ、カラーって…

彩の母

え!まさか彩知らないの!?怪盗カラーのこと!

怪盗…カラー?

彩は、母の口から出てきた 「怪盗」という言葉に興味をひかれたのか、急に真剣な顔になった。

彩の母

今話題の怪盗よ!それも絵画専門のね!

彩の母

カラーへは低身長の男子中学生、はたまた幼稚園児とか…正体の予想が飛び交っているわ。

ふぅん…。

で、私はその怪盗カラーさんをどこで調べたらいいの?

彩の母

んー、最近出来た資料館にでも行ってみて!過去1ヶ月の新聞や、ニュースも保存してあるらしいし!

分かった!

資料まとめ終わったら、届けに来た方がいいよね?

彩の母

大丈夫よ、そのまま展示会へ行きなさい。資料館自体がここから結構遠いから、歩いてるうちにすぐ彩の行きたい時間になるわ。

わかった!ありがとうママ!

彩の母

うん、じゃあ車に気を付けるのよ。行ってらっしゃい。

はーい!行ってきまあす!!

彩は大きな声で返事をすると 何時にもなく軽快な足踏みで外へ出ていった。

彩の母

頼んでよかったあ。あんなにお友達とのお約束を楽しみにしてる彩、初めて見たわ。

彩の母は少し隙間の空いたリビングの扉をみてふふっと微笑んだ

えーっと、資料館は画用町2丁目……

こっちか!

うわぁ。

彩は資料館へ行く途中にあった商店街の飾り付けに驚き、思わず声を漏らした。

商店街は、一面 展示会のグッズや張り紙、マスコットキャラクターらしきもので色とりどりに装飾されている。

さすが有名展示会なだけあるわね…。

少し見ていこうかな…。ほんと、少しだけ…

彩は商店街の中で1番派手な装飾がされた店の中へ入っていった。

中は外の装飾からしてみると意外と質素な感じで、店主も思っていた人物とはまた違う雰囲気の人物だった。

店主

いらっしゃい、お嬢さん。

え、っと…ここは何屋さんなんですか…?

店主

ここかい?

店主

ここはカラー様ファンが集まるお店だよ。外の看板にも書いてあっただろう?

え、あ、はい!

(装飾で何が書いてあるのかほぼ見えなかったけど…)

店主

お嬢さんもカラー様ファンならそこのグッズを買っていくといいさ。

店主のおじさんが指をさした先には、何が刺繍されているのか判別できないくらい糸がほつれた赤色の靴下や、ニット帽、マフラーなど変なグッズが飾られていた。

こ、これは…?

店主

フッ、手芸歴5年のワシが一生懸命作ったカラー様グッズだよ。

と店主は、針で刺した跡や切り傷だらけの痛々しい手のひらを彩に見せつけ、ドヤ顔をかましてきた。

(5年でこれかよ…。)

彩は思わず心の中でツッコんだ。

それより、1つ聞きたいのですが…、

店主

「カラーのグッズをどう作ったか」だろう?いやー、あれはワシも苦労し…

あ、それは聞いてないです。

店主

なぬ、じゃあお嬢さんは何を望む?

怪盗カラーについて詳しく知りたくて。

母が雑誌の編集部で、今週は「怪盗カラー」を特集して雑誌を作るみたいで…

店主

ぬ、ぬぬぬぬぬ……

彩が事情を説明すると急に店主はワナワナと手を震わせ始めた。

え、あの…だ、大丈…

店主

お嬢さんもカラー様を愛してやまないのか!

わ、私は別に…

とそっぽ向いていた彩が店主へ視線を戻すと、店主からの輝かしい目線が彩へ直撃した。

店主

お嬢さんも!!カラー様が!!好きなんだな!!

え、えぇ。はい。

(お、思わず言っちゃった…)

店主

良かろう、良かろう!

店主

ではお嬢さんにこの本をやろう。

と店主はカウンターの棚に押し込まれた1冊のノートを引っ張り出し、彩に手渡した。

ノートの表紙には「かんじれんしゅうちょう」と印刷されていて、その上から油性マーカーで「カラー様大百科」と書かれている。

え、かんじれんしゅうちょう?

店主

チッチッチ、それはワシが何年もかけてカラー様をまとめあげた最高作品のノートだ!!

店主

なぁに。代金はいらんよ。持っていきなさい。

は、はい。

店主

ご来店ありがとうございました〜

え、ちょ、帰るなんて…!

店主は強引に彩を店の外へ追い出した。

なんなの、あの店主…

自分からカラーについて語り始めて、最後はこのノートを渡して追い出すとか、意味わかんない。

はあと深くため息をついた彩は 両手で大事そうに抱えたノートにちらりと目をやった。

…どうせ資料館へ行くまで暇だし、その間に読もうかな。

彩はノートの見開きを開いて、再び資料館へ向かって歩み始めた。

もくじ…ねぇ。

1カラー様の服、2カラー様の今までの犯行…意外といい資料じゃない。

彩はペラペラとページをめくっていった。

黒色のタキシード…身長は意外と小さい…か。

意外と小さいって中途半端ね。どんぐらいか書きなさいよ、あの店主。

彩が次のページをめくろうとすると、1枚のメモがひらりとノートから舞い落ちた。

メモ?

彩は地面に落ちたメモを拾い上げ、メモの内容を読み始めた。

「五月雨」?

五月雨って、あの五月雨さんのこと…?

それにしてもすごい…、五月雨さんの情報全てがまとめられてる。でも字は小学生みたいな字ね。

ノートの字は習字のような字だったのに、何でこのメモだけ丸っこい…、

彩がメモについて考え込んでいると 急に突風が吹いて、メモが風にのって飛ばされて行ってしまった。

あっ!

彩がメモへ手を伸ばした頃には既に時遅く、メモはそのままどこかへ飛んで行ってしまった。

あーあ…。

まぁ、いっか。

さて、資料館まであと少しだ!頑張るぞ〜!

商店街で出会った謎の店主からの情報もあり、少しカラーへの興味が増した気がしながらも彩は資料館へ足を運んだ。

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