ナムジュン
僕が肩に掛けているバッグを顎で指しながら ナムジュンは再び問いかける。
ホソク
ナムジュン
ナムジュンの言ってることは至極真っ当だ。 下手に言い返せば、僕の事だから きっとボロが出てしまう。
京畿道行きの列車は21時発。 今は多分…19時半を回ろうとしている頃だろうか。 あぁ、もう、時間がないのに。
ホソク
咄嗟に考えた当たり障りのない作り話に ナムジュンはあぁそうなんだ、と 感情のこもってない返事すると 僕を見下ろして言った。
ナムジュン
ホソク
ナムジュン
ホソク
ナムジュン
僕の神経を逆撫でするような言葉に 罵倒したい衝動をぐっと堪える。
ホソク
ナムジュン
ホソク
僕はナムジュンに背を向けると ドアを開けようとした。
でも、体が動かない。
後ろから感じる、ナムジュンの圧が 僕に物語っている。
今、出て行ったら 後悔することになる、って。
ホソク
ドアノブから手を離すと ポッケからスマホを出して ジンヒョンに少しだけ遅れるとカトクを送った。
こうなったら従うフリをして 隙を見つけてここを出て行くしかない。
その覚悟を胸に、靴を脱いでフローリングの上に上がると 僕の隣に立つナムジュンに さっきからずっと気になっていた事を口にした。
ホソク
ナムジュン
ホソク
ナムジュン
ナムジュンはそう言ったけど やっぱりおかしい。
あのふたりは 静かなリビングで 一体何をしているのか。
ドアが開いたままのリビングの入口を見つめる。
ホソク
ナムジュン
ホソク
それを聞いたナムジュンは軽く笑うと そのままリビングに向かって歩き出したから 僕はその後をついて行った。
ソファが消えた分 やたらと広く感じるリビングに足を踏み入れた僕は 言葉を失った。
そこに広がっていたのは異様な光景だった。
ダイニングテーブルの上には まるで誕生日会でもするかのように 沢山の料理が並べられていて 食欲を誘う匂いを漂わせている。
しかも、この料理、全部…。
ナムジュン
そのダイニングテーブルの椅子に座って 机の上に突っ伏して動かない母親を 冷ややかな目で見下ろしながら言ったナムジュンに 僕はどの言葉を返すのが正しいのか分からなかった。
母親の隣には スンヒョンもまた、 同じような姿勢で寝ていた。
…いや、寝てるのか、 倒れてるのか はたまた、死んでいるのか。
分からない。 顔はテーブルに伏せられていて、見えない。
二人の手元にはグラスが倒れていて …色と匂い的に、赤ワインだろうか。 それが、テーブルの上に溢れて広がっていた。
ナムジュン
ホソク
この状況の中、 僕の好きな食べ物を 突然ペラペラ語り出したナムジュンも気味悪いけど 今はそんな事、どうでもいい。
こいつ
まさか。
まるで、ふたりの存在が無いもののように スンヒョンの向かいの椅子を引くナムジュン。
ナムジュン
ダイニングテーブルの前で立ったまま動かない僕に気づくと ナムジュンは不思議そうな顔をして尋ねた。
本当に、心の底から不思議そうな顔で 僕を見つめた。
ホソク
僕は今、確かに抱き始めている。 目の前の男に。
ナムジュン
ホソク
危機感と共に 恐怖心のようなものを。
ナムジュン
何も言わないナムジュンから 僕は無意識に距離を取る。
ゆっくり、ゆっくり 後退る。
ナムジュン
でも、予想とは違ったその返事に、 僕の足は止まる。
ホソク
ナムジュン
ホソク
ナムジュン
ナムジュン
この場から逃げて 今すぐジンヒョンの元へ行きたいのに。
ナムジュンの鋭い目で見られると 僕の足は まるで重い鉄の足枷をつけられているみたいに 動かなくなってしまう。
コメント
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続き気になるなぁ…無理しない範囲で構わないので、最新待ってます!